UBI seminar (11th) 2017年7月5日 12:10-13:00 
 場所:東京大学理学部1号館 413号室
 講演者:茅 元司 氏(東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻)
 講演タイトル:
 骨格筋ミオシンの協同的な力発生~時には綱引きチームのように~

概要:
骨格筋は身体運動から眼球や舌の動きまで様々な「動く」機能に深く関わっている。 この筋肉の収縮は、ミオシンが約300分子程度集合したフィラメントを形成し、アクチンと相互作用して力を出すことで達成される。 これは単独あるいは数分子で機能する他の分子モーターとは大きく異なる。 そこで、「分子集団として力を出すことに特化した特性があるのでは?」という疑問のもと、ミオシン約20分子程度がアクチン1本と相互作用できるミニフィラメントを合成し、ミオシンフィラメント上を相互作用するアクチンの動きを光ピンセットでとらえる実験系を構築した。 その結果、アクチンの変位がステップ状に変化する様子が観測された。 特に30pNを超える高負荷におけるステップに関しては,エネルギー効率の観点から複数のミオシン分子がほぼ同調して力を出さないと起こり得ないものと解釈した。 そこで,高負荷になると力発生のタイミングが分子間で同調してくる協同的な現象がどの様な分子機構で成り立つのか理解するために,シミュレーションモデルを構築した。 シミュレーションにおいて,ミオシンがATP加水分解サイクルの中で6つの化学状態間を遷移するモデルを構築し,特に力発生をしている状態間の遷移率が負荷の増加に伴って減少する特性を入れた。 その結果,高負荷においてミオシン分子間の力発生が同調する現象が見えてきた。 さらにこの様な協同的な力発生は,力発生を起こす構造変化(パワーストローク)が多段階で起こる特性や,生理的条件の高ATP濃度で頻繁に起きることが判明した。 こうした実験結果とシミュレーション結果をあわせると,ミオシンの協同的な力発生を実現する3つの鍵となる分子特性が判明し,骨格筋ミオシンには効率的な筋収縮を達成することに特化した分子特性が備わっていることがわかった。
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