概要:
細胞の成長、適応、分化といった機能は、内部の膨大な種類の分子の状況依存的かつ全一的な変化により支えられている。このような細胞内分子ネットワークの変化にかかる拘束や法則を明らかにすることは、細胞の設計原理、動作原理の理解にとって極めて重要である。
最近我々のグループでは、細胞のラマンスペクトルとトランスクリプトームプロファイルに統計的対応があること、さらにこの対応を利用して、ラマンスペクトルの変化から、網羅的なRNA発現プロファイルの環境依存的な変化を推定できることを明らかにしている。このような推定が可能である背景には、オミクスの変動が比較的低次元の状態空間内に制限されているからだと考えられるが、その実体についてはこれまで十分な理解が得られていなかった。
今回のセミナーでは、細胞ラマンスペクトルからトランスクリプトームだけでなく、絶対定量プロテオームの変動も推定できることを示す。さらに、そのようなラマン-オミクス対応の背景事情の詳細解析を通じて見えてきた、細胞種を超えたオミクス変動の特徴と設計原理について議論したい。
http://kurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/ja/20220427_ja/