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物性セミナー/2009-11-27

2009年 冬学期 第5回 物性セミナー

 講師 堀田貴嗣氏(首都大理工)

 題目 重い電子:遍歴と局在が織りなす古くて新しい問題 大振幅原子振動による重い電子と近藤温度の逆同位体効果

 日時 2009年 11月 27日(金) 午後4時30分

 場所 16号館 827

アブストラクト

希土類原子やアクチノイド原子には、原子核に強く束縛された局在性の強い電子があり、それが磁気モーメントを担っている。ある種の化合物では、その局在電子が、結晶全体を比較的自由に運動する伝導電子と混じり合って原子の外に引きずり出され、磁気モーメントの消失した状態になることがある。これが「近藤効果」と呼ばれる現象であるが、このときの電子の運動は、他の伝導電子に比べてゆっくりとしているので、質量が重くなったように見える。そこで、このような系を「重い電子系」と呼んでいる。ゆっくりとした運動はエネルギーが小さいので、 重い電子に何らかの相互作用が働くと簡単に秩序化を起こし、様々な磁気的、電気的、光学的性質を示す。そういう意味で、重い電子系は「物性研究の宝箱」であり、この宝箱を研究者は熱心に探索している。

さて、重い電子はこれまで、主に電子の持つ磁石としての性質(スピン)に注目して理解されてきた。すなわち、局在電子の上向きと下向きの 2 つの状態をとるスピンの自由度が、伝導電子との混じりあいによって打ち消される伝統的な近藤効果で重い電子が生じる。この場合、磁場をかけるとスピンの自由度が失われるため、近藤効果は起きにくくなり、電子の質量も小さくなる。金属の電子比熱は低温で温度に比例するが、その比例係数は電子の質量に比例するので、伝統的な重い電子物質の電子比熱係数は、磁場によって抑制される。ところが、SmOs4Sb12 という物質では、通常金属の数百倍もの大きさの電子比熱係数が磁場によって殆ど変化しないことが発見された。電子が重くなる原因がスピンによる近藤効果だとすると、この「磁場に鈍感な重い電子」は理解できない。

SmOs4Sb12 は充填スクッテルダイトと呼ばれる物質の一つであるが、Sm 原子は 12 個の Sb から成る20 面体のカゴに内包されている。このカゴの中で、Sm 原子が比較的大きな振幅で振動していることが最近の研究で明らかになってきた。このような非調和性の強い原子振動は「ラットリング」と呼ばれ、 現在、精力的に研究が行われている。実際、ラットリングが伝導電子と結合しているとき、電子比熱係数が増強され、しかも磁場に鈍感であることが指摘されている。しかし、磁場に鈍感な重い電子状態の発現にラットリングが関与しているという証拠はなかった。

本研究では、ラットリングと結合する伝導電子のモデルを解析し、振動する原子を同位体に置換して質量を変えると、近藤効果が起こる温度(近藤温度)が変化することを見出した。近藤温度は電子比熱係数と逆比例の関係で結びついているので、電子比熱係数に同位体効果が出現するとも言える。もう少し具体的に言えば、原子ポテンシャルの底が平らになって振動振幅が大きくなるとき、磁場に鈍感な重い電子状態が得られ、かつ、その場合に限り、原子の質量を増やすと電子比熱係数が小さくなる、つまり、近藤温度が増大することがわかった。ラットリングによる重い電子は、磁場に鈍感だが振動には敏感である、というわけである。通常、原子の質量が大きくなると振動数が減るので、関係するエネルギーも小さくなるが、それとは逆に近藤温度が増大するという「逆同位体効果」が理論的に予言され、この逆同位体効果の検出は、ラットリングによる重い電子状態発現の証拠になる。近い将来の実験的検証が期待される。

宣伝用ビラ

KMB2009-1127.pdf(732)

物性セミナーのページ

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最終更新時間:2009年11月18日 09時58分06秒