光合成は、光エネルギーを生命が利用できる形に変換し、それらを利用してCO2を炭水化物へと固定する反応です。光合成に必要な基本的構成要素の大部分が明らかになってきましたが、それらの要素がどのように互いに作用しあっているのか、詳しいことはわかっていません。サッカーに例えるなら、今はまだプレーヤーが出揃った段階にあると言えます。当研究室では、光合成という「ゲーム」において、ゲームメーカーが誰なのか、また、それぞれのプレーヤーがどのように連携を取っているのかを明らかにすることを研究目的としています。私たちは、そのようなダイナミックな光合成系の応答機構の包括的解明を目指し、研究を進めています。
これまでの研究例です。
・栽培温度に応じて温度-光合成曲線が変化するメカニズム
・光合成で働くサイクリック電子伝達経路の新たな生理機能
・様々な環境における光合成誘導反応の生化学的・気孔的制限とその生態学的意義
自ら動くことのできない植物は、常に様々な環境ストレスを受けています。自然環境で考えてみると、気温や湿度、光の強さは、1日を通して変化しますし、季節によっても変わります。特に、植物の受ける光の強さは、晴れや曇りといった天候の影響を受けるほか、自己被陰や他個体との相互被陰によっても大きく変化します。植物は、多様な生理機能を利用して様々な環境に馴化・適応していますが、これらの環境ストレスは作物生産を低下させる要因になっています。
私たちは、様々な野生植物や変異体(シロイヌナズナ、イネ、タバコなど)を実験材料に、光合成の環境応答メカニズムを包括的に解明するべく研究を行っています。それらの基盤研究の成果に基づいて、様々な環境下における光合成と物質生産能力の強化を目指すなど、応用的研究にも着手しています。これらの研究は、作物の安定的な供給や食糧不足の解消だけではなく、大気CO2濃度上昇抑制にも貢献できると期待できますので、社会的にも植物科学的にも重要な課題の一つです。
これまでの研究例です。
・光環境の変動に伴うダイナミックな光合成系の応答機構の解明
・植物が高温環境に馴化するための新しい仕組み
・植物の光合成機能や水利用効率を制御する化合物の同定とその作用機構の解析
世界規模での深刻な食糧不足に対処するためにも、作物の増収は社会的にも植物科学的にも最も重要な課題の一つです。遺伝子組換えに頼らずに、光合成や作物生産性を向上させたり、抜本的に環境ストレス耐性を付与したりするような技術革新が必須です。私たちは、多種多様な特性を有する低分子化合物をセットにした化合物ライブラリーを活用することで、光合成や作物生産性の向上を目指しています。具体的には、光合成の可視化装置を用いて、光合成や植物成長に各種化合物が与える効果を個体から組織レベルで可視化・定量化する系を開発してきました。今後、光合成や作物生産性向上に寄与する新規化合物を同定することで、それら化合物の作用機作の網羅的解明を進めると同時に、農薬会社と連携した農薬や肥料の開発にもつなげたいと考えています。
地球レベルの急激な人口増加と環境の変化は、深刻な食糧不足を招きつつあり、いかに作物の収量を増加させるかは、植物科学研究の社会貢献において重要な課題です。私たちは、近未来において穀物・作物を安定的に供給できるようにしたいと考えています。その第一段階として、可能な限り環境負荷を低減し、高い生産性を安定して発揮する植物工場のモデル化を目指して研究を行っています。
研究目的に応じて、レタス、トマト、薬用植物、そして、マメ科植物などを実験材料としています。
*植物工場とは、光や温湿度、CO2濃度、水分や肥料など、生育に必要な環境を自動制御することによって、高品質のまま収穫量を増大できる未来型の農業です。
これまでの研究例です。
・上方照射法による葉の老化を抑制する新規栽培システムの開発
・植物工場技術による薬用植物に含まれる抗アルツハイマー病成分の増量法
・夜間や曇天時のLED補光によるトマトの生産性と品質向上
これまで大学、研究所、企業の方々と積極的に共同研究をおこなってきました。
今後も様々な方々と積極的に共同研究を行っていきたいと考えています。
ご相談・お問い合わせのある方はお気軽にいつでもご連絡ください。どうぞよろしくお願いします。
〒188-0002
東京都西東京市緑町1-1-1
東京大学 大学院農学生命科学研究科
附属生態調和農学機構
<研究室へのアクセス>
yamori(a)g.ecc.u-tokyo.ac.jp
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