カルバゾール骨格は有機ELなどの有機電子材料や抗酸化作用を有する天然物などに見られる骨格であり,カルバゾール骨格を利用した機能性有機材料の開発研究が盛んにおこなわれている.最近われわれは,パラジウム触媒存在下,2,2'-ジハロビフェニル誘導体をもちいて1級アミンを二度アリール化することで(ダブル-N-アリール化),カルバゾール骨格を効率良く合成できることを見いだした.この反応を鍵として天然物であるムコニンの効率的全合成や,ヘテロ原子で置換されたヘリセン(ヘテロヘリセン)の合成を達成している.これらのうちいくつかの化合物に関しては,特異な光学特性を有することが明らかになってきており,有機デバイスとしての応用が期待される.
(1) Nozaki, K.; Takahashi, K.; Nakano, K.; Hiyama, T.; Tang, H.-Z.; Fujiki,
M.; Yamaguchi, S.; Tamao K. Angew. Chem. Int. Ed., 2003, 42, 2051-2053.
(2) Kuwahara, A.; Nakano, K.; Nozaki, K. J. Org. Chem., 2005, 70, 413-419. Selected as the most accessed article in 2005. doi
(3) Nakano, K.; Hidehira, Y.; Takahashi, K.; Hiyama, T.; Nozaki, K. Angew. Chem.
Int. Ed. 2005, 44, 7136-7138. doi
近年,フレキシブルエレクトロニクス実現に向けて着々と研究開発が進んでいる.フレキシブルエレクトロニクスにおけるスイッチング素子として,有機電界効
果トランジスタ(有機FET)は必要不可欠であり,その性能向上に向けた研究開発が非常に活発におこなわれている.われわれのグループでは,実用的な有機
半導体の開発を目指して,高い酸化安定性を有するヘテロアセン(ヘテロ芳香環とベンゼン環が直線上に縮環した化合物)に着目し,それらの効率的な合成手法
の開発と有機半導体デバイスへの応用を検討している.
(1) Kawaguchi, K. Nakano, K. Nozaki, K. J. Org. Chem., 2007, 72, 5119-5128. doi
(2) Kawaguchi, K.; Nakano, K.; Nozaki, K. Org. Lett. 2008, 10, 1199 -1202. doi
(3) Nakano, K.; Takahashi, M.; Kawaguchi, K.; Nozaki, K. Synthetic Metals 2009, 159, 939-942. doi