- 分子ライフイノベーション機構長
- 齊藤 延人
分子ライフイノベーション機構とは、総長総括室の下に設置された研究組織です。活動拠点である分子ライフイノベーション棟は、「快適・健康長寿社会を実現するための地域資源等を活用した産学連携による国際イノベーション拠点」として、平成24年度に文部科学省の支援を受けて取組を開始しました。平成28年4月1日付で東京大学分子ライフイノベーション機構が設立され、活動を展開しています。分子科学、生命科学、そしてエネルギーに関する研究を結集させることでイノベーションを持続的に生み出していこうという組織です。長くなるので名称には入れませんでしたが、「イノベーション」の中にエネルギーについても含まれています。したがって、その活動も工学系研究科、理学系研究科、医学系研究科及び医学部附属病院が連携して運営しています。
本機構においては、国内外の研究機関や民間企業、行政等と連携した産官学連携の研究プロジェクトを推進するミッションがあります。そのためには、機構の精神で一番重要なのは、企業と契約を結んでともに研究を進めるということです。従来の寄付講座などではあくまで研究者側に力点がありましたが、本機構ではより企業の力を重んじています。対応する学内の研究者がいることが大前提ですが、研究者は企業と組まないと機構に入れない形でもあるわけです。こうすることで産学連携をより推進したいと考えています。我々の使命は、国内外の企業・研究機関・行政等との産官学民共同研究を創出し、研究成果の事業化促進による大学発ベンチャーを創出することです。学の側のさまざまな知を産の側に初期段階から結びつけ、素早く世間に還元していくという革命的なイノベーション拠点にしたいと思っています。
設立当初メンバーとして、機構では17のプロジェクトが動いています。スペース配分的には医と理と工が6:1:1の割合です。注目すべき設備として、電子顕微鏡や模擬手術室のほか、分子ライフイノベーション棟の3階には、複数台の次世代シークエンサーで大規模なゲノム解析が行えるゲノム医学センターがあります。4階のセルプロセシングバンキングセンターでは、再生医療の研究が臨床に近い段階まで進んでいます。7階には、「革新分子技術」総括寄付講座や、東大発のバイオベンチャー・ペプチドリーム株式会社も入っています。今後ますます利用を希望する企業・研究者が常に順番待ちをしているような状況にしたいと思っています。さまざまな研究のシーズをもとにして共同研究が促進され、機構で開発されたものが製品・サービスとして世間で活用されることを期待しています。
平成28年11月14日には、「東京大学分子ライフイノベーション機構設立記念式典」を開催しました。式典当日は、五神総長はじめ、大学本部の関係する理事や研究科長はもとより、下村博文元文部科学大臣、馳浩前文部科学大臣、田野瀬太道文部科学大臣政務官、笠浩史議員をはじめ、文部科学省、JST、AMED、からもご出席いただき、大変盛会となりました。一方で、この機構に対する期待の大きさも感じています。10年後の社会ニーズであるエネルギー、資源、医療がいつでもどこでも手に入る快適で健康な長寿社会の実現を目指して、産官学連携を推進してまいります。皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。