野崎研究室 研究内容

野崎研究室では、

  • 有機化学の研究をおこなっています。
  • 均一系触媒反応を中心に、有機合成・高分子合成のための方法論を開発しています。同時に、独自の手法で得られる新物質についてもその機能を追求します。
  • その研究は美しいか? その研究は本当に社会に役立つ可能性があるのか? など、多角的な視点から「本当におもしろいこと」を追求します。研究対象の広さと、メンバーの多才さが自慢です。

分子触媒 再生可能資源活用へ向けた 触媒反応開発 新規重合触媒による 機能性ポリマー合成 デバイス構築に向けた 芳香族化合物の合成 均一系の正確さで機構を論じる 不均一系触媒開発

過去の研究内容はこちら


以下に、最近5年間の個々のテーマの説明を述べます。

1-1. ヒドロホルミル化反応

ヒドロホルミル化反応は、アルケンと水素・一酸化炭素から一炭素増炭したアルデヒドを得る反応であり、工業的に最も重要な均一系触媒反応のひとつである。当研究室では、より高い触媒活性および高い位置選択性を与えるヒドロホルミル化反応の開発を目指し、新規遷移金属触媒の探索を行っている。
ヒドロホルミル化反応には通常ロジウムやコバルトなどの9族金属が用いられるが、当研究室では、8族金属であるルテニウムを中心金属として持つ新規触媒を開発した。ルテニウム錯体を嵩高いリン酸エステル配位子と組み合わせることにより、1-アルケンの直鎖選択的ヒドロホルミル化反応に成功した[1]。更に最近、ロジウムと3座配位子であるN-Triphosの組み合わせにより、1-アルケンの枝分かれ選択的ヒドロホルミル化反応の開発にも成功した[2]。

アルコールは、ヒドロホルミル化反応および引き続く水素化反応の2段階で工業的に生産されている。当研究室ではロジウム触媒によるヒドロホルミル化反応とルテニウム触媒による水素化反応を組み合わせることで、アルケンからアルコールをワンポット高効率で合成することにも成功した[3–5]。石油化学プロセスの高効率化への貢献が期待される。

また、これまで着目されてこなかった逆反応「レトロヒドロホルミル化反応」も達成した[6]。イリジウム触媒を用いることで長鎖脂肪族アルデヒドからアルケンと一酸化炭素、水素を高収率で得ることができる。再生可能資源の炭素源としての利用への貢献が期待される。

最近の発表論文

[1] Takahashi, K.; Yamashita, M.; Tanaka, Y.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 4283–4387. 10.1002/anie.201108396
[2] Phanopoulos, A.; Nozaki, K. ACS Catal. 2018, 8, 5799–5809. 10.1021/acscatal.8b00566
[3] Takahashi, K.; Yamashita, M.; Ichihara, T.; Nakano, K.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 4488–4490. 10.1002/anie.201001327
[4] Takahashi, K.; Yamashita, M.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 18746–18757. 10.1021/ja307998h
[5] Yuki, Y.; Takahashi, K.; Tanaka, Y.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 17393–17400. 10.1021/ja407523j
[6] Kusumoto, S.; Tatsuki, T.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 8458–8461. 10.1002/anie.201503620

1-2. 二酸化炭素の水素化によるギ酸合成

ギ酸は繊維の染色助剤や牧草の貯蔵用添加剤などとして世界で70万トン以上生産される重要な工業原料であり、現在工業的には一酸化炭素と水の反応により合成されている。当研究室では安価で豊富に存在する二酸化炭素の有効利用を目指し、二酸化炭素の還元によるギ酸合成に高い活性を示す触媒の開発を行っている[2–7]。

当研究室ではPNPピンサー型三座配位子を有するイリジウム錯体を用いた反応の開発を行っている[1]。PNPイリジウムトリヒドリド錯体を二酸化炭素の水素化反応に用いたところ、非常に効率的にギ酸を合成できることがわかった[2–4]。その触媒回転頻度は150,000毎時(発表当時世界最高)、触媒回転数は3,500,000(今なお世界最高)に達し、世界で最も高い活性を示す二酸化炭素の水素化触媒のひとつである。
また、これまで報告された二酸化炭素の還元によるギ酸合成には無機塩基が一般的に用いられていた。一方で、当研究室は有機塩基を利用した高活性なギ酸合成を報告した[6,7]。特にPCPイリジウムクロリド錯体を用いた際に触媒回転数230,000を達成した[7]。有機塩基を用いることで中和を経ず蒸留によりギ酸を分離することができるため、産業への応用が期待される。

