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物性セミナー/2016-12-8

2016年 冬学期 第2回 物性セミナー

 講師 佐々木 豊氏 ( 京都大学 大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 )

 題目 超流動ヘリウム3中のカイラルドメイン構造の実空間観測

 日時 2016年 12月 6日(木) 午後4時50分

 場所 16号館 827

アブストラクト

超流動ヘリウム3は、スピン三重項 P 波状態クーパー対の波動関数で精密に記述され、その異方性を与える内部自由度が外場や物質形状による拘束を受けて織りなす空間模様すなわちテクスチャーを NMR 測定により伺い知ることのできる類い稀な物質系である。これまで量子渦やソリトン構造など様々な構造体の存在が NMR 測定により示されてきたが、実空間での配置や形状については情報を得ることができなかった。しかしながら、精密に理解されたバルクの波動関数をもとに、境界条件を精密に制御することができ、不純物や結晶欠陥の影響を実質的に排除できる理想的な物質系であることより、近年隆盛なトポロジカル物質研究の舞台として重要視されるに至り、改めて実空間配置や形状の測定手段の登場が期待されるところとなった。我々は、超流動ヘリウム3のテクスチャー構造を実空間可視化する、新世代の NMR 技術として、磁気共鳴分光映像法 (MRSI) の開発に成功した。 MRSI 法では NMR 信号検出を行う領域内の場所毎の局所 NMR スペクトルを取得できるので、秩序変数の内部自由度が空間変化する様を測定できることになる。外部磁場が面に平行に印加された 100 μ m 厚の平行平板セル中に閉じ込められた A 相は、カイ⃗ラリティーのマクロに揃った基底状態テクスチャーを持ち、ほぼ全域で均一構造 ˆl = d ˆ = N̂ ⊥ B( N̂ は平板の法線方向)となることが期待されている。しかしながら右図に示すように、高さ2mm の帯状の均一構造の中に長時間安定に存在する局所構造体(帯を横断する黒い筋)を我々は発見した。この構造体は、エネルギー縮退した隣接する二つのドメイン ˆl = d ˆ = N̂ , ˆ l = d ˆ = − N̂ˆ を保ったまま連続的に接続するドメインウォールであることがの間をダイポールロック (ˆl = d)わかった。この構造はバルクでは不安定であるが、平板表面近傍において ˆl = N̂ のドメインとˆ l = − N̂ のドメインが隣接したシンギュラーな構造(表面カイラルドメインウォール)が同時に存在すると準安定に保持されうる。また2枚のドメインウォールに挟まれた領域はカイラリティーの揃ったマクロな大きさのカイラルドメインであると考えられ、カイラルドメイン構造の実空間での観測に初めて成功したことになる。講演ではこのドメイン構造の安定性や制御の可能性についても言及する。

宣伝用ビラ

KMB20161208.pdf(229)

物性セミナーのページ

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駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

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最終更新時間:2016年12月06日 13時04分57秒