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InterviewCOG審査委員リレーインタビュー企画:
第7回 林千晶 審査委員

――マネしたくなる、ファンになるプロジェクトに出会うのが楽しみ

 私たちは「どうすれば儲かるかを考える」社会から「お金が入る=幸せではないことに気付いている」社会へと転換する時代に生きています。資本主義中心から人間性重視へと社会の構造が移っていき、多様な市民一人一人が「どうなったら自分が幸せになれるのか」を考え行動していくことが必要になっていくでしょう。COGは5年前の開始当初からそんな「未来ってこうなったらいいな」を追い求めていて、社会の変遷とともにその理念はリアリティーを増してきています。

 私はCOGのアドバイザーではありますが、参加する方たちが私たちよりも先進的な考えを形にしていることに敬意を表しながら拝見しています。そして、プロジェクトを応援したり、マネさせてもらったりするつもりで参加しています。もう「アドバイザー」や「先生」ではなく、「ファン」の立場ですね。今年もファンになるようなプロジェクトが生まれればいいな、と楽しみにしています。

――市民の協力欠かせない課題をぶつけて

 これからの時代、自治体の活動には市民の参加が不可欠になっていきます。自治体が抱える問題は高齢者問題や待機児童問題といった大きく括られたものから、どんどん複雑かつ細分化されたものになっていき、自治体だけでは解決が図れなくなるでしょう。寧ろ、市民を中心に置き、自治体はサポートをしていくという形に移っていかねばなりません。

 その形を実現しようとするなら、「自治体がCOGに参加しない理由がない」と強くお勧めします。COGには自治体と市民がいい感じでコラボレーションする場が構築されています。まだ市民とのコラボレーションが実現できていないと感じている自治体の方は、まず「ここは際立たせたい」「自治体として戦略を切っていきたい」と思っている課題をCOGにぶつけてみてください。市民との協力が欠かせない課題が、一つか二つは必ずあるはずです。また、これまでに参加しているチームも、市民中心の地域づくりを深めていくのにCOGの枠組みを使ってもらえると嬉しいですね。

――「受賞する」ではなく「自分たちの幸せを形にする」を目標にして

 自治体と市民の関係は、大きく変わっています。これまで「官僚が国をデザインして、産業界が実装化して、消費者が利用する」という仕組みがあったかもしれません。しかし、社会が複雑に多様化している今、国がすべてをデザインして構造化することが不可能になってきているのです。市民一人一人が「こういう社会で生きていきたい」を構造化して、その実装のパートナーとして産業や国・行政が法律やルールを変えたりしてサポートする時代なのです。

 そんな社会のキーワードは「自治」で、それを実現できる場がCOGにはあります。これまで社会で良しとされてきた「自立(自分で立つ)」「自律(自分で律する)」の一人称は「個人」でした。でも「自治(自分で治める)」は「複数の人間」が中心でないと成立しない言葉。複数の人間で「私たちの幸せとは何か」に向けて活動していくというのが自治なのです。その活動の中心にはCOGが目指す理念と同じものがあると思っています。多岐にわたる様々な幸せがあり、市民が中心でそれらを形にしていける場。そして、そのサポートを自治体が担ってくれるという自治の理想形を、COGは可能にしてくれます。受賞することだけが目的ではなく、自分たちの幸せを形にしていくきっかけだととらえて、チャレンジしてほしいですね。

――「デザイン思考とデータ分析」「若者と熟年層」……両輪のコラボで活動強化して

 COGはデータ分析とデザイン思考で地域を元気にするのが目的の活動を支援しています。でも、そのどちらか一方に偏りがあるのが課題かなと思っています。あるチームはデータ分析中心で課題まで至っていなかったり、別のチームはものすごくはっきりした問題意識を持っているのにデータ分析を疎かにしていたり。問題意識から出発して、どこが課題の本質なのかをデータで1回確認してみて、本質が見えてきたらどうやって弱みを強みにつなげていくかをデザイン思考で考える……といった、両輪で活動を強化してほしい。デザイン思考が強いチームはデータ分析を取り入れる、もしくはデータ分析が得意な理系のチームはこれを機にデザイン思考を取り入れることができれば、社会によりインパクトを与えられる活動につながると思います。

 また、若い世代とその親やさらに上の世代が力を合わせているグループの活動にも期待をしています。若くて新しいアイデアと老練で堅実な実現力がそろえば、より画期的で社会の営みを変えていける活動になると思います。世代を超えた参加もお待ちしています。