2. CO,CO2などの小分子を用いた合成反応

2-1. 触媒的不斉交互共重合

不斉交互共重合(1) オレフィン類と一酸化炭素の不斉交互共重合
不斉交互共重合(2) エポキシドと二酸化炭素の不斉交互共重合
(これらは研究内容1.と重複するので省略)

2-2. 極性ビニルモノマーと一酸化炭素の完全交互共重合反応

オレフィンと一酸化炭素の完全交互共重合により得られるγ-ポリケトンは優れた機械強度、熱安定性を有しており,エンジニアリングプラスチックとしての応用が期待される.これまでにモノマーとして極性官能基を有するオレフィンを用いた例はなかった.我々はホスフィン-スルホナート配位子を有するパラジウム触媒を用いることで極性ビニルモノマーと一酸化炭素との交互共重合反応を達成した.また、極性ビニルモノマー/スチレン/一酸化炭素の三元共重合にも成功した.これにより多様な構造および物性を有するγ-ポリケトンを提供することが可能になった.

最近の発表論文

(1) Kochi, T.; Nakamura, A.; Ida, H.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 7770-7771. doi. This article was highlighted in Angewandte Chemie.
(2) Nakamura, A.; Munakata, K.; Kochi, T.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 8128-8129. doi
(3) Kageyama, T.; Ito, S.; Nozaki, K. Chem. Asian J., 2011, 6, 690-697. 10.1002/asia.201000668

2-3. 一酸化炭素等価体としてのC1資源、ジメチルホルムアミドやギ酸を活用した有機合成反応

工業化学において安価で大量に手に入る一酸化炭素は合成化学上非常に有用な資源となりうる。しかし一酸化炭素はその毒性故に取扱が困難であることから、これに替わるC1炭素源の確保が急務である。我々はジメチルホルムアミドやギ酸をC1資源として有機合成化学上有用な反応を見いだした。

ジメチルホルムアミドを用いたヨウ化アリール及びヨウ化アルケニルのアミノカルボニル化


ギ酸を用いたビフェニル誘導体の一段階ヒドロキシル-カルボキシル化


ギ酸を用いた置換ベンゼンのカルボキシル化

最近の発表論文

(1) Hosoi, K.; Nozaki, K.; Hiyama, T. Org. Lett., 2002, 4, 2849-2851.
(2) Shibahara, F.; Kinoshita, S.; Nozaki, K. Org. Lett., 2004, 6, 2437-2439.
(3) Sakakibara, K.; Yamashita, M.; Nozaki, K. Tetrahedron Lett., 2005, 46, 959-962. doi

2-4. エポキシドと二酸化炭素の交互共重合反応

エポキシドと二酸化炭素との交互共重合反応は,二酸化炭素を化学製品として固定化する手法として最も注目されている反応のひとつである.また,得られるポリカーボナートは今後プラスチックとしての利用が期待できるので,その効率的合成を実現する触媒の開発は重要課題である.これまでに開発された触媒系では,プロピレンオキシドなどの末端エポキシドを重合させた場合,目的のポリカーボナートに加えて,環状カーボナートが副生することが問題であった.最近われわれのグループでは,重合を進行させる機能部位と環状カーボナート副生を抑制する機能部位を併せ持つ新規重合触媒を開発し,ポリカーボナートを選択的に合成することに成功した.

最近の発表論文

(1) Nakano, K.; Kamada, T.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 7274-7277.  doi
(2) Nakano, K.; Nakamura, M.; Nozaki, K. Macromolecules 2009, 42, 6972-6980. doi
(3) Nakano, K.; Hashimoto, S.; Nozaki, K. Chem. Sci. 2010, 1, 369-373. doi

2-5. 環状エーテルと一酸化炭素との反応

エポキシドと一酸化炭素とを交互共重合させるとポリエステルが合成できる.われわれは,コバルト触媒をもちいることで,末端にクロチル基をもつオリゴエステルを選択的に合成できることを見出した.また,オキセタンと一酸化炭素との共重合にも初めて成功した.


ロジウム触媒をもちいたエポキシド,一酸化炭素,ハロゲン化アルキルの三成分連結反応を開発し,医薬品などの合成中間体として有用なハロヒドリンエステルを効率的に合成することに成功した.

最近の発表論文

(1) Nakano, K.; Kondo, F.; Nozaki, K. J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 2004, 42, 4666-4670.
(2) Permana, Y.; Nakano, K.; Yamashita, M.; Watanabe, D.; Nozaki, K. Chem. Asian J. 2008, 3, 710-718. doi
(3) Nakano, K.; Kodama, S.; Permana, Y.; Nozaki K.; Chem. Commun. 2009, 6970-6972. doi

2-6. 二酸化炭素の水素化によるギ酸合成


PNPピンサー型三座配位子を有するイリジウム触媒を用いることで二酸化炭素の効率的な水素化反応を達成した.その触媒回転数は最高で3,500,000に達し,世界で最も高活性な二酸化炭素の水素化触媒である.

最近の発表論文

(1) Tanaka, R.; Yamashita, M.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc.2009, 131, 14168-14169. doi highlighted in Angewandte Chemie.

2-7. アルケンのワンポットヒドロホルミル化-水素化による直鎖アルコール合成

アルキルホスフィン/Rh触媒または二種の異なるRh触媒とRu触媒の存在下、アルケンと水素と一酸化炭素から一段階で選択的に直鎖アルコールを合成できることを見いだした。


最近の発表論文

(1) Ichihara, T.; Nakano, K.; Katayama, M.; Nozaki, K. Chem. Asian J. 2008, 3, 1722-1728. doi
(2) Takahashi, K.; Yamashita, M.; Ichihara, T.; Nakano, K.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed., 2010,49, 4488-4490. doi. This article was selected as an outside cover. highlighted in ChemCatChem, highlighted at the following blogs, NNNS chemistry blog, ユーキの有機化学Hot Topics