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物性セミナー/2020-12

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2020-12-25

2020年 冬学期 第6回 物性セミナー

講師 大山 倫弘 氏(東大 院総合)

題目 ガラスの流動化とレオロジー:非平衡臨界性によるアプローチ

日時 2020年 12月25日(金) 午後4時50分

場所 オンライン

(一度登録された方、物性セミナーMLに登録されている方は、以下は必要ありません。)出席希望者は、予め登録をお願いします。登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。メールにてこちらからZoomアドレスをお知らせします。

アブストラクト

多くのソフトマター材料がHerschel-Bulkley則(HB則)[1]と呼ばれる普遍的な構成則(物質に印加した外力と生じるひずみの関係を与える式)に従うことがこれまで経験的に報告されてきた[2].物性物理の素朴な感覚ではマクロな物性はミクロな構造により決定されると期待されるが,HB則についてはその構造起源はこれまで明らかにされてこなかった.

我々はせん断外場下で流動化された単純ガラス系を対象にした詳細な数値計算と一般化した基準振動解析を行い,HB則の起源とみなせる特徴構造の抽出に成功した[3].セミナーでは流動化を支配する降伏現象の持つ非平衡臨界性[4]を足がかりにして上記特徴構造からHB則がどのように導かれるかを説明する.

[1]Herschel and Bulkley, Kolloid-Zeitschrift 39, 291 (1926)

[2]Bonn et al., Rev. Mod. Phys. 89, 035005 (2017)

[3] Oyama, Mizuno, and Ikeda, arxiv:2011.12568 (2020)

[4]Lin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 111, 14382 (2014)

宣伝用ビラ

KMB20201225.pdf(107)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2020-12-18

2020年 冬学期 第5回 物性セミナー

講師 中 惇 氏(早稲田大学高等研究所)

題目 有機・無機反強磁性体におけるスピン流生成

日時 2020年 12月 18日(金) 午後4時50分

場所 Zoom開催

(一度登録された方、物性セミナーMLに登録されている方は、以下は必要ありません。)出席希望者は、予め登録をお願いします。登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。メールにてこちらからZoomアドレスをお知らせします。

アブストラクト

スピン流は電子が持つスピン角運動量の流れであり、電荷や熱の流れを伴わないことから、エネルギー損失が少ない理想的な電子デバイス中の情報キャリアとして注目されている。スピン流を応用するためには、まずこれを自在に作り出せる必要があるため、物質中のスピン流生成はスピントロニクスの中心的な課題の一つとなっている。その最もポピュラーな方法はスピンホール効果[1-3]とスピンゼーベック効果[4]であり、これらはそれぞれスピン軌道結合と強磁性磁化を起源とするため、スピン流生成の研究はこれまで重金属や半導体界面、強磁性体などを中心として行われてきた。これに対して本講演では、反強磁性体を用いてスピン流を生成するメカニズムを理論的に提案する[5,6]。これは反強磁性秩序と結晶構造の対称性の協力効果によって生じ、スピン軌道結合と強磁性磁化をどちらも必要としないメカニズムであり、従来のスピンホール効果やスピンゼーベック効果とは本質的に異なる。具体的な反強磁性体の候補物質として、強相関電子系の“教科書的”な物質である有機導体κ-(BEDT-TTF)2X[5]ならびにペロブスカイト酸化物ABO3[6]に着目し、これらの物質系がスピン流生成に適した結晶構造と磁気的性質を有することを示す。

[1] S. Murakami, N. Nagaosa, and S. C. Zhang, Science 301, 1348 (2003).

[2] J. Sinova et al., Phys. Rev. Lett. 92, 126603 (2004).

[3] E. Saitoh, M. Ueda, H. Miyajima, and G. Tatara, Appl. Phys. Lett. 88, 182509 (2006).

[4] K. Uchida et al., Nature 455, 778 (2008).

[5] M. Naka et al., Nat. Commun. 10, 4305 (2019).

[6] M. Naka, Y. Motome, and H. Seo, arXiv:2011.12459.

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2020-12-4

2020年 冬学期 第4回 物性セミナー

講師 町田 理 氏(理研創発)

題目 超低温走査トンネル顕微鏡によるトポロジカル超伝導体におけるマヨラナ粒子検出

日時 2020年 12月 4日(金) 午後4時50分ー6時20分

場所 Zoom 開催

(一度登録された方、物性セミナーMLに登録されている方は、以下は必要ありません。)出席希望者は、予め登録をお願いします。登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。メールにてこちらからZoomアドレスをお知らせします。

アブストラクト

マヨラナ粒子は,それ自身が反粒子と等価である電荷中性の粒子として素粒子分野で提案された粒子である.近年,このマヨラナ粒子が量子スピン液体やトポロジカル超伝導体などの固体中においてもある種の準粒子として存在し,またこれを用いることで外乱に強い量子計算(トポロジカル量子計算)が実現し得ることが提案されてきた.これらの基礎物理学的な興味や産業応用の観点から,世界各国でマヨラナ準粒子の実現に向けた研究が行われてきた.特に,トポロジカル超伝導体では,そのエッジや渦糸芯に局在したマヨラナ準粒子が期待され,それらがマヨラナゼロモードと呼ばれる準粒子励起スペクトルにおけるゼロエネルギー状態として現れることから,局所的に分光測定が可能な走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いたマヨラナゼロモードの検出実験が盛んに行われてきた. しかしながら,マヨラナ準粒子の存在を証明する確固たる証拠が得られていないのが現状である.これは通常の超伝導体のエッジや渦糸芯でも“自明”な束縛状態がゼロエネルギー近傍に現れ(厳密には有限のエネルギー),この“自明”な束縛状態とマヨラナゼロモードの明確な区別ができていないことに起因する.我々は,自明”な束縛状態とマヨラナゼロモードとのエネルギー差が100~200 μeVと比較的大きいトポロジカル超伝導体のFeSeTeの渦糸芯に着目し,このエネルギー差を分解可能な超低温希釈冷凍機STM[1]を用いて渦糸芯の電子状態を調べた.その結果,マヨラナゼロモードと矛盾しないゼロエネルギーピークZEPを示す渦糸とZEPが無い渦糸が実空間で共存していることが明らかとなった.また外部磁場の増加に伴いZEPを有する渦糸の割合が系統的に減少していくことも新たに発見した[2].さらに,理論計算との比較から,新たに発見された磁場依存性を説明する上でマヨラナ粒子間相互作用が重要であることも解った[3].これらの結果は,マヨラナ粒子を利用したトポロジカル量子計算実現にむけて極めて重要な知見であると考えられる.

Reference

[1] T. Machida et al., Rev. Sci. Instrum. 89, 093707 (2018)

[2] T. Machida et al., Nat. Mater. 18, 811 (2019)

[3] C.-K. Chiu et al., Sci. Adv. 6, eaay0443 (2020)

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