Overview

連携研究機構の概要

微生物科学イノベーション連携研究機構(CRIIM:Collaborative Research Institute for Innovative Microbiology)は、東京大学の各部局に所属している微生物学に関連する多様な分野の研究者を結集した統合型微生物研究拠点で、2018年4月1日から活動を開始しています。

ミッション

Mission.1

既存の枠組みを超えた革新的微生物科学研究を展開し、新たな学術的価値を創造します。

Mission.2

産学官の有機的連携を強化し、知の社会実装を加速させ、新産業の創出を目指します。

Mission.3

世代の学術的・産業的発展を担う、国際的イノベーション人材を育成します。

組織構成

東京大学大学院農学生命科学研究科が責任部局となり、工学系研究科・理学系研究科・医科学研究所・薬学系研究科・新領域創成科学研究科・定量生命科学研究所・大気海洋研究所・生物生産工学研究センター・環境安全研究センターに所属する、計62名の教員が参画しています。

今後、学外の機関・企業とも連携を構築する予定です。

関連組織リンク

組織図

微生物科学イノベーション連携研究機構(CRIIM)は、「革新的ものづくり」「革新的環境・エネルギー」「革新的農業生産・生態系保全」「革新的基礎・基盤技術整備」の、4つの研究ユニットに参画教員を分け、年に一回の分科会を開くことにより、参画教員間の共同研究を促進します。

活動内容

  1. 4つの研究ユニットが年に一回の分科会を開催し、参画教員間の共同研究を促進します。
  2. 国際シンポジウムや、各ユニット主催のワークショップを通し、産学官の微生物学研究者の人的交流を促進し、新しい科学・新しい産業を醸成します。
  3. CRIIM内での、共同研究促進に向けた研究助成基金の創設、運営を行います。
  4. 5年後を目処に、各研究ユニットをベースとし、次世代微生物科学をリードできる新しい研究組織の設置を目指します。
  5. 産学官の研究者や大学院生を対象に、提携先企業の研究者の協力を得て、社会実装の現場を知る機会を提供します。
  6. 多様な社会ニーズに合った、卓越した微生物研究者を社会に供給するための教育プログラムを提供します。

機構長挨拶

大西 康夫
[農学生命科学研究科 教授]

これまでの歩みと今後に向けて

東京大学微生物科学イノベーション連携研究機構(略称:CRIIM)・機構長の大西康夫です。初代CRIIM機構長・妹尾啓史先生の後を継いで、2020(令和2)年4月1日より機構長を拝命しております。

東京大学の各部局に所属している微生物学に関連する多様な分野の研究者を結集した統合型微生物研究拠点としてCRIIMが設立されたのは、2018年4月1日です。現在、設置期間(10年)の折り返し点を過ぎ、後半の2年目を迎えておりますが、ここで、これまでの活動の歩みを振り返るとともに、今後の展開について述べさせていただきます。

発足年度である2018年度においては、4つのユニット(革新的ものづくり研究ユニット、革新的環境・エネルギー研究ユニット、革新的農業生産・生態系保全研究ユニット、革新的基礎・基盤技術整備研究ユニット)ごとにキックオフ会合を開催し、参画メンバー間で研究紹介を行うとともに、「微生物ウイーク2019」に向けた準備を開始しました。微生物研究と関連のある21の学協会と連携し、44の企業・団体からの協賛を得て、2019年7月22日(月)〜27日(土)に本学農学部弥生講堂で開催された「微生物ウイーク2019」は、我が国の微生物学研究全体を俯瞰する一大イベントとなりました。一方、2019年度にはCRIIMにおいて、社会連携研究部門「酵母発酵学」(アサヒビール株式会社)が発足し、民間企業との本格的な連携も開始しました。

2020年度には、企業の微生物研究者によるオムニバス形式の講義である「微生物科学イノベーション特論」を全学共通科目として開講するとともに、学生向け講演企画「企業の研究・開発の現場を知ろう」を開催し、若手人材の育成に向けた活動を本格的に開始しました。なお、2021年度より、企業の微生物研究者による講義を「微生物科学イノベーション特論Ⅰ」とし、新たに微生物を研究対象としている学内教員によるオムニバス講義である「微生物科学イノベーション特論Ⅱ」を開始しました。「微生物科学イノベーション特論Ⅱ」は学内他部局の教員に向けた研究紹介という目的もありました。なお、この2つの講義は現在も継続しています。一方、2020年度には、CRIIMメンバーの部局を超えた共同研究に対する研究助成(CRIIM共同研究助成)制度を新設し、2020年度は3件、2021年度は1件の助成および成果報告会を行いました。

