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On Campus

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まえがき

このテクストの成り立ちと狙い
本書は、平成18(2006)年度以降、東京大学教養学部(以下「駒場」と表記)の1年生全員に対して使用される英語 I のリーディング教材です。英語 I とは、授業1回で、このリーディング教材の1章と、それと密接に関連するマルチメディア教材とを組み合わせて学習していく英語授業で、駒場では1993年から行われているものです。これまでに、その教科書として The Universe of English, The Expanding Universe of English,そのおのおのの続編が刊行されてきました。

制作担当者を新たにして編集された本書は、基本的には前著の伝統を踏襲しています。たとえば文科生と理科生がともに興味をもって学べるよう、文系理系両方にまたがる多様なテーマの文章を、それぞれ週1コマで読み切れる長さで配列しています。また、「英語を読む」というよりは「英語で読む」という読者の意識をひきだせるよう、現在の大学生が知的におもしろいと感じられるような内容のものを選びました。

そのような教科書のイメージをもって教科書制作をはじめたわたしたち制作班4名は、しかし週に1度くらいの割合で開かれた「制作会議」をとおして、独自のアイデアも楽しむようになりました。それは、学問分野の多様性を体現している駒場の多くの先生方にわれわれの教科書制作にさまざまなかたちで関わっていただくことで、よりおもしろい教科書をつくることができるのではないかというものでした。そうすることで、各分野でもっともおもしろいトピックを、一線の研究者からダイレクトに供給してもらえることになるし、また、先生方に書いていただくオリジナル・テクストは、どの学問分野でも英語でのコミュニケーションが必要であることを表現することになるのではないか。わたしたちはそう考えました。

そのアイデアにそって、駒場の教員紹介一覧を頼りにさまざまな先生方に連絡をとらせていただき、実際に研究室をお訪ねしました。そして参考となるお話をお伺いしたり、おもしろそうなテクストや(駒場内外の)協力者を紹介していただいたり、本文となる文章を提供していただいたり、イントロやコラムの執筆をお願いしたり、注を付けていただいたり……、とほんとうにいろいろなかたちで協力していただくことになりました。それは、わたしたちにとってはほんとうに貴重な、思い出すだに楽しい時間でした。ご協力いただいた先生方にはこの場を借りて、心よりのお礼を申し述べさせていただきます。ありがとうございました。

というわけで本書は、さまざまな分野の研究者の力が1冊に結集されたものとなっています。そのようなものとして本書は全体として、もちろん体系的ではありませんが、さまざまな研究分野の総合的イントロダクションになるよう意図されています。それぞれの学問分野に若い人たちを誘うものとなるよう意図されています。

本書が以上の意味で、現代の大学における教養のあり方のひとつを体現しているものとなっていることをわたしたちは望んでいます。そしてそういう意味をこめて本書を On Campus と名づけました(続編も同様の意味をこめてCampus Wide と名づけてあります)。たしかに平凡なタイトルですが、大学のキャンパスのなかに学問の多様な宇宙があることを実感していただければという思いをこめました。

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細かなお断り

  1. スペリングや引用形式に関して英・米いずれのスタイルを選ぶかは、文章内で統一されているかぎりは、原著者のスタイルに従っています。
  2. .注の作成にあたっては、いくつかの辞書,事典を参照しましたが、頻繁に利用した以下のものについては煩瑣となることを避けてその都度の出典の明記はしていません。以下にまとめて記して感謝申しあげます。The Oxford English Dictionary (2nd. ed.)、『平凡社 CD-ROM版世界大百科事典』、『研究社 リーダーズ+プラス』、『小学館 ランダムハウス英和大辞典』。その他、Web上の『ウィキペディア(Wikipedia)』も折にふれて参照しました。
  3. 注は前著 Universe より多めにつけ、英語がそれほど得意でない人でも躓かずに、あるいは内容に集中して読めるよう工夫しました。辞書がなくても流れが追える程度の注が用意されていますので、それをひととおり読んでからテクストを読みはじめるというのも一法かもしれません。コンテクストを意識しながら流れに乗って読むという経験が重要です。
  4. 注をつける場合、イディオムというほどではないけれどもよく用いられる単語の組み合わせには注意を促すことにしています。それが結局は英文の理解にも役立つし、と同時に「発信型」の英語力の養成にも役立つのではないかと考えたからです。また、覚えておくと使えそうな類似例を、e.g.(for example)やcf.(compare)というかたちで載せてあります。
  5. 注については本書をつうじて記述に重複があり、適宜クロスレファレンスを指示してもいます。その趣旨は、かならずしも第1章から順番に本書を読まなくてもいいということです。
  6. この「まえがき」の直後にある「Word Network List」は、本書に複数回あらわれるテーマやコンセプトやキーワードを相互にたどるための見取り図です。読む順序の参考にしていただければ幸いです。

