東京大学 若杉研究室

東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系
(兼担) 理学系研究科 生物科学専攻

全員集合写真 桜写真3 HeLa細胞 蛍光顕微鏡像 ゼブラフィッシュ 神経様分化したSH-SY5Y細胞 HNgbの立体構造(X線立体構造解析)

当研究室について

ポストゲノム時代の今日、蛋白質の研究が大変注目されています。本研究室では、「生命の不思議さ」を分子レベルで理解し、病気の治療薬開発など「医療に貢献できる新たな機能性蛋白質の開拓」を目指しています。特に、「がん」「脳卒中」「神経変性疾患」等の病気に関わる天然蛋白質が持つ新たな機能を探索し、その機能制御メカニズムを解明するとともに、より優れた機能を持つ新規機能性蛋白質を創製することを軸に研究を行っています。また、生物の進化に伴う天然蛋白質の機能獲得・進化プロセスに着目した理学的な基礎研究も行っています。

詳しい研究内容については “研究内容” のページを御覧下さい。

トピックス

1. 大学院生募集(修士課程 及び 博士課程)

当研究室では、研究意欲のある学部学生、大学院生(修士課程 及び 博士課程)を募集しています。

「意外な発見は隠れているものであり、注意深く物事を見て見逃さないことが重要です。セレンディピティー的発見ができるかどうかは、待ち受けるものの心構え次第です。思考力、洞察力を鍛え、直感とロマンを感じながら一緒にサイエンスを楽しみましょう。」

平成29年度修士課程入試説明会の日程は以下のようになっています。
入試についての詳細は “募集” のページを御覧下さい。

総合文化研究科広域科学専攻修士課程入試説明会
平成28年4月16日(土)及び平成28年5月21日(土)
駒場キャンパス15号館216号室にて、若杉研の研究室訪問ができます。入試説明会の詳細は“こちら” のページを御覧ください。

理学系研究科生物科学専攻修士課程入試説明会
平成28年4月23日(土)
本郷キャンパス理学部2号館201号室にて、若杉研の研究室紹介を行います
総合文化研究科広域科学専攻修士課程入試説明会が行われる平成28年4月16日(土)及び平成28年5月21日(土)には駒場キャンパス15号館216号室にて、若杉研の研究室訪問ができます

その他の日時にも研究室訪問など歓迎します。お気軽にメールにてご連絡ください。

2. 研究成果を論文発表

NEW! 2つの投稿論文がScientific Reports (Nature Publishing Group)誌に受理されました (平成28年4月)。

ヒトのニューログロビンとヘテロ三量体G蛋白質αサブユニットとの相互作用に重要なアミノ酸残基の特定
(Identification of residues crucial for the interaction between human neuroglobin and the α-subunit of heterotrimeric Gi protein)

ニューログロビン(Ngb)は神経細胞に特異的に発現しているグロビン蛋白質であり、酸化ストレスから神経細胞を保護する働きを持っています。以前、我々は、ヒトNgbが酸化ストレス下にヘテロ三量体G蛋白質αサブユニット(Gαi/o )と特異的に結合し、GDP解離阻害因子(GDI)として働くことによりGαi/oの活性を抑え、cAMP量の減少を抑制することにより細胞死を防いでいることを明らかにしました。本研究では、このNgbとGαi1 との相互作用部位の特定を試みました。NgbとGαi1 それぞれ単独でのX線結晶構造解析の結果をもとにNgbとGαi1 の複合体構造を予測し、相互作用に重要と考えられるアミノ酸残基を部位特異的に置換した変異体を作製し、相互作用の解析を行いました。その結果、ヒトNgbではGlu53, Glu60, Glu118の酸性アミノ酸が、ヒトGαi1 ではLys46, Lys70, Arg208, Lys209, Lys210の塩基性アミノ酸が相互作用に重要であることを明らかにしました。この研究成果は、平成28年4月のScientific Reports(Nature Publishing Group) 誌上で発表しました。

分子進化に着目したヒトのミニ・トリプトファニルtRNA合成酵素の血管新生抑制活性に重要なアミノ酸残基の特定
(Identification of a residue crucial for the angiostatic activity of human mini tryptophanyl-tRNA synthetase by focusing on its molecular evolution)

様々な生物種由来のミニ・トリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)の血管新生抑制活性を解析することにより、魚類TrpRS等には、ヒトTrpRSが持つ血管新生抑制能がないことを発見しました。次に、ヒトTrpRS、魚類TrpRS等のアミノ酸配列比較、及び、X線結晶構造解析結果をもとに、血管新生抑制活性に重要なアミノ酸残基の候補を絞り、それらの部位特異的アミノ酸置換体を作製することにより、ヒトTrpRSのLys153が血管新生抑制能に極めて重要であることを明らかにしました。この研究成果は、平成28年4月のScientific Reports(Nature Publishing Group) 誌上で発表しました。

ヒトのニューログロビンが持つGDP解離阻害因子としての活性と細胞保護効果に、60番目のグルタミン酸残基が重要である
(Crucial roles of Glu60 in human neuroglobin as a guanine nucleotide dissociation inhibitor and neuroprotective agent)