その他、銅錯体を用いたアルデヒドと二酸化炭素からのα-ヒドロキシ酸合成[8]など、二酸化炭素を還元により様々な有用化合物へ変換する手法の開発を進めている。

最近の発表論文

[1] Yano, T.; Moroe, Y.; Yamashita, M.; Nozaki, K. Chem. Lett. 2008, 37, 1300–1301. 10.1246/cl.2008.1300
[2] Tanaka, R.; Yamashita, M.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 14168–14169. 10.1021/ja903574e
[3] Tanaka, R.; Yamashita, M.; Chung, L. W.; Morokuma, K.; Nozaki, K. Organometallics 2011, 30, 6742–6750. 10.1021/om2010172
[4] Yamashita, M.; Moroe, Y.; Yano, T.; Nozaki, K. Inorg. Chim. Acta 2011, 369, 15–18. 10.1016/j.ica.2010.08.034
[5] Shintani, R.; Nozaki, K. Organometallics 2013, 32, 2459–2462. 10.1021/om400175h
[6] Aoki, W.; Wattanabinin, N.; Kusumoto, S.; Nozaki, K. Bull. Chem. Soc. Jpn. 2016, 89, 113–124. 10.1246/bcsj.20150311
[7] Takaoka, S.; Eizawa, A.; Kusumoto, S.; Nakajima, K.; Nishibayashi, Y.; Nozaki, K. Organometallics 2018, 37, 3001–3009. 10.1021/acs.organomet.8b00377
[8] Masada, K.; Kusumoto, S.; Nozaki, K. Org. Lett. in press. 10.1021/acs.orglett.0c00995

1-3. 金属–配位子協働作用を用いた結合切断/形成反応

遷移金属中心上での酸化的付加/還元的脱離による結合の切断/形成反応に対して、金属と配位子が同時に結合切断/形成に参与する「金属配位子協働作用」が近年注目を集めている。この作用により、金属のみでは不可能であった特異な反応性および選択性を引き出すことができる。当研究室では、酸化還元活性な配位子を持つ錯体の金属–配位子協働作用による結合切断/形成に着目し研究を行っている。最近、シクロペンタジエニル配位子を有するイリジウム/ロジウムヒドリド錯体を用いることで、C–C単結合の酸化剤を用いない飽和炭化水素類の触媒的脱水素化反応[1,2]、C–O結合の加水素分解反応[3]、アミンボランの脱水素反応[4]を開発した。有機合成や創薬化学、バイオマス利用などへの応用が期待される。実際に開発した触媒がリグニンモデル化合物中のC–O結合やC–C結合の切断反応に利用できることを見出した[5]。

上記の反応は主にH–H結合切断/形成を鍵としていたが、近年金属配位子協働作用を用いた様々な結合の切断/形成反応も盛んに研究されている[6]。本研究室ではヒドロキシシクロペンタジエニルメチル白金(IV)錯体からの金属配位子協働的C–H結合還元的脱離反応を報告した[7]。本反応は、これまでにない機構によるC–H結合還元的脱離およびその逆反応である酸化的付加の可能性を提示するものであった。同機構によるC–H結合酸化的付加反応及びその触媒反応への応用が期待される。

最近の発表論文

[1] Kusumoto, S.; Akiyama, M.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 18726–18729. 10.1021/ja409672w
[2] Ando, H.; Kusumoto, S.; Wu, W.; Nozaki, K. Organometallics 2017, 36, 2317–2322. 10.1021/acs.organomet.7b00245
[3] Kusumoto, S; Nozaki, K. Nat. Commun. 2015, 6, 6296. 10.1038/ncomms7296
[4] Pal, S.; Kusumoto, S.; Nozaki, K. Organometallics 2018, 37, 906–914. 10.1021/acs.organomet.7b00889
[5] Kusumoto, S.; Kishino, M.; Nozaki, K. Chem. Lett. 2020, 49, 477–480. 10.1246/cl.200037
[6] Higashi, T.; Kusumoto, S.; Nozaki, K. Chem. Rev., 2019, 119, 10393–10402. 10.1021/acs.chemrev.9b00262
[7] Higashi, T.; Ando, H.; Kusumoto, S.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc., 2019, 141, 2247–2250. 10.1021/jacs.8b13829

