2009年 冬学期 第1回 物性セミナー
講師 西野晃徳 氏(東京大学生産技術研究所)
題目 開放型量子ドットの電流電圧特性:厳密解を用いた解析
日時 2009年 10月 23日(金) 午後4時30分
場所 16号館 827
アブストラクト
相互作用共鳴準位模型と呼ばれる開放型量子ドットに対して,厳密な多電子散乱状態を構成し,これを用いて,左右の導線に有限の電位差を与えた場合の電流を解析的に計算した[1].この模型は近年,実験的にも大変活発に研究されているメゾスコピック系の一つをモデル化したものである.本研究ではこの系を開放量子系として扱い,ドット付近に電子間相互作用が存在する状況で,多電子散乱状態の厳密解を得た.この散乱状態の注目すべき点は,自由電子平面波として入射された状態が,ドットでの散乱後,部分的に多体束縛状態として散乱されることである.また, この多電子散乱状態は,厳密解の手法として知られるベーテ仮説法[2,3]では構成できない新しい解である.さらに, 電子達が,フェルミ分布で特徴づけられる左右の電子溜において十分熱平衡化された後, ドットに入射されるとして(ランダウアー公式),有限バイアス下での電流を解析的に計算した.得られた電流電圧特性は,相互作用に関する摂動計算[4,5],時間依存密度行列繰込み群の結果[6]と定性的に一致した.
[1] A. Nishino, T. Imamura and N. Hatano, Phys. Rev. Lett. 102 (2009) 146803.
[2] V. M. Filyov and P. B. Wiegmann, Phys. Lett. A 76 (1980) 283.
[3] P. Mehta and N. Andrei, Phys. Rev. Lett. 96 (2006) 216802.
[4] B. Doyon, Phys. Rev. Lett. 99 (2007) 076806.
[5] A. Golub, Phys. Rev. B 76 (2007) 193307.
[6] E. Boulat and H. Saleur and P. Schmitteckert, Phys. Rev. Lett. 101(2008) 140601.
宣伝用ビラ
KMB2009-1023.pdf(610)
物性セミナーのページ
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最終更新時間:2009年10月15日 12時56分01秒