公表されている測定値って本当に大丈夫?という話

2021年8月に下記のタイトルの記事が公開されました。

IAEA、日本の検査機関「適切」 福島沖調査

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210803/mca2108030822010-n1.htm

上記の報道に少し情報を付け加えます。日本分析センターや海洋生物環境研究所が参加したIAEA主催のテスト(Efficiency test)で好成績という話は、分析機関ではもはや当たり前の話であって、そうでなかったら分析機関としての体をなしていません。
(別の回ですが、私たちのラボもこのコンテストに参戦して、まずまずの成績を得ました(全参加国・メンバーの中で2位))

そのため、記事中にある「周辺海域の海水や魚などに行っている(日本の検査機関が行う)サンプリング調査(の測定)は適切だ」という文言は事実相応と考えますが、そこから拡張して「東電が日々分析している分析も正当か」と問われると私には疑問があります。

それはなぜでしょうか。1F構内にある分析室では日々最新の多くの分析機器を取り揃え、廃棄できない大量の試料が山積みの現場であることはよく承知しています。しかし、東電が環境試料を「適切に採取・保管・公表されているか」はほとんど非公開で、外部の機関が全部の試料を毎日現場でチェックしている訳ではありません。特に私がまずいと思うのは、「適切にサンプリングしているか」の確からしさです。法規制およびテロ対策というexcuseを聞きますが、現場や図面を確実に第3者が見ることができず、特例を除いて敷地外部に持ち出せもしないという方針を東電が貫いている以上、現場を誰も確かめようがないのが問題だと考えています。
(その数少ない特例の試料を分析した論文もありますので、お手すきの際にご覧ください。以前、園田政務官(当時)が会見場で「実際に飲んだ」試料です)

今までの東電の分析が相当に確からしいと実績が積み重なっているのならこのような疑問は生じません。しかし、これまでに東電では数多の測定トラブルがあっただけでなく、挙句には復興のためのイベント(発見!ふくしまお魚まつり 於 東京・日比谷公園)で東電はヨウ素の元素記号を「Y」と記述する映像を流し続ける有様です(もちろん正しくは「I」です)。
この程度の間違いを犯すようでは、測定値も「大丈夫なの?」という疑問が付きまとうことは至極当然のことと考えます。まずは何をするにも透明性のある測定体制の仕組み作りが必要と考えます。


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