研究内容

山東研究室では、新しい化学ツールを開発し、これまで捉えられなかった生命現象を観ること・操ることに挑戦しています。

テーマ2.細胞機能・運命制御に向けた人工増殖因子の開発

 私たちの体を構成する細胞は、外界からの情報伝達分子を細胞表層の受容体で受け取り、多様な応答を引き起こします。そのような機能発現に関連する分子の一つに「増殖因子」があります。増殖因子が示す生理活性は、現代医療に貢献する大きなポテンシャルを秘めています。例えば、再生医療において傷ついた臓器の修復を促したり、ES細胞・iPS細胞などの多能性幹細胞を目的の細胞へと分化させるなどの応用が進められています。しかしながら、天然の増殖因子はタンパク質から構成されるため、その安定性・品質管理・製造コストなどの観点において問題を抱えています。もしも天然の増殖因子の機能を肩代わりする「人工増殖因子」を作り出すことができれば、ライフサイエンス分野への大きな波及効果が期待されます。

 このような背景から、私たちは標的分子に選択的に結合する機能性分子(アプタマー)を利用した人工増殖因子の開発を進めています(下図)。試験管内進化法を始めとする分子進化工学を利用した機能性分子の取得や、次世代の機能性分子スクリーニング方法の開発に挑戦しています。これまでの成果として肝細胞増殖因子(HGF)の機能を再現するDNAアプタマーの設計に成功しています。開発した人工増殖因子は再生医療技術への応用を目指し、共同研究を含めた研究を展開しています。また、単に天然増殖因子の機能を模倣するのみでなく、巧みな分子設計を行うことで天然の増殖因子より強力に作用する増殖因子、外界の環境に応じて活性をスイッチさせるスマートな増殖因子など、これまでにない新たな生理活性分子を作り出せるかもしれません。最終的には細胞の機能・運命を意のままに制御する分子技術への飛躍を目指しています。