UBI seminar (49th) 2019年12月13日(金) 16:50-18:35
 場所:東京大学駒場キャンパス・アドバンストラボ 410大会議室
 講演者: 古田 健也 氏 (情報通信研究機構 主任研究員)               
 講演タイトル:タンパク質ブロックを組み合わせて新しい生物分子モーターを創出する

概要:細胞の中では、多種類のモータータンパク質が働き、物質輸送と細胞運動を司っています。この20年間に、それらの多くの立体構造が明らかとなり、その動作機構を原子レベルで議論できるようになりました。生物分子モーターは代表的な分子機械であり、その入力と出力は非常にはっきりしています。しかし、その動作原理を理解するには至っていません。私たちは、あえて天然にはない新しい機能や性質をもったモータータンパク質を「つくる」ことにより、生物分子モーターに共通する動作原理を明らかにしたいと考えています。また、私たちはDNAナノストラクチャをレールとする新しい分子モーターの設計を行い、最近これを実現しました。このプロジェクトは、従来、比較的静的であったDNAナノテクノロジーを、動的で何か面白いもの、役に立つものへと変える野心的な試みと言えます。この中で私たちは、特異的なDNA配列を認識するような複数のお互いに「正規直交な」分子モーターを開発しました。この正規直交性により、私たちは、分子をソーティングしたり濃縮することに成功しました。今後の展望として、私たちはこれらを用いて、環境から情報を受け取り、分子計算や情報の縮退を行い、その結果を「動き」によって出力するような小さなロボットを作りたいと考え、そのステップを一つ一つ進めています。ボトムアップな新しい合成生物学的アプローチをご紹介できればと思います。