東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系
東京大学 教養学部 統合自然科学科 統合生命科学コース
道 上 研 究 室
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<研究内容>
私たちの研究室では、カエル胚を用いた初期発生に関する研究と、ヒトiPS細胞を用いた細胞分化に関する研究を行っています。両者を平行して行うことにより、生命現象の基本原理を解明できるだけでなく、様々な応用にも貢献できると考えています。以下に具体的な研究内容を紹介します。
(1)脊椎動物胚を用いた発生・分化の分子機構の研究
単純な形の「たまご」が複雑な構造をもつ「からだ」を作り上げる仕組みは、これまで多くの研究者によって研究されてきました。卵は、受精後しばらくたつと、どの部分が何になるかといった、いわば体の「場所分け」(部域化)が行われます。当然ながら、部域化が正確に行われないと私たちの体は正しい形に出来上がりません。私達はツメガエル胚を用い、こういった胚の部域化がどのような分子機構で「間違いなく」「正確に」行われるかについて研究を行っています。
① 予定プラコード領域の形成機構 初期胚の外胚葉は神経胚期までに、神経板、神経堤、予定プラコード、表皮に部域化されます(図1)。私達は末梢神経・感覚器に分化する予定プラコードに着目し、この細い部域がいかにして正しく形成されるか、新規遺伝子の解析やシグナル伝達機構の関与、細胞骨格系の役割などの観点からその分子機構を調べています(図2: Michiue 2022, Tsukano 2022, Watanabe 2018, Watanabe 2015, Chen 2015, Matsukawa 2015)。
 ② 外胚葉の領域規定における物理的な力・細胞形状の関与 外胚葉の部域化には細胞にかかる”力”や細胞の形そのものも関与することが近年明らかになりつつあります。私達は、分子生物学・細胞生物学的な手法に加えて数理的なアプローチも導入し、外胚葉の部域化決定に力・形がどのように関わっているか調べています。これまで、張力プローブを用いた細胞張力の測定や(Hirano 2018, Yamashita 2016)細胞形状の特徴量抽出(Ota 2022, Yamashita 2014)を通し、外胚葉の部域間には物質の有無以外の差があることを見いだしました。また、神経板の細胞極性形成が細胞張力・細胞形状に依存することを明らかにしています(Hirano 2022)。
現在は、胚にかかる張力がどのように領域形成を制御するかを直接明らかにする研究を進めています(図3)(Kaneshima, ogawa revised)。
 ③ その他、細胞外基質の構成要素に着目したリガンドの分泌制御機構の研究や(Yamamoto 2023a, Yamamoto 2023b、Yamamoto 2022)、ツメガエル腫瘍における遺伝子発現解析を通した新規発癌関連遺伝子の探索を行っています(Kitamura 2023)。

(2)ヒトiPS細胞を用いた細胞分化に関する研究
ヒトiPS細胞から様々な組織・器官へ分化させる方法の研究は、再生医療実現のための重要な手段として国内外で活発に研究が行われています。私たちはこれまで、無血清・無フィーダー培養によるヒトiPS細胞の維持・分化に関する研究を行ってきました。また、この技術を利用し、ヒトiPS細胞から低コストで膵島内分泌細胞を誘導する方法について研究を行っています(図4)(Ninomiya 2015, Horikawa 2021, Ning 2023, Horikawa in press.)。また、膵β細胞・神経細胞に着目し、物理的な力が細胞分化にどのような影響を与えるかについて、解析を行っています。