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2022-11-18
2022年 冬学期 第4回 物性セミナー
講師 石河 孝洋 氏(東大理学研究科)
題目 高圧力下水素化物における高温超伝導
日時 2022年 11月 18日(金) 午後4時50分
場所 Zoom によるオンライン開催
・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。
アブストラクト
水素を活用して革新的機能を創出する研究が近年精力的に行われており、そのひとつに水素化物における高温超伝導[1]が挙げられる。硫黄単体における超伝導転移温度の最高値は17 Kであるが、硫黄水素化物にすると203 Kまで大きく上昇することが2015年に実験で観測された[2]。この発見を機に水素化物高温超伝導の探索が世界中で開始され、2019年には、170万気圧以上まで圧縮したランタン水素化物で更に高温となる260 Kの高温超伝導が発見された[3,4]。その翌年、硫黄水素化物に炭素を加えた系を267万気圧まで加圧したところ、超伝導転移温度が室温の288 K(15℃)に到達した[5]。また、ランタン水素化物にホウ素や窒素などの第3元素、第4元素が化合することにより、超伝導転移温度が飛躍的に上昇し、室温を大きく上回る550 K(277℃)を記録したという報告もある[6]。このように水素化物は室温超伝導の新たな候補として注目されているが、その一方で、最小元素の水素は高圧力下での制御、測定、解析が困難であり、高温超伝導相における組成や結晶構造について詳細は明らかになっておらず、第一原理計算を使って高圧安定相や高温超伝導の候補物質をまずは予測し、その情報を実験グループに提供することが強く求められている。我々は進化的アルゴリズムを用いた安定構造・安定組成探索手法の開発とその応用にこれまで取り組み、超伝導を示す2元系・3元系水素化物の探索に取り組んだ [7-9]。講演では、これらの研究背景と、我々が開発した探索手法及び超伝導性の予測結果について紹介する。
[1] N. W. Ashcroft, Phys. Rev. Lett. 92, 187002 (2004).
[2] A. P. Drozdov et al., Nature 525, 73 (2015).
[3] A. P. Drozdov, et al., Nature 569, 528 (2019).
[4] M. Somayazulu et al., Phys. Rev. Lett. 122, 027001 (2019).
[5] E. Snider et al., Nature 586, 373 (2020).
[6] A. D. Grockowiak et al., Front. Electron. Mater. 2, 837651 (2022).
[7] T. Ishikawa et al., Sci. Rep. 6, 23160 (2016).
[8] T. Ishikawa et al., Phys. Rev. B Phys. Rev. B 100, 174506 (2019).
[9] T. Ishikawa and T. Miyake, Phys. Rev. B 101, 214106 (2020).
宣伝用ビラ
KMB20221118.pdf(55)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
2022-11-11
2022年 冬学期 第3回 物性セミナー
講師 古谷 峻介 氏(東大総合文化)
題目 量子スピン系における対称性に守られた量子臨界相とgapless SPT相
日時 2022年11月11 日(金) 午後4時50分
場所 対面(16号館 829室・・いつもと違う部屋に注意)およびオンラインによるハイブリッド
・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。
・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)
登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。
アブストラクト
量子多体系の基底状態の性質の探究は物性物理の主要な研究テーマの一つであり,例えば最近20年間で飛躍的に進展したトポロジーによる基底状態の分類研究等が挙げられる.基底状態の最も基本的な性質のひとつは励起ギャップの有無である.たとえば自由電子系では,フェルミ準位がバンドを横切ればgapless (金属) であると容易に判定できるが,相互作用が強い場合には判定が非自明になる.安定性の非自明な例として1次元量子多体系において実現する量子臨界相が挙げられる [1].量子臨界相は量子相転移点直上のような臨界的な性質を持ちつつ,安定的な相として実現する.よく知られた朝永・Luttinger液体は量子臨界相の代表例と言える.臨界的であるため,この相はgaplessである.また,臨界性から,無限小の摂動によって基底状態が不安定になることが素朴には期待されるが,そのような期待に反して,量子臨界相の一部のクラスは相として安定的に存在する.この分類に属する臨界相は対称性に守られた量子臨界相と呼ばれる [1].本講演では量子多体系におけるgapless量子相の安定性という観点から,対称性に守られた量子臨界相とgapless SPT相の研究についてご紹介する.まず,講演の前半では1次元量子スピン系における対称性に守られた量子臨界相の安定性と分類について,場の理論のアノマリーにもとづいてできるだけ平易に議論する.この量子臨界相の分類から,Haldane "予想" やLieb-Schultz-Mattis定理 [2]が場の理論の大域的な性質として帰結することを見る.その後,対称性に守られた量子臨界相のうち,系の端に対称性に守られた状態を伴う例 [3,4]について述べる.これらの例はHaldane相に代表されるSPT相 (symmetry-protected topological相)のgapless版とも呼ぶべき性質を持っており,最近10年間で研究が進みつつあるgapless SPT相と呼ばれるトポロジカル相でもあることを議論する.
[1] S. C. Furuya and M. Oshikawa, Phys. Rev. Lett. 118, 021601 (2017).
[2] E. Lieb, T. Schultz, and D. Matthis, Ann. Phys. 16, 407 (1961).
[3] Y. Hidaka, S. C. Furuya, A. Ueda, and Y. Tada, arXiv:2205.15525 (to be published in Phys. Rev. B).
[4] S. C. Furuya and K. Morita, arXiv:2207.02485.
宣伝用ビラ
KMB20221111.pdf(52)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar