2014年 夏学期 第10回 物性セミナー
講師 香取眞理氏(中央大学 理工学部)
題目 時間発展するランダム行列固有値模型の揺動と相関
日時 2014年 7月 25日(金) 午後4時30分
場所 16号館 827
アブストラクト
各成分が各々独立に分布するランダム行列においても,その固有値の分布は強い斥力相関をもつことが知られている.固有値分布はフェルミオン点過程とよばれる分布にあり,その相関関数を求める最も系統的な方法として直交関数系法がランダム行列理論において開発された.本講演では,各成分が独立なブラウン運動をするエルミート行列を考え,その実固有値の確率過程を議論する.この固有値過程は強く斥力相互作用する1次元上のブラウン粒子系であり,ダイソン模型とよばれる.この模型は,いわゆる自由フェルミオン系の時間発展版であり,「可積分確率過程」である.すなわち,すべての時空相関関数が行列式で与えられ,各行列式は相関核とよばれる唯一の2時空点関数で完全に決定される.講演者は最近,確率過程の揺動部分を表すマルチンゲールの理論を用いると,直交関数系の計算に頼ることなく,相関核を容易に導くことができることを証明した.(1+1)次元の可解模型に限定した結果ではあるが,非平衡系の揺動(マルチンゲール関数)と時空相関(相関核)との直接的な関係を得ることが出来たので,長距離相互作用をもつ非平衡無限粒子系の構成と解析が可能となった.最近再注目されているAiry 過程や Tracy-Widom 分布についても言及したい.
宣伝用ビラ
KMB20140725.pdf(298)
物性セミナーのページ
http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar
[ページのアクセス数: 0283062]
最終更新時間:2014年07月20日 10時02分35秒