SAMPLE COMPANY

ORGANISM当研究室で扱う微生物

研究材料とする生物は酵母、カビ(糸状菌)などの真核微生物であり、以下の微生物種を主に扱っている。

>糸状菌 Aspergillus nidulans
>糸状菌 Aspergillus oryzae
>出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae
>油糧酵母 Yarrowia lipolytica




糸状菌 Aspergillus nidulans

概要

Aspergillus nidulansには後述するように有性世代が存在するため分類学上の正式な名称はEmericella nidulansであるが、通常はその無性世代に付けられた名であるAspergillus nidulansが用いられることが多い。

Aspergillus属糸状菌にはAspergillus oryzae(麹菌)、Aspergillus nigerなどの産業上有用な株も存在するが、その一方でヒトに対する病原菌Aspergillus fumigatus、強力な発ガン物質アフラトキシンの生産菌A. flavusA. parasiticusなども存在する。A. nidulansは古くから有性世代の存在が見つかっており古典遺伝学的手法を用いた解析が可能であったことから、Aspergillus属糸状菌のモデル生物として用いられてきた。そのため分子生物学的解析手法をはじめとする様々な手法の確立も糸状菌の中ではアカパンカビと並んで最も進んでおり、情報も蓄積されている。A. nidulansは全ゲノム配列も決定されており、様々な遺伝子の機能解析結果もAspGD等で公開されている。



A. nidulansの分生子形成器官


上図はA. nidulansの一生(無性生活環)を示したものである。分生子(無性胞子)はまず無極性に膨張して大きくなり、ある時期がくると発芽して発芽管(初期の菌糸)を伸ばし始める。菌糸は先端を伸ばすこと(先端生長)によりある程度生長すると枝分かれ(分岐)を起こし、この菌糸先端生長と分岐の繰り返しによって大きくなる。菌糸の中には一定間隔で仕切り(隔壁)もできる。更に生長すると上図の右下に示したような分生子形成器官を分化させる。

分生子形成器官の走査型電子顕微鏡写真2枚を下に示した。分生子形成器官は菌糸の途中が分化してできる柄足細胞から上方に分生子柄を伸ばしその先端が膨らむ(頂嚢)。その頂嚢から長円形の細胞(メトレ)が出芽により生じ、更にその先端からもう一段長円形の細胞(フィアライド)が生じて、その先端から球形の分生子が下から上へと押し上げられるように作られてゆく。



A. nidulansの菌体内の構造


DICは、A. nidulansの分生子(無性胞子:写真上部中央円形のもの)から発芽管(若い菌糸)が伸びているところを示している。

FM4-64は、この菌体についてある種の試薬(FM4-64)でその内部にある膜構造を染めたものである。真核生物では細胞内に様々な細胞内小器官(オルガネラ)が存在するため、それらを囲んでいる膜が染まる。

GFPは、菌糸の先端が生長する際に重要な働きをするある種のキチン合成酵素タンパク質に緑色蛍光タンパク質GFPを繋いで、菌糸内でこのキチン合成酵素が存在する場所を光らせたものである。この写真より、このキチン合成酵素が菌糸の先端(写真中央の下方の部分)に集中して存在することがわかる。



出芽酵母Saccharomyces cerevisiae

S. cerevisiaeにおける細胞膜外層へのホスファチジルエタノールアミンの露出


生体膜中では、脂質は均一に分布しているわけではない。細胞膜において通常内層側に多いとされるホスファチジルエタノールアミン(PE)は、細胞分裂の特定の時期に出芽部位及び分裂溝で外層へ露出する。上の写真では、PEに特異的に結合するペプチドを利用してS. cerevisiaeの細胞膜表層のPEを可視化した(図中緑色の部分)。また同時にDNAを染める色素を用いて核とミトコンドリアを青色に染めた。



油糧酵母Yarrowia lipolytica

概要

アルカン資化性酵母の1種であり、n-アルカン(パラフィン)や脂肪などの疎水性炭素源を資化する高い能力をもつ。パン酵母S. cerevisiaeとは比較的遠縁の酵母である。半数体として生育し、接合して二倍体を形成するヘテロタリックな酵母であり、遺伝学的な解析が可能である。さらにゲノム配列も解読、公開されており、脂溶性化合物の代謝、ペルオキシソームの発達、二形成などの研究分野において、モデル生物として利用される。また応用的には、脂溶性化合物を材料とした有機酸、ラクトン生産への応用が期待される酵母である。

Y. lipolyticaの細胞内の構造