2021年度には、発足当時から参画メンバー間で利用してきたメーリングリストに加えて、参画メンバーの研究室員(学生、ポスドク)の希望者が登録する新しいメーリングリスト「CRIIM Extended Member ML」の運用を開始し、各種セミナーなどの情報および「微生物科学イノベーション特論Ⅰ,Ⅱ」の講義情報などを、直接、学生・若手研究者に配信することを始めました。また、2021年度に社会連携講座「微生物エコテクノロジー」(ダイキン工業)が大学院農学生命科学研究科に設置されましたが、CRIIMはダイキン工業に対する窓口として大きな役割を果たしました。

2022年度にはメンバー拡張のための活動を行い、2023年度に総合文化研究科から7名がCRIIMに参画することになりました。また、発足から5年経過した2022年度末には、CRIIM総会を開催し、それに引き続いて、CRIIMにおいて重要な役割を果たした微生物潜在酵素(天野エンザイム)寄付講座(2018年4月に農学生命科学研究科に設置)の終了シンポジウムを行いました。

設置から5年間で、計20件の学術集会を主催、共催、後援しています。また、個々の参画教員は活発に研究活動を行い、2022年度までに586報の原著論文、179報の総説の出版、1288件の学会発表を、CRIIMの所属であることを明記して行いました。CRIIMメンバーの部局間の共同研究は年度集計で延べ47件を超えていますが、形にならないものを含めて、CRIIMは微生物科学に関連する学内研究者間のネットワーク構築に多大な貢献を果たしてきました。また、上述したように、「微生物科学イノベーション特論Ⅰ,Ⅱ」の開催等を通して、若手人材の教育にも貢献してきました。さらに、関連した2つの社会連携講座の活動を通して、産学の連携や社会実装に向けた応用研究にも本格的に取り組むことができました。

以上、中間評価の資料より当初の5年間の成果をまとめましたが、設置6年目となる2023年度には、大きなイベントとして、ミネソタ大学バイオテクノロジーセンター(BTI)とのジョイントシンポジウム(2023年11月8-10日)を東京で開催しました。なお、ミネソタ大学BTIとは、2022年にBTIと農学生命科学研究科の間で、学術交流協定が再締結された際、CRIIMが生物生産工学研究センターに代わって、この協定に加わっています。

2024年度には翌年以降の準備を大きく進めています。まず、2025年秋にミネソタ大学BTIとのシンポジウムをアメリカで開催する予定です(9月下旬あるいは10月中旬)。幸いなことに、本シンポジウムは令和7年度JSPSオープンパートナーシップセミナーに採択されました。一方、6年ぶりとなる「微生物ウィーク2025」を2025年7月28日(月)から8月2日(土)に開催する予定で、鋭意準備を進めています。「微生物ウィーク2025」では、国内の微生物関連の多くの学術団体(学会、研究会など)だけでなく、筑波大学微生物サステイナビリティ研究センター、信州大学応用微生物学ルネサンスセンター、山口大学中高温微生物研究センターなどの国内大学の微生物研究関連組織にも協力していただくことを計画しています。さらに、国立感染症研究所(NIID)との合同ワークショップも4月あるいは5月に開催予定です。

一方、これまでのCRIIMの活動において、当初計画通りに進まなかったところもあります。CRIIMの活動もコロナ禍の影響を強く受けましたが、特に、4つのユニットごとの活動に関しては、本格的な活動の出鼻を挫かれた形となり、その後も停滞してしまいました。今後、ユニットごとの活動については、おもいきった見直しが必要だと考えています。また、微生物科学イノベーション特論やCRIIM Extended Member MLを通して紹介した各種セミナー、シンポジウム等で学生・若手の教育に尽力してきましたが、学生・若手の研究発表の場を作ることや、メンバー間の研究交流に学生・若手を巻き込んでいくことは十分ではありませんでした。

今後についてですが、まず、多くのイベントを計画している2025年をCRIIMの再出発の年としたいと考えています。学内においては、4つのユニットごとの活動を見直し、学生・若手の研究発表・交流の場を作ることを新機軸としたいと思います。一方、学外に向けては、CRIIMと他の組織の交流を、2025年度に開催するイベントを足がかりに、より拡大・活性化していくことを目指したいと思います。産学連携に関しては、1つ嬉しいニュースがあります。2025年4月に、株式会社クボタおよびパナソニックホールディングス株式会社との連携により、新しい社会連携研究部門「土壌微生物機能制御・利用学」が発足します。

微生物学は国際的に日本が強い分野であり、東京大学は微生物学の学術面、応用面、人材育成に大きな役割を果たしてきました。一方、これまで基盤研究や技術開発が幅広い微生物学のなかの個別の分野内で長く行われてきたため、細分化の弊害が少なからずありました。このような問題点を解決するため、既存の組織の枠を超えたボトムアップ型の柔軟な連携組織としてCRIIMが設立されました。設立からほぼ7年が経過し、コロナ禍の余韻も完全に収まった今、新たなスタートを切ったCRIIMへのご支援・ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。

2025年1月