含フッ素ポリマーは、フッ素の特殊性に由来した独特の物性(撥水撥油性、耐薬品性、低屈折率、透明性)を持つことが知られている。しかし、フッ素独特の物性ゆえに、フッ素の含有量が大きくなるほど一般の有機合成法や高分子合成法を直接適応することは難しい場合が多く、含フッ素エポキシドの単独重合例は数例に限られてきた。我々のグループはフッ素含有量を大幅に高めたモノマーを用いても、高活性、位置選択性を保持した系を開発した。
(1) Sakakibara, K.; Nakano, K.; Nozaki, K. Chem. Commun., 2006, 3334-3336. doi
(2) Sakakibara, K.; Nakano, K.; Nozaki, K. Macromolecules 2007, 40, 6136-6142. doi
ポリエチレンは最も代表的な汎用高分子のひとつであるが、炭化水素であるため一般に着色性や接着性などの機能性に乏しい.ポリエチレンに極性官能基を導入することによる機能性の付与は、産学官問わず多くのコミュニティから注目を集める課題である.我々はこれまでに、ホスフィンースルホナート配位子を有するパラジウム触媒を用いることで、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、酢酸ビニルを含む各種極性ビニルモノマーとエチレンの配位-挿入共重合を達成している.得られた共重合体は線状ポリエチレン主鎖に極性官能基が直接結合しており、他の触媒では得られない新規構造を有している.その反応機構についても計算化学を用いて詳細に検討し、その特異な触媒作用が何に由来するのかを明らかにしている.
(1) Kochi, T.; Yoshimura, K.; Nozaki, K. Dalton Trans. 2006, 25-27. doi
(2) Kochi, T.; Noda, S.; Yoshimura, K.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 8948-8949. doi. This article was highlighted in Angewandte Chemie.
(3) Noda, S.; Kochi, T.; Nozaki, K. Organometallics 2009, 27, 656-658. doi
(4) Noda, S.; Nakamura, A.; Kochi, T.; Chung, L. W.; Morokuma, K.; Nozaki,
K. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 14088-14100. doi
(5) Ito, S.; Munakata, K.; Nakamura, A.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 14606-14607. doi
(6) Nozaki, K.; Kusumoto, S.; Noda, S.; Kochi, T.; Chung, L. W.; Morokuma, K.; J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, ASAP. doi
一般に極性モノマーの配位重合においては、極性官能基が錯体触媒の金属中心に対して配位してしまい、重合活性が低くなることが広く知られている。我々は金属上の配位子として嵩高いホスフィン配位子を用いて金属周りの空間を制御することで、極性官能基の存在下でもノルボルネンの重合反応が進行することを見いだした。この触媒系では共重合反応において比較的狭い分子量分布を有することからリビング性の高い重合反応が進行していると考えている。
(1) Yamashita, M.; Takamiya, I.; Jin, K.; Nozaki, K. Organometallics
2006, 25, 4588-4595. doi
(2) Yamashita, M.; Takamiya, I.; Jin, K.; Nozaki, K. J. Organomet. Chem.
2006, 691, 3189-3195. doi
(3) Takamiya, I.; Yamashita, M.; Murotani, E.; Morizawa, Y.; Nozaki, K. J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 2008, 46, 5133-5141. doi
(4) Takamiya, I.; Yamashita, M.; Nozaki, K. Organometallics 2008, 27, 5347-5352. doi