2024年 冬学期 第4回 物性セミナー
講師 田畑 吉計 氏 (京都大学大学院工学研究科)
題目 レプリカ対称性は現実のスピングラス物質でも破れているか?
日時 2024年 11月 15日(金) 午後4時50分-6時15分程度
場所 16号館 827 およびオンライン
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アブストラクト
ランダム磁性体で発見されたスピングラス(SG)秩序への相転移[1]は、平均場理論によれば無数の安定状態への分岐が起こる「レプリカ対称性」が破れた(RSB)状態である[2]。このRSBはランダム磁性体の範囲を大きく超え様々な複雑系の状態を記述する概念としてその適用範囲は拡大しているが[3]、その発端となったランダム磁性体に立ち戻ると、平均場モデルでは厳密に正しいRSBが“現実のSG物質でも起こっているかどうか”は、その解決に向けた多くの努力にもかかわらず明らかとはなっていない。実験によってRSBを検証することは容易ではないが、平均場モデルで得られた性質を実際の物質で検証する試みがなされている。その結果は単純ではなく、RSBを示唆する結果[4]もあれば、RSBを否定する結果[5]もある。また現実のSG物質といってもその物質群は多彩で、スピン自由度や相互作用の種類(短距離か長距離か)などによって幾つかの普遍性クラスに分けられる。本セミナーでは、様々なクラスのSG物質の中で、特に長距離のRKKY相互作用が働くイジングSGについて我々が行ってきたRSBの実験的な検証の結果を紹介する。
参考文献:
[1] V. Cannela and J. A. Mydosh, Phys. Rev. B 6, 4220 (1972)
[2] G. Parisi, Phys. Rev. Lett. 43, 1754 (1979)
[3] P. Chabonneau, E. Marinari, G. Parisi, F. Ricci-tersenghi, G. Sicuro, F. Zamponi, M. Mezard, Spin Glass Theory and Far Beyond -Replica Symmetry Breaking After 40 Years (World Scientific, 2023)
[4] D. Petit et al., Phys. Rev. Lett. 88, 207206 (2002), Y. Tabata et al., J. Phys. Soc. Jpn. 79, 123704 (2010), Y. Tabata et al., Phys. Rev. B 96, 184406 (2017)
[5] J. Mattsson et al., Rhys. Rev. Lett. 74, 4305 (1995), P. E. Joensson et al., Phys. Rev. B 71, 180412(R) (2005)
宣伝用ビラ
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物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
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最終更新時間:2024年11月05日 17時29分20秒