高性能蓄電デバイス創製に向けた革新的基盤研究

高性能蓄電デバイス創製に向けた革新的基盤研究

中心研究者ご挨拶

中心研究者 水野 哲孝

東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻 教授
水野 哲孝


現在、日本は先進各国と共に2つの大きなエネルギー問題に直面している。
1つはBRICsを中心とした第三世界の経済成長による資源獲得をめぐる国際競争激化からエネルギー制約が構造的に高まりつつあること、 2つ目は地球温暖化による人間の生存可能空間が著しく脅かされていることである。


特に資源小国である我が国は経済発展の土台であるエネルギー供給に多くの不安定要素を抱えており、 エネルギー技術のイノベーションが国家的最重要課題として認識されている。
なかでも高性能蓄電池開発は温暖化対策効果が大きく、 2050年までに世界の温室効果ガスの排出を半減させるという長期目標も実現できる。


また、産業競争力を向上させるプラグイン・ハイブリッド車等の市場導入を加速するため、 現在世界各国で熾烈な開発競争が繰り広げられている。


他国に先駆けて高性能蓄電池を開発することは市場開拓と産業競争力を 劇的に活性化させることから我が国にとって最優先の課題であるが、 この最先端技術の獲得には電池技術のイノベーションが必要であり 知を結集して基礎科学から本格的に取り組まなければならない。
そのためにも、これまでにない新奇コンセプトを創出することや 未知の蓄電メカニズムを解明できる電池・電気化学の範疇を超えた学際融合的による 確固たる研究基盤形成が必要不可欠となる。


1990年代に市場に普及したリチウム二次電池は 高いエネルギー密度貯蔵が可能な優れた蓄電システムであり、 現在移動体電源として広く使用されている。
しかしながら、今後プラグイン・ハイブリッド車や電気自動車電源、 さらには太陽光・風力発電の負荷平準化電源等への適用を考えるとさらに 数倍以上の大容量化と高出力化が要求され、 加えて低コスト化や非可燃性デバイスの設計等の技術的難度の高い開発項目が山積みである。
純粋に電気エネルギーで駆動する電気自動車電源を目指せば 700Wh/kgにおよぶエネルギー密度が要求されるが、 これらの内燃機関代替レベルの性能は既存の電池デバイスの設計延長上には存在せず、 従来の常識を覆す全く新しい概念で電力貯蔵できる電池技術のイノベーションが必要である。
例えば、現行のリチウムイオン電池の負極材料としてカーボン系材料が用いられているが、 リチウムの容量が少なく、かつリチウムの取り込みによる材料の膨張・収縮の問題もある。
正極材料にしても、容量の半分以下しか有効に使われていないのが現状である。


また、正・負極材料ともにイオンの取り込みに異方性がある、 現行の有機系電解質のリチウムイオン伝導度が低いために出力密度が低い。 このような現状を打破するために、
(i) 現象理解により導き出された指導原理に基づく合理的材料設計(活物質、電極、電解質、セパレータ等)、
(ii) 新原理蓄電池の開発、
(iii) 高度な分析・解析技術の開発、
(iv) 材料計算・シミュレーション技術の開発、
という科学的基盤研究を行い、将来の高性能蓄電デバイス開発に役立てたいと意気込んでいます。


ご支援とご鞭撻、よろしくお願い申しあげます。

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