
| 2012/03/26(月) 17:00-19:00 農学部2号館1階化学第2講義室 (2号館の正面入口入ってすぐ正面の教室)
横尾直樹 (東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻・D2) |
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| 陸生甲殻類オカダンゴムシの外骨格における炭酸カルシウムの結晶学的解析
炭酸カルシウム(CaCO3)は、軟体動物や節足動物、棘皮動物など非常に多くの生物で見られる代表的な生体鉱物として盛んに研究が行われている。従来、生体鉱物としての炭酸カルシウム結晶は過飽和の溶液から析出しているものと考えられてきた。しかしながら近年では、一部の種においてその前駆体として非晶質炭酸カルシウム(ACC)が存在し、ACCから結晶に転移することが示唆されている。しかしながら、前駆体としてのACCの存在を明確に示した例はあまり見られない。本研究では、先行研究よりACCを前駆体とした結晶性のCaCO3(カルサイト)が含まれると考えられるオカダンゴムシArmadillidium vurgareを対象とし、その結晶学的特徴についてX線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子後方散乱回折(EBSD)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて調べた。 FIB-TEMの観察結果から、オカダンゴムシの外皮(exocuticle)の最外層(distal layer)は板状のカルサイト単結晶で形成されていることが確認された。SEM-EBSDの結果から、表面に見られる鱗片状の領域が一つの板状単結晶であることが示唆された。また、カルサイトのc軸は概ね頭部から尾部に向けて配向しているが、その角度などは完全には制御されていない可能性が示された。一方その下部にある遷移層 (transition zone) には、紡錘状結晶が形成されており、電子回折パターンからカルサイトであることが確認された。その下部の内皮(endocuticule)では、電子回折パターンや元素分析の結果から、ACCが存在することが確認された。TEMでのX線組成分析の結果、最外層のカルサイトにはリンなどのACCの安定化要因とされる元素が全く含まれなかったが、遷移層ではリンの存在が確認され、ACCが含まれる内皮では、比較的多量のリンが検出された。これらの結果から、外皮最外層のカルサイトは体液から有機基質上に直接結晶が析出したものであり、外皮遷移層のカルシウムはACCを前駆体として結晶成長したものであることが考えられる。また内皮ではACCの安定化につながる元素を十分保持しているため、カルサイトへの転移が起こらないと考えられる。 |
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| 橋本直樹(筑波大学大学院生命環境科学研究科生物科学専攻・M2) | |
| 腹足類の蓋形成に関する進化発生学的研究 〜貝殻と蓋の比較より〜
軟体動物は優れた防御器官である貝殻を獲得したことによって繁栄する動物群である。さらに腹足類は“蓋”という新奇形質を獲得したことによって、軟体部すべてを外骨格で覆うという適応進化を遂げた。蓋は腹足類を特徴づける重要な形質の一つであるが、その形成に着目した研究は報告されておらず、どのように発生を改変することで蓋という新奇形質が獲得されたのか解明されていない。蓋と貝殻は腺細胞からの分泌物によって形成される構造で、構成基質や螺旋状に形成されることなどいくつかの共通点をもつ。これらの共通点から、共通する発生の分子基盤が貝殻形成と蓋形成に関与しているという可能性が考えられる。本研究では腹足綱カサガイ目に属する Nipponacmea fuscoviridis を用いて、組織切片の作成、遺伝子発現解析、遺伝子阻害実験を行い、貝殻形成と蓋形成を比較した。その結果 dpp が貝殻及び蓋の形成に機能していることが明らかとなった。つまり軟体動物の背側において貝殻形成に関与していたdpp を上流とする遺伝子ネットワークが、腹足類において足の後方に異所的に発現することで蓋という新奇形質が獲得されたことが示唆された。 |
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