2009年 夏学期 第6回 物性セミナー
講師 吉見 一慶 氏(東京医科歯科大学教養)
題目 電荷秩序転移近傍の揺らぎに起因した相分離現象の理論研究
日時 2009年 6月 26日(金) 午後4時30分
場所 16号館 827
アブストラクト
低次元有機伝導体は、超伝導・磁気秩序・電荷秩序 (CO) 転移な ど様々な相転移を示す代表的な強相関物質である。有機伝導体の特徴 は、不純物の存在しにくいクリーンである点と長距離クーロン相互作用 が重要である点の2点にまとめられる。CO 転移を起こす典 型的な物質として、θ- (BEDT-TTF)2RbZn(SCN)4 があるが、長 距離秩序相の存在しない高温相において、すでに電荷の不均一化が生じ ているということが、NMR や赤外ラマン分光による実験から指摘 されている。これらの結果に対応するように、電気抵抗は電荷秩序転移 温度より高温側ですでに絶縁体的に振る舞う。同様の現象は、 β-(meso-DMeBEDT-TTF)2PF6 においても報告されている。 本研究では、長距離クーロン相互作用を最近接まで取り入れた3/4- filled二次元正方格子上の拡張ハバード模型に基づき、CO転移近 傍で発達する電荷揺らぎの効果を解析した。電荷揺らぎの増大を有効相 互作用に反映させるため、Baym-Kadanoffによって提案された保 存近似の一種であるShielded Interaction Approximation (SIA) を用いる。更に、ハミルトニアン中に外場を導入し、微分によって一様 感受率を求めることで、SIAの枠内で全てのバーテックス補正を 含む感受率を求めた。本講演では、隣接サイト間クーロン相互作用を持 つ拡張ハバード模型の範囲内で、CO転移前に電荷圧縮率が負とな り、空間的に一様な金属状態が不安定化することを示す。これは本来ク リーンな系である有機導体が、CO転移近傍の揺らぎによりダー ティーな電子状態へと駆動される可能性を示唆する。
宣伝用ビラ
KMB2009-0626.pdf(644)
物性セミナーのページ
http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar
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最終更新時間:2009年05月27日 11時28分20秒