本研究では、酸化ストレスによる神経細胞死を抑制する働きがあるニューログロビン(Ngb)の作用機序の解明を目指しました。その結果、酸化ストレスに伴いヒトNgbの立体構造が大きく変化する領域に位置する60番目のグルタミン酸残基が、ヒトNgbが持つGDP解離阻害因子としての活性と細胞死抑制効果に重要であることが明らかになりました。この研究成果は、平成25年12月のPLoS ONE誌上で発表しました。

トリプトファニルtRNA合成酵素のげっ歯類特異的なスプライス変異体の発現解析
(Expression of the rodent-specific alternative splice variant of tryptophanyl-tRNA synthetase in murine tissues and cells)

げっ歯類特異的なトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)のスプライス変異体の発現解析を行った結果、マウス胚性幹(ES)細胞、胚、脾臓、肺、肝臓、子宮においてその発現量が高いこと、その一方で脳組織では発現量が著しく低いことが明らかになりました。また、今回初めて、マウス細胞においてもインターフェロンγ(IFN-γ)によるTrpRSの発現誘導がおこることを発見しました。本研究は、東京工業大学大学院生命理工学研究科の田川陽一先生との共同研究です。この研究成果は、平成年25年12月のScientific Reports誌上で発表しました。

魚類ニューログロビン(Ngb)は視神経損傷の際にアマクリン細胞で発現量が増加すること、また、魚類Ngbには培地中から魚類細胞の細胞質に細胞膜透過する活性があることを発見
(Functional characterization of fish neuroglobin: zebrafish neuroglobin is highly expressed in amacrine cells after optic nerve injury and can translocate into ZF4 cells.)

この研究は、金沢大学大学院医学系研究科脳情報分子学の加藤聖教授との共同研究です。研究成果は、平成25年9月のBiochim. Biophys. Acta誌上で発表しました。

ヒトのNgbが酸化ストレスに応答する神経細胞保護センサー蛋白質として機能することを発見
(Human neuroglobin functions as an oxidative stress-responsive sensor for neuroprotection)

ヒトNgbが酸化ストレス応答性のセンサー蛋白質として働き、酸化ストレスを受けると脂質ラフト構成蛋白質Flotillin-1と結合し脂質ラフトに運ばれ、脂質ラフトに存在するヘテロ三量体G蛋白質のαサブユニット(Gαi/o)のGDP解離阻害因子として働くことにより、神経細胞死を抑制していることを初めて実証しました。この研究成果は、平成24年8月の J. Biol. Chem. 誌上で発表しました。

ゼブラフィッシュのNgbのモジュールM1は、他のタンパク質に細胞膜貫通特性を付加できる“取り付け可能な”構造単位である
(Module M1 of zebrafish neuroglobin acts as a structural and functional protein building block for a cell-membrane-penetrating activity)

ゼブラフィッシュのNgbのモジュールM1を、蛋白質工学の手法によってヒトのミオグロビンに“取り付け”、細胞膜貫通特性をもつ新規のミオグロビンを創製しました。 これより、ゼブラフィッシュのNgbのモジュールM1を、他のタンパク質に細胞膜貫通特性を付加できる“取り付け可能な”構造単位として利用できることが実証されました。 この成果は平成23年2月の PLoS One 誌上で発表しました。

ゼブラフィッシュのNgbの細胞膜貫通特性に重要な残基の特定
(Identification of residues critical for the cell-membrane-penetrating activity of zebrafish neuroglobin)

部位特異的アミノ酸置換法を用いて、ゼブラフィッシュのNgbの細胞膜貫通特性に重要なアミノ酸残基を探索した結果、 アミノ末端付近に存在する4個のリジン残基が、この活性に必須であることを明らかにしました。 この研究成果は、平成22年6月の FEBS Letters 誌上で発表しました。

ゼブラフィッシュのNgbは細胞膜貫通特性をもつグロビンである
(Zebrafish neuroglobin is a cell-membrane-penetrating globin)

ゼブラフィッシュのNgbは、ヒトのNgbとは異なり、単独で細胞膜を通過して細胞質中へと移行することを発見しました。 更に、ゼブラフィッシュのNgbとヒトのNgbとの「キメラ(融合)蛋白質」を作製することにより、 培地に添加するだけで、細胞膜を通過して細胞質中に導入され、しかも細胞保護作用を示す新たな機能性蛋白質を創製することにも成功しました。 これらの成果は平成20年5月の Biochemistry 誌上で発表しました。

ヒトのNgbがもつGDP解離阻害因子としての活性と細胞死抑制能とは関連がある
(Neuroprotective function of human neuroglobin is correlated with its guanine nucleotide dissociation inhibitor activity)

ヒトのNgbが神経細胞死を抑制するためには、シグナル伝達に関わる蛋白質Gαi/oとの相互作用が極めて重要であることを発見しました。 これにより、Ngbが酸化ストレス依存的に細胞内シグナル伝達を制御する、いわゆる細胞の「酸化ストレスセンサー」として機能している可能性が示唆されました。 この成果は平成20年5月の Biochem. Biophys. Res. Commun. 誌上で発表しました。