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Interview COG審査委員リレーインタビュー企画:
番外編2 奥村裕一 運営コーディネーター
「COGへの誘い」

  • OKUMURA,
    Hirokazu

    奥村 裕一
    奥村 裕一 運営コーディネーター
    (一社)オープン・ガバナンス・
    ネットワーク代表理事
    元東京大学公共政策大学院客員教授
    インタビュー動画はこちら

COGへの誘い

 COGに参加を考えている方に向けて、私たちがこれまで開催してきた経験から、地域課題を見つけるコツをいくつか得たのでお話ししたいと思います。今後の参加に備えるのに活用いただければ幸いです。市民・学生の締め切りは12月なので、ぜひアプライしてアイデアを出してほしいと思っています。

――「自分事」「共感力」が課題と解決には重要

 COGは先に地域課題を自治体に出してもらって、その解決方法を市民・学生が考えるという仕組みです。まず「自治体の方がどうやって課題を見つけるか」ということですが、一番重要なのは「市民の目」で課題を見つけるという意識です。もちろん、自治体の中で各担当にあたってもらってそこから見つけるというのも結構です。その際にも「市民がいま何を考えているのか」「今やっている分野の仕事、課題が市民にどう見えているのか」ということを大事にして、目線を変えて見てください。そうすると、市民/学生が課題をさらに掘り下げるときに役に立つ、ピンとくる課題になります。さらに踏み込めば、市民と一緒になって課題を考えていくことも大いに結構なことではないかと思っています。

 そして市民/学生のみなさんには、自治体から課題がデータ付きで出てくるので「それを自分自身の問題として掘り下げてみる」ということを実践していただきたいです。そこからスタートすると、新しいアイデアに飛び込みやすくなるし良いアイデアが生まれてきます。一番分かりやすい例は、自分が抱えている課題自身に率直に向き合うことです。子育て中のお母さん、介護をしている人……自分の課題は何だろうかということを考えましょう。また、今実際に問題に直面していなくても視野を広げて、「今は自分が体験していないけれど将来直面しうること」として自分の課題にしていくことも大いに結構。重要なのは、「自分がその立場だったらどうなるか」ということを考えてみること、すなわち共感です。これはデータだけを見てもわかりません。その時、単純な身近のことだけでなく長期的な視野も持ってください。

 課題を出発地点としてデータを見ると、自分の地域が置かれている立ち位置が客観的に分かります。例えば子育ての話だと、保育園の数やお子さんの人口などのデータ数字がある。そこから地域の子供の状況を知ることができるでしょう。そういったデータを問題解決に結び付ける目線は、日頃データを眺めて慣れていくことで身に付きます。ニュースで新型コロナウイルスの感染者のデータを見ることもあるでしょうが、そのデータは本当は何を意味しているのかを考えてみるだけでも、力は身に付きます。そして同時に日頃から相手の立場に立って「もしあの人の立場だったら」ということを時々考えてみることでデザイン思考を身に着けていけるでしょう。

【Data】事実の確認と主張の裏付けができます/データの可視化で行動変容を促せます|【Design】当事者への教官で課題の原点に迫ります/将来の仮説を立ててアイデアを考えます|【Digital】21世紀社会の変容の起爆剤です/行動が変わりコミュニティが広がります

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――COGには3Dを身に着ける場がある。臆せず飛び込んで

 課題を見つけ、アイデアを出すのに必要なのは、社会の事実を知るデータ、人間の心を探るデザイン、未来をサポートするデジタルという、この3Dを頭においてもらえば、掘り下げもできるしいいアイデアも生まれてくると思います。もちろん、こういった訓練は実践しながら身につくもの。COGは、そういった3Dを身に着ける勉強の場も提供していきたいと考えています。さらに言ってしまえば、コンテスト上では完璧なものである必要はありません。「やってみよう」という努力が重要なのです。こだわりすぎないでいい。けれども、心の片隅には考えてほしいと思っています。

 個人的な希望ですが、全国には1700自治体あるので、まだまだ数を増やしたいという夢を持っています。そしてゆくゆくはオープンガバナンスの考え方が当たり前の社会になって、COGというコンテストも必要なくなるくらいに、市民と自治体が連携してより良い地域のために頑張っていけるようになるのが理想だと思っています。そのためには市民自身が3Dを使いこなせるようになってほしいですし、私たちもサポートしたいと思っています。また、コンテストはアイデアを募集しているのですが、その実現も視野に入れています。この手のコンテストでは「アイデアを応募したはいいものの、疲れて終わりになってしまう」ということがままあります。「実現することが大事だ」ということに目を向け、そういう市民を増やしたいと感じています。

――「ワーク」「ライフ」に加えて「ソーシャル」に時間を割いて

 最後に、みなさんにはもっと「ソーシャル」に時間を割いていただきたいというのが願いです。そのためには社会が仕事の仕方、人間の生き方も変えていかないといけない。ワークライフバランスはよく聞かれるようになりましたが、さらに社会活動や地域社会の中でのソーシャルな関係に取り組めるような生き方改革も進んでほしいです。特に若いうちは「ワーク」もしくは「ライフ」で終わってしまうということもあってソーシャルをする時間がない方も多いでしょう。しかし、例えば男性なら子供たちの野球を監督したり、女性は働き方や子育てなど自分の直面した問題の改善をしたりと、何でも良いので、社会的活動をしてみてください。そこから視野が広がれば地域社会の新しい課題に気付けたり、改善する新しいアイデアが思いついたりするでしょう。「自分の地域に関わる」ことが「自分で地域を良いものに変えていく」ことに結び付いていくことを意識してみてはいかがでしょうか。