概要:
生命現象の多くは比較的単純な要素の寄せ集めでモデル化できるが、その要素が自発的に動いているために平衡統計力学の枠組みから外れ、おもしろい現象が現れる。たとえば神経幹細胞の培養系はアクティブネマチックであり、向きが揃った状態では流れ場がないが、自発運動の結果の協同現象として、トポロジカル欠陥付近では流れ場が生じうる[1]。今回わたしたちは、ネマチック系で流れが生まれる新しい現象として、細胞の自発運動性とキラリティに依存するエッジカレントを見つけた。本講演では、アクティブネマチック系の簡単なレビューのあと、細胞のキラリティの定量実験と、スタンプ培養環境を使ったエッジカレントの観察を紹介し、数値シミュレーション結果と連続体モデルの解析について議論する。