UBI seminar (2nd) 2016年 7月29日 
 414号室 講演者:齋藤 稔(東大・UBI)
 講演タイトル: 協同現象により反転するキネシンの方向性

アブスト:
キネシンやダイニンは微小管と結合し、一方向(プラス端あるいは、マイナス端 方向) に進む分子モーターとして知られている。従来、各分子モーターが固有の 方向性を持っており、外力を作用させない限りこの方向性が逆転することはない と考え られてきた。しかし近年、kinesin5 cin8 という出芽酵母の持つ分子 モーターは、微小管に結合するキネシン分子の数に依存して、進む方向性を反転 させるような現象を示すことが実験的に明らかに なった[Roostalu et al., science 2011]。しかし、 この方向性の反転のメカニズムや生体機能も解明され ていない。 本研究では、キネシン単分子がマイナス端方向に biased random walkする性質 と、分子内応力の方向性に依存し乖離しやすさが変化する効果を仮定した数理モ デルを立て、これらの現象を説明する。このような数理モ デルにおいて、キネ シンの運動の拡散性が強い時に方向性のスイッチが現れる。また提案したモデル はさらに、数を固定したま ま微小管の粘性抵抗を増加させることによっても方 向性のスイッチを示しうるという非自明な現象も予言している。メカニズムの議 論 だけではなく、このような数に応じた方向性のスイッチが紡錘体形成過程で どのような役割を果たすのか議論する予定であ る。