UBI seminar
 日時 : 11月11日 15:00 -
 場所: 東京大学駒場1キャンパス16号館107
 講演者: 高橋淑子 (京都大学大学院理学研究科生物科学専攻)
 演題: 腸収縮オーガノイドを用いた細胞収縮リズムの同期機構

要旨: 腸の蠕動(ぜんどう)運動は、消化・吸収にとって欠かせない生理機能である。大腸ガンを含む多くの腸関連疾患が蠕動不全を伴うことから、蠕動運動のしくみ解明は重要である。これまでの蠕動運動研究の多くは、成体(摂餌経験あり)の腸を対象としたマクロスコピックなものが多かった反面、細胞レベルでの理解は大きく遅れている。その理由として、蠕動運動の主役である平滑筋細胞や収縮リズムを刻むペースメーカーであるカハール介在細胞(Interstitial Cells of Cajal; ICCs)の扱いが困難であったことなどが挙げられる。私たちは、発生過程における腸(摂餌経験なし)がすでに蠕動運動を呈することに注目し、内在的な細胞機構の解明に取り組んでいる。このような研究にとって大きな利点をもつトリ胚を用いることで、「腸収縮オーガノイド」の作製に成功した。このオーガノイドは細胞構成がシンプルかつ規則正しく収縮ことから、収縮リズムを生み出す平滑筋ーICCsの相互作用などの解析が可能になった。興味深いことに、腸収縮オーガノイドは互いに融合することが観察された。異なるリズムをもつ2つのオーガノイドが融合すると、その後全体に調和のとれた(同期した)リズムをもつオーガノイドになった。本研究成果をもとに、腸蠕動運動のみならず、バイオリズムの同期機構という普遍現象の理解に向けて議論したい。