2-1. オレフィンと極性モノマーの配位共重合

疎水性の炭化水素であるポリオレフィンに極性官能基を導入することで、接着性、着色性、染色性などの親水性の機能が向上し、用途が飛躍的に広がると期待される。そのための最も有効な手段がオレフィンと極性モノマーの共重合である。我々はこれまでに、ホスフィン-スルホナート配位子をもつパラジウム触媒を用いることでエチレンと各種極性モノマーの配位共重合を達成しており[1]、最近では触媒の実用化に向けて、さらなる触媒活性および分子量の向上に取り組んでいる。ホスフィン-スルホナート配位子の置換基の立体効果を系統的に調べることで、従来の触媒系より劇的に高い分子量のポリマーを合成することに成功した[2]。

さらに、非対称な電子供与性部位をもつ二座配位子がエチレンと極性ビニルモノマーの配位共重合に適していると考え、新規共重合触媒としてBPMO配位子[3,4]やIzQO配位子[5]に代表される含窒素複素環カルベン(NHC)を含む二座配位子[6–8]を有するパラジウム触媒の開発にも成功している。

これらの触媒を用いることで、エチレンと1,1-二置換エチレンやカルベンなど様々な極性モノマーとの共重合を世界で初めて達成した[9–11]。

またエチレン/極性モノマー共重合よりも高難度反応であるプロピレン/極性モノマー共重合にも積極的に取り組んでいる。IzQO配位子[4]やホスフィン-スルホナート配位子[12]を有するパラジウム錯体が高難度共重合反応に効果的であることを見出している。

最近の発表論文

[1] Ito, S.; Kanazawa, M.; Munakata, K.; Kuroda, J.; Okumura, Y.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 1232–1235. 10.1021/ja1092216
[2] Ota, Y.; Ito, S.; Kuroda, J.; Okumura, Y.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 11898–11901. 10.1021/ja505558e
[3] Mitsushige, Y.; Carrow, B. P.; Ito, S.; Nozaki, K. Chem. Sci. 2016, 7, 737–744. 10.1039/C5SC03361F
[4] Mitsushige, Y.; Yasuda, H.; Carrow, B.; Ito, S.; Kobayashi, M.; Tayano, T.; Watanabe, Y.; Okuno, Y.; Hayashi, S.; Kuroda, J.; Okumura, Y.; Nozaki, K. ACS Macro Lett. 2018, 7, 305–311. 10.1021/acsmacrolett.8b00034
[5] Nakano, R.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 10934–10937. 10.1021/jacs.5b06948
[6] Tao, W.; Akita, S.; Nakano, R.; Ito, S.; Hoshimoto, Y.; Ogoshi, S.; Nozaki, K. Chem. Commun. 2017, 53, 2630–2633. 10.1039/C7CC00002B
[7] Akita, S.; Nakano, R.; Ito, S.; Nozaki, K. Organometallics 2018, 37, 2286–2296. 10.1021/acs.organomet.8b00263
[8] Tao, W.; Wang, X.; Ito, S.; Nozaki, K. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2019, 57, 474–477. 10.1002/pola.29270
[9] Wang, X.; Seidel, F. W.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 12955–12959. 10.1002/anie.201906990
[10] Wang, X.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 15635–15640. 10.1021/jacs.8b10335
[11] Yasuda, H.; Nakano, R.; Ito, S.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 1876–1883. 10.1021/jacs.7b12593
[12] Ota, Y.; Ito, S.; Kobayashi, M.; Kitade, S.; Sakata, K.; Tayano, T.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 7505–7509. 10.1002/anie.201600819

2-2. 二酸化炭素を用いた共重合

二酸化炭素は安価で豊富に存在する炭素資源であり、二酸化炭素をC1源として有効に利用できる合成手法の開発が望まれている。当研究室では、二酸化炭素をエポキシドと共重合させることによりポリカーボネートを、ブタジエンと共重合させることによりポリラクトンを得ることに成功した。

2-2-1. エポキシドと二酸化炭素の交互共重合

有望な二酸化炭素変換反応のひとつが、二酸化炭素とエポキシドの交互共重合反応によるポリカルボナート合成である。しかし、生成するポリカルボナートの熱物性の低さ、及び使用する金属錯体の毒性の高さが実用化の大きな障壁となっている。当研究室では、これまでに熱物性の改善を目指し、二酸化炭素とエポキシドの立体規則性共重合を報告している[1]。分液操作のみでポリカルボナートから触媒の高効率除法を開発し、触媒を再利用する手法を開発した[3]。
触媒の毒性そのものを低くするため、低毒性かつ安価な鉄を中心金属として用いた重合触媒の開発を行い、重合活性を持つ鉄触媒を世界で初めて当研究室から報告した[4]。また、マンガン、チタンやジルコニウムなどを用いる触媒系も開発している[2,6]。

