概要:真核細胞内には様々な細胞内構造体が存在し、それぞれ固有の機能を果たしている。それぞれの構造体は、関連タンパク質によって制御され、固有の形態や機能を維持していると同時に、固有の機能を果たすために柔軟にその形態を変化させる。本発表では、細胞内構造体として染色体とオートファゴソーム膜を考え、これらのオルガネラが形態変化するダイナミクスについて解析した結果について説明する。
染色体は1次元のクロマチン繊維によって構成され、細胞周期の間期から分裂期にかけて劇的にその形態を変化させる。間期に細胞核内に広がっていた染色体は、分裂期になると凝縮し棒状染色体を形成する。同時に、染色体どうしの絡まりが解け互いに分離する。この染色体凝縮を担うタンパク質としてコンデンシンがあり、実験によりコンデンシンの機能が分かりつつある。私は、このコンデンシンの機能をモデル化し、クロマチン高分子シミュレーションすることで、分裂期の染色体が形成され、染色体どうしが互いに分離するダイナミクスを解析した。
オートファゴソームは2次元の生体膜によって構成され、オートファジーによる細胞内分解システムで中心的役割を果たす。オートファゴソーム形成のダイナミクスは、扁平な小胞膜の膜成長に伴う形態変化のダイナミクスであり、膜曲率制御タンパク質など様々な関連因子によって時空間制御を受けていることが実験から示唆されている。私は、この曲率制御因子をモデル化し、膜の弾性ポテンシャルに基づいてオートファゴソーム形成過程の形態変化について解析した。