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InterviewCOG審査委員リレーインタビュー企画:
第10回 川島宏一 審査委員

――互いに助け合う価値見出せる社会への変革を後押し

 これまでは市場経済や公共サービスが一人一人のニーズを満たしてきました。欲しい人がお金を払って様々なサービスや製品を得て満足するという社会構造でしたし、困窮した人に対しては税金によってサービス――例えば救急医療や様々な恵まれない方への支援――を提供してきました。しかし今後は、上記のような企業や税金によるメカニズムは、小さなレベルでは必ずしも迅速には起こらないかもしれません。その前提に立った上でICTの力を使いつつ、地域の人が互いに助け合うということに大きな価値を見出せる社会に変革していくべきでしょう。COGは、そういった方向を目指しています。

 COGは、全国各地で起きている小さな助け合いの動きに光を当ててきました。地域の現場に光を当てるということがこれからの日本の行政、地域課題を解決する上での一つのポイントだと思っています。ただ、光を当てた動きが具体的な世の中の変化を生み出せているかというと、まだまだこれから強化していくべきところがあるかだろうと考えています。例えば、現場のマネジャーの方や世の中を変えていく原動力になっていただけている方に、データ分析やその成果を政策に変換するプロセスを後押しする力がもう一歩加われば、活動の影響力はもっと大きくなっていくのではないでしょうか。

――自治体の仕事のクリエイティブさ感じられる場に飛び込んで

 私もかつて、市役所と県庁で働いていました。その経験から実感したことは、「自治体職員の仕事はとてもクリエイティブだ」ということです。地域のリアルな課題に対して、地域の方々と話し合って「どういう解決策を作り出していくのか」ということを共にクリエイトすることができるからです。ところが一方で、既存の業務のプロセスややり方を尊重し、「あまりにもそれを維持するためにエネルギーをかけすぎているのではないか」とも感じていました。

 もし「何とかイノベーションを起こしたい」と思って燻っている方がいらっしゃったら、ぜひCOGに参加してください。COGに参加することへのハードルは極めて低いです。もちろん、参加することに対して自治体の中から色んな声が上がるかもしれません。しかし、COGには一人でも飛び込むことができますし、別に組織的にオーソライズされる必要も必ずしもありません。プロジェクトがフィーチャーされれば、それが翻って自治体を変えたり地域を変えたりする動きを巻き起こすきっかけになります。ぜひ挑戦してみてください。

――行政サービスを市民がデザインする時代に

 現在、いろいろな民間サービスが消費者と一緒に、消費者のニーズを満たすようにプロデュースされています。例えば化粧品、医療……様々なファニチャーでもそうでしょう。公共サービスだって同じです。地域の方々それぞれのニーズが違うので、全国金太郎飴のような施策というのは、実際に税金を支払った住民が本当に欲しいものなのでしょうか?

 ニーズにフィットした施策を実現するために、住んでいる市民、学生、研究者、エンジニアといった多くの様々な方々が自ら作っていく提案していかなければなりません。自治体はあくまで提案を受け止めてオーガナイズするという機会・場を設けるのが仕事であって、自治体が考えて提供する時代ではありません。市民・学生が中心になって「どういったサービスをどういう水準でほしいのか」というニーズを考えてデザインする社会になってきているのです。日本は残念ながらこういった動きにおいては相対的に遅れていると言わざるを得ません。新型コロナウイルス感染拡大に対して取り組んでいる現在、色んな問題が顕在しています。この状況をチャンスと捉え、一気に破壊的に変えていきませんか。

――ソリューションという特殊解を積み上げ、知恵磨き上げる「道場」

 大それて言うと、「静かな市民革命」が起こることを期待しています。「実際の地域社会の在り方をこれからどうしたいのか」「そこに住んでいる人が地域をそういう方向性で作りたいのか」という考えに基づいて地域の様々なリソース、特に税金に基づく公共的なリソースが動かされて教育、福祉、医療、環境といった様々な具体的な課題が解決されるような社会への変革が起ってほしいと思っています。それがCOGの力でネットワーク化されて、燎原の火のように燃え広がってほしいという期待を持っています。

 現実のソリューションはあくまで特殊解です。「一般的なアプローチ」というメニューはありますが、その地域の方々が受け取るハピネスというものの土台があって初めて解決されるものです。地域のニーズを消化できていないところに理想論を押し付けようと思っても実現できませんし、それぞれの地域リソースにあった形で適応可能なソリューションを組み立てていくしかありません。そして、そういったケースを積み上げるというのがこれからの地域社会にとって非常に重要な事。「こういう状況に対してはこういうソリューションが役に立った」というものが積み重なっていくことでソリューションのパターンができ、一般的な再現性のある知恵にしていくことを目指していかなければなりません。ぜひCOGを一つの道場として、いろんな方々が参加して、そこで生まれたケースがまた使われて修正されて蓄積されて改善させていくという、正にアジャイルなプロセスで世の中が変わっていくと良いと思っています。