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謝 辞

まずは有形無形のさまざまなご協力をいただいた英語部会の同僚諸氏に感謝申し上げます。

各章のイントロダクションの執筆者および注作成の協力者(章の順で、敬称略)は、以下のとおりです。

  1. 斎藤 兆史(英学)
  2. 石井 直方(運動生理学)
  3. 矢口 祐人(アメリカ研究)
  4. 斎藤 毅(数論幾何)
  5. 藤垣 裕子(科学技術社会論)
  6. 村田 純一(哲学)
  7. 石橋 純(文化人類学)
  8. 丹治 愛(英文学・英文化研究)
  9. 臼井 隆一郎(ドイツ文学・思想)
  10. 中尾 まさみ(英語圏現代詩)
  11. 野矢 茂樹(哲学)
  12. ホーンズ・シーラ(空間論・テクスト分析)
  13. 坪井 栄治郎(言語学)
  14. 永田 敬(分子物理化学)
  15. 朽津 耕三(物理化学/東京大学名誉教授・長岡技術科学大学名誉教授)

このうち、斎藤、坪井、中尾、ホーンズ、矢口、丹治以外は、英語部会外からご協力をいただいた方であり、心から御礼を申しあげます。また、第14章に関して、本文についても注についても惜しみない協力を提供してくださったニュートリノ物理学の権威、梶田隆章教授(東京大学宇宙線研究所・附属宇宙ニュートリノ観測情報融合センター)にも、この場を借りて特別の感謝を申し述べたいと思います。

さらに、編集の過程でさまざまなかたちで協力してくれた以下の方たちにも感謝申しあげます。

古賀 裕章(東京大学大学院博士課程)
佐藤 元状(東京大学大学院博士課程)
設楽 靖子(東京大学大学院博士課程)
古川 敏明(東京大学大学院博士課程)
森 仁志(東京大学大学院博士課程)
砂田 恵理加(一橋大学大学院博士課程 )
有井 秀子(東京大学事務嘱託)

注作成の補助で信じがたいほど多大な時間を割いてくれた設楽氏には、感謝よりもむしろお詫びすべきなのかもしれません。さらにさらに、遅れに遅れた編集作業を少しでも早めるために、制作会議にいろいろな差し入れまでしてくれた東京大学出版会編集部の後藤健介氏にも心からの感謝を申し述べなければなりません。

本づくりの常識として、それぞれの責任を明確にするために、わたしたちの役割分担も記しておくべきかもしれません。しかしわたしたち4名の制作班は、ほんとうに長いあいだ一緒の時間を過ごすうちに、あらゆる仕事も責任も感情も結局は共有するようになったと感じています。したがって本書という結果にたいしては、「浮かぶも一緒、沈むも一緒」という責任のとり方をしたいと思います。そのようなかたちの仕事になったということについては、また、学ぶことの多い有意義な仕事だったということについても、ただただ感謝と感慨あるのみ。(AT)

西村 義樹/ホーンズ・シーラ/矢口 祐人/丹治 愛

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目 次

  1. YOU
    Introduction by Saito Yoshifumi
    “Only You,” by Norma Field
  2. FAT
    Introduction by Naokata Ishii
    “Walking Off Your Fat,” by Naokata Ishii
  3. TRADITION
    Introduction Yujin Yaguchi
    “Why is Mauna Kea so Sacred to the Native Hawaiian People?,” by The Royal Order
    of Kamehameha I & Mauna Kea Anaina Hou
    “There's room for everybody,” by Michael West
  4. MATHEMATICS
    Introduction by Takeshi Saito
    “Fermat's Enigma,” by Simon Singh
  5. OBJECTIVITY
    Introduction by Yuko Fujigaki
    “Objectivity and the Assessment Process,” by Yuko Fujigaki
  6. SUBJECTIVITY
    Introduction by Junichi Murata
    “Dying a Death,” by Allan Kellehear
  7. VOICE
    Introduction by Jun Ishibashi
    “In Search of a Voice,” by Casey Man Kong Lum
  8. GENDER
    Introduction by Ai Tanji
    “Biobehavioral Responses to Stress in Females,” by Shelly E. Taylor, et al.
  9. COFFEE
    Introduction by Ryuichiro Usui
    “Coffee and Globalization,” by Ryuichiro Usui
  10. POETRY
    Introduction by Masami Nakao
    “Whetu Moana, Ocean of Stars,” by Albert Wendt, Reina Whaitiri and Robert Sullivan
  11. VIEW
    Introduction by Shigeki Noya
    “The Fall Guy,” by Samantha Ellis
  12. SPACE
    Introduction by Sheila Hones
    “For Space,” by Doreen Massey
  13. SONG
    Introduction by Eijiro Tsuboi
    “Finchsong,” by Kazuo Okanoya
  14. PHYSICS
    Introduction by Takashi Nagata and Kozo Kuchitsu
    “The Thrill of Experiments,” remarks by Masatoshi Koshiba

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