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演題: 二酸化炭素還元の電極触媒過程
講師: 堀 善夫 名誉教授 (千葉大学 工学部)
<講演感想>
二酸化炭素の電気化学的還元といえば堀先生と、最近海外では著名な先生であるにもかかわらず、だいぶ前に定年退官されており、なかなか話を聞く機会のない堀先生にお話をいただいた。非常に精密な実験に基づいた結果は見事というしかない。細かいところまでいろいろとお話ししていただいた。以下詳細。
1978にスタートした研究であり、光化学スモッグやエネルギー貯蔵に触発された研究。
最初に、CO2還元の平衡論をお話ししていただいた。
酸化還元電位から-0.2 -0.5 V vs NHE程度が平衡となる。ところが、このくらいの電位では反応は進行しない。水溶液中のCO2の還元で重要な点は以下の3つである。
H型セル、高純度の電解液、前電解
このようなことはどこの教科書を見ても、(以前は当たり前であったのだろうが、)最近は考えることもなく過ぎてしまっており、電気化学における半導体と比較しうる純度を考えなければいけないことを、改めて知らされる。
また、水溶液中のCO2濃度は飽和濃度であっても低いことにも注意すべきである。すなわち、CO2濃度で1気圧であれば、25degC 1 atmにおいて35 mMと、濃度が低い。結果として、HCO3-の還元、HCOOH 1 mol/Lなのに10 mA/cm2位で頭打ちとなる。但し、水溶液中の濃度はHCO3-の濃度には比例、これは、HCO3-の分解によるものである。
現状の学会レベルの話では電気化学的CO2還元の原料はCO2-aqとHCO3-との説があるが、堀先生はかなり当然のようにCO2-aqとして考えられているようで、これも彼の実験からの類推であると思われる。また、実験的な評価の結果、CO2還元における反応層の厚みは0.008 mmと推定される。
水溶液中のCO2を金属電極を用いて還元する場合、還元に使われる電極の種類によって反応生成物が幾つかに分かれる。
1)HCOO-が生成するもの 但し、過電圧は高い。
2)COが生成するもの。但しPdは水素吸蔵?のためファラデー効率が低い。 過電圧はHCOO-より低い
3)CH4, C2H4等炭化水素が生成するものはCuのみ
4)水素のみが発生するもの。金属表面はCOに覆われ、触媒毒のようになっていると想像される。
CO2の還元の過電圧が高い理由は、アニオンラジカル、CO2-*、の生成に大きな過電圧が必要だといわれている。
メカニズムの解明を行うために、CO2-*が生成した後形成されるとされるCOを用いて実験を行うために、Ar, CO飽和の状態での解析を行った。類推される結果は以下の通り。
Cu上での二酸化炭素還元はCOが出来てから行われている
CH4, C2H4の生成はかなり早い段階で分かれる
Pt表面にCOが吸着すると離れづらい
Cu表面はAr置換を行うとCOは離れる
COの還元が起こるのはAu, Cu, Ni, Pt Cuのみ、Hydro Carbonの生成はCu以外でも Niは少し起こすことができる。
これらの説明は、金属場へのCOの吸着熱の違いによって定性的には説明することが可能である。
COの吸着熱:Auは弱い、Ptは強い、Cuは中間。但し、Pdも中間だけどC-H系の生成は出来ないなど、十分に説明できない部分がある。
C2H4のCOからの還元反応pHによらない、第一電子移動が律速。
CH4のCOからの還元反応はpH依存、は第二電子移動が律速。
面方位依存性 をC2H4/CH4比で比較すると、
711 大、 111 小 理由は不明 電極電位とは相関ありそう。
電極の失活
Cu, Au, Ag 数十分で触媒活性が落ちる理由として、不純物が電極表面に吸着した結果であろうと類推。
前電解とFeイオンを添加して実験を行うと失活をする原因の不純物量が見積ることが可能であると考え、触媒活性の低下傾向とFeイオンの量を比較。結果として、不純物が電極表面で還元されることで付着していることが原因とほぼ判明。その量は、0.03-0.015 micromol/L程度の不純物。
すなわち、重金属が2-5 ppm混入するとCu等電極の活性は徐々に失われるらしい。
これらの、精密な実験は、Cuとうの触媒活性サイトがなんであるかの示唆を与えているものと思われるが、今のところ分からない。
これら、堀先生のお話は、私たちが必ず実現しなければならない、CO2還元に対して、問題となるところを示していただいたものと受け取れるようなお話であった。しかしながら、解決にはまだまだ時間がかかると思われる。
文責:藤井克司
2015年1月23日
第12回GS+I公開技術セミナー