概要:細胞骨格フィラメント (微小管) とフィラメントを束化する能力を有する生体分子モーター (キネシン) をモーターの
エネルギー源であるATP存在下で混合すると,モーターの集積点を中心としてフィラメントが放射状に伸びた構造体 (Aster) を
形成することが知られている.本講演では,分裂期キネシンであるkinesin-5と細胞内輸送を主に担うkinesin-1のキメラモーターが
形成する微小管Aster構造が,ガラス表面に接着した状態で示す種々の動態について紹介する.
個々のAsterの動態は,i) 接地後直ちに微小管を放出して四散する (Nova),ii) 形態変化を伴いながら平面内を遊走する (Crawler),
iii) 四散も運動もせずにその場に留まる (Stable),iv) 接地が弱く,平面内をフラフラと漂う (Brownian) の4つに大別することができる.
これらの振舞いは,床面に吸着したモーターによる牽引力とAster構造内に存在するモーターによる収縮力(Aster構造を維持する力)のバランスの帰結として生起する.講演の中心となるのは,非対称な形態変形を伴う細胞運動様のCrawlerの振舞いであり,その運動と形態変化の関係を中心に議論を行う.また,モーターの性質 (微小管を束化する強さ) を変化させることで生じる運動-形態の動的関係の変化から,安定した遊走運動に必要とされるAster構造の構成要素の性質についても議論する予定である.
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