UBI seminar (31th) 2019年2月8日(金)16:00~
 場所:東京大学本郷キャンパス 理学部1号館413号室
 講演者: 大泉匡史氏 (アラヤ株式会社)
 講演タイトル: 意識の統合情報理論と物理学との接点

概要:
電気的・化学的反応の集合体である脳活動から、なぜ主観的な体験(意識)が生まれるのかという問題は、「意識のハードプロブレム」と呼ばれ科学では解けない問題と考えられてきた。しかしながら、ハードプロブレムそのものが解けない問題であるということは、意識が科学的に研究の対象とはならないということを意味しない。なぜ意識が存在するかを問うのではなく、意識が存在することを前提とした上で、“意識が存在するために物理系はどのような条件を満たさなければならないか”、と問いを変えることで、科学の俎上に載せることができる。
統合情報理論(IIT)とは、このような考え方に基づいて構築された理論であり、物理系の中の「情報」と「統合」という観点から、意識の量(意識レベル)と意識の質(クオリア)とを数学的に定量化しようとする試みである。IITは、深い睡眠時に意識が失われるのはなぜか、視覚と聴覚のクオリアの違いは何によって決まるのか、複数の意識(例えば二人の人間の脳)の間の境界はどのように決まるのか、脳の中の意識の座はどこかといった問題に関して、統一的な説明と予測を与える。本セミナーでは、統合情報理論の概要を紹介すると共に、今後の発展と物理学との接点に関して議論したい。