タンパク質模倣分子のデザイン
Computational Designや分子進化工学を利用した高機能タンパク質・蛋白質模倣分子の創出に挑戦しています。
私たちの体を構成する細胞は、外界からの情報伝達分子を細胞表層の受容体で受け取り、多様な応答を引き起こします。そのような機能発現に関連する分子の一つに「増殖因子」があります。増殖因子が示す生理活性は、現代医療に貢献する大きなポテンシャルを秘めています。例えば、再生医療において傷ついた臓器の修復を促したり、ES細胞・iPS細胞などの多能性幹細胞を目的の細胞へと分化させるなどの応用が進められています。しかしながら、天然の増殖因子はタンパク質からなり、その選択性、安定性などの観点において問題を抱えています。このような背景から私たちは、より優れたサイトカインや増殖因子蛋白質の創出、その機能を肩代わりする蛋白質模倣分子の総捨に挑戦しています。
増殖因子模倣分子のデザイン
HGF(肝細胞増殖因子)は肝細胞の増殖やiPS細胞の肝臓への分化に用いられる因子として知られています。HGFはMet受容体に結合するとMetの二量化を引き起こし、細胞内へシグナルを伝達します。そこで、この作用機序を再現するアプタマー二量体を設計し、高い活性を示すDNA型人工HGFを開発しました。。この人工HGFは天然HGFと同様にヒト正常細胞の増殖や、培養細胞の遊走を促すことが確認されています。受容体アゴニストアプタマーが再生医療分野における新たな分子基盤となり得ることが実証されました。
人工増殖因子による幹細胞培養
ヒトES細胞やiPS細胞を培養する際には塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と呼ばれるタンパク質を培地に添加する必要があります。しかしbFGFは熱的安定性が低く、そのままの状態では培養環境で長期間活性を保つことが困難であることが問題となっています。FGF受容体を活性化可能なDNAアプタマーの開発に成功しました。この人工FGFアプタマーは、市販のiPS細胞培養培地においてbFGFの代わりに添加することで、iPS細胞の未分化維持培養に応用可能であることが示しました。
[参考文献]
・ACS Nano 2023, 17, 9039–9048.
・Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 22745-22752.
・JACS Au 2021, 1, 578–585.
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・ケミカルタイムズ 2020, No. 2, こちらからダウンロード<.