理論計算による重合活性を予測する試みも行い、より高い活性を持つ錯体構造を予測する知見を得ることにも成功している[5]。反応機構に関する知見をもとに複数の金属中心が二酸化炭素とエポキシドを活性化する触媒の開発も進めている[7,8]。

最近の発表論文

[1] Nakano, K.; Hashimoto, S.; Nakamura, M.; Kamada, T.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 4868-4871. 10.1002/anie.201007958
[2] Nakano, K.;Kobayashi. K.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 10720–10723. 10.1021/ja203382q
[3] Nakano, K.; Fujie, R.; Shintani, R.; Nozaki, K. Chem. Commun. 2013, 49, 9332–9334. 10.1039/C3CC45622F
[4] Nakano, K.; Kobayashi, K.; Ohkawara, T.; Imoto, H.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 8456–8459. 10.1021/ja4028633
[5] Ohkawara, T.; Suzuki, K.; Nakano, K.; Mori, S.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 10728–10735. 10.1021/ja5046814
[6] Robert, C.; Ohkawara, T.; Nozaki, K. Chem. Eur. J. 2014, 20, 4789–4795. 10.1002/chem.201303703
[7] Hatazawa, M.; Takahashi, R.; Deng, J.; Houjou, H.; Nozaki, K. Macromolecules 2017, 50, 7895–7900. 10.1021/acs.macromol.7b01130
[8] Asaba, H.; Iwasaki, T.; Hatazawa, M.; Deng, J.; Nagae, H.; Mashima, K.; Nozaki, K. in press. 10.1021/acs.inorgchem.0c01156

2-2-2. 二酸化炭素とアルケン・ジエン類の共重合体合成

二酸化炭素は炭素の再安定状態であり、他の物質に変換するためには外部よりエネルギーを与える必要がある。したがって、安価で生産量の多いアルケン類やジエン類の化学エネルギーを用いて二酸化炭素を固定化し、ポリマーへ変換できれば理想的である。しかし、単に二酸化炭素とアルケンを重合条件下にさらしても、アルケンの単独重合が進行してしまう。 一方で我々は二酸化炭素と合成ゴム原料であるブタジエンから二段階反応で共重合体を合成することに成功した[1]。パラジウム触媒によるラクトン中間体の生成に続くラジカル重合によって、33 mol%(29重量パーセント)という高い二酸化炭素含有率が達成された。得られた共重合体は、高いガラス転移点・分解点など、物性面でも既存の二酸化炭素を用いたポリマーとは異なった特徴をもつ。

またこのポリマーは、水またはアミン存在下において可逆的に構造が変化することが分かった[2]。特に加水分解により開環したポリマーは加熱するだけで元のラクトン構造へ戻ることが分かった。この特異的な可逆反応はカルボン酸とヒドロキシ基が剛直なポリマー骨格中に固定されていることに起因していると考えられる。

最近の発表論文

[1] Nakano, R.; Ito, S.; Nozaki, K. Nature Chem. 2014, 6, 325–331. 10.1038/nchem.1882
[2] Moon, S.; Masada, K.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 10938–10942. 10.1021/jacs.9b03205

3-1. ヘリセン類縁体の合成

ヘリセンは、複数の芳香環がらせん状にオルト縮環した分子群であり、共役面の非平面性やらせん不斉など、ねじれた構造に起因する特異な性質を示す。我々はこれまでに、中央に窒素、酸素、リン、ケイ素などの種々のヘテロ原子を含む五員環を有するヘリセン類縁体を合成し、導入するヘテロ原子の種類によって異なる性質を示すことを明らかにしてきた[1–4]。 リン原子を有するホスホラヘリセンは、ラセミ体の結晶中において、各エナンチオマーがカラムナー状に集合し、それぞれ一方向を向いて並んでおり、結晶構造ではキラリティーに関する異方性が存在する[2]。

