英和辞典 まずは、語彙数・解説量ともに最高クラスの英和辞典である1〜3のどれかを手許に置こう。歴史的に様々な言語の影響を受けてきた英語は多彩な語彙を誇り、今日もグローバル化の渦中で変わり続けている。1〜3は、高校までの「やさしい」英語の壁をブチ抜くハンマーであり、天然自然の英語に挑むのに欠かせない装備でもある。ただし嵩も値段もケタ外れなので、電子辞書で購入するのが現実的だろう。英語小説を読むとき重宝するのが4で、使いやすいサイズながら 27 万語が簡潔に解説されている。その別冊で、新語、固有名詞、科学用語を補強する5(19万語収録!)と併用しよう。6も机上サイズだが一冊で36万語収録。ただし2012年2月現在は品切れの模様。比較的新参の7は語彙数こそ多くない(10万2千語)が、実用的な英文と訳文にこだわり、レイアウトや説明にも工夫を凝らしている。翻訳や通訳の現場のデータに基づく8は、アルクのホームページに行けばタダでオンライン版を引けて便利。ちなみにCD-ROM版も発売されている(2011年第6版・2940 円)。なお、本稿では同じ辞書のCD-ROM版の紹介は基本的に割愛する。
英英辞典 会話や作文で自然な英文を使うには、英英辞典を参照し、英単語・熟語の実際的な用法に触れるのが近道。初心者用としては、定義が明快で説明が詳しい9か10。定義が独自で例文が豊富な11は英作文で力を発揮する。これらはどれも見やすいフルカラー印刷