ケイ素およびsp3炭素を導入したヘリセン状分子は、小分子として最高レベルの円偏光発光特性および蛍光量子収率を示す[3,4]。

炭素のみからなるヘリセン状分子を脱プロトン化し、シクロペンタジエニル配位子として利用すれば、ヘリセン金属錯体を合成できる[5,6]。得られた錯体は光学活性体として単離でき、らせん反転挙動や不斉光学特性を調べることができた。また、単核錯体は全く発光を示さないのに対し、二核ルテニウム錯体は溶液および固体状態においてりん光発光を示すことを見出した。

最近の発表論文

[1] Nakano, K.; Hidehira, Y.; Takahashi, K.; Hiyama, T.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 7136–7138. 10.1002/anie.200502855
[2] Nakano, K.; Oyama, H.; Nishimura, Y.; Nakasako, S.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 695–699. 10.1002/anie.201106157
[3] Oyama, H.; Nakano, K.; Harada, R.; Kuroda, R; Naito, M.; Nobusawa, K.; Nozaki, K. Org. Lett. 2013, 15, 2104–2107. 10.1021/ol4005036
[4] Oyama, H.; Akiyama, M.; Nakano, K.; Naito, M.; Nobusawa, K.; Nozaki, K. Org. Lett. 2016, 18, 3654–3657. 10.1021/acs.orglett.6b01708
[5] Akiyama, M.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 2040–2044. 10.1002/anie.201611488
[6] Akiyama, M.; Tsuchiya, Y.; Ishii, A.; Hasegawa, M.; Kurashige, Y.; Nozaki, K. Chem. Asian. J. 2018, 13, 1902–1905. 10.1002/asia.201800780

3-2. ヘテロ元素含有多環芳香族炭化水素の合成

複数のベンゼン環が縮環した多環芳香族炭化水素は、広がったπ共役系に由来する導電性、光物性等の特異な性質が期待できる興味深い分子群である。この多環芳香族炭化水素に対してヘテロ元素を導入することで、異なる物性や高い安定性を付与できるため、幅広く研究が行われている。我々はヘテロ元素を含む多環芳香族炭化水素の合成を可能にする新規反応の開発研究を進めている。これまでに9a-アザフェナレニル骨格を有する新規縮環アゾメチンイリドを設計・合成し、種々のアルキンやアルケンとの1,3-双極子付加反応が良好に進行することを見出した[1]。引き続く酸化的脱水素反応により、高度に縮環したピロール構造を有する多環芳香族炭化水素を与えた。

最近では、この反応を利用してボウル型の形状をもつアザペンタベンゾコラニュレンの合成にも成功した[2]。この分子は結晶中でbowl-in-bowl型の集合構造を示す。また、コラニュレンとの反応[3]から、含窒素フラーレンC80-xNxの部分構造である含窒素バッキーボウルを合成した[4]。

さらに近年、無置換アザペンタベンゾコラニュレンの五重C–Hボリル化を経由した官能基化により、3,4,5-トリアルコキシフェニル基を持つ液晶性のアザペンタベンゾコラニュレン分子を合成し、この分子が一次元ヘキサゴナルカラムナー相を示すことを明らかにした[5]。

最近の論文発表

[1] Ito, S.; Tokimaru, Y.; Nozaki, K. Chem. Commun. 2015, 51, 221–224. 10.1039/C4CC06643J
[2] Ito, S.; Tokimaru, Y.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 7256–7260. 10.1002/anie.201502599
[3] Tokimaru, Y.; Ito, S.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 15560–15564. 10.1002/anie.201707087
[4] Tokimaru, Y.; Ito, S.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 9818–9822. 10.1002/anie.201707087
[5] Nagano, T.; Nakamura, K.; Tokimaru, Y.; Ito, S.; Miyajima, D.; Aida, T. Nozaki, K. Chem. Eur. J. 2018, 24, 14075–14078. 10.1002/chem.201803676

4. 均一系の正確さで機構を論じる不均一系触媒を用いた有機合成反応の開発

回収・再利用可能な不均一系触媒は石油化学産業において、基礎化学品合成プロセスのおよそ8割以上に用いられている。しかし、活性点構造の精密制御が困難であることから、厳密な反応の制御が必要である精密有機合成分野には原子・分子レベルで設計可能な均一系触媒が圧倒的に多く用いられている。我々は均一系及び不均一系触媒の利点を持ち合わせた「均一系の正確さで機構を論じる不均一系触媒」を創出し、新規高難度有機合成反応を開発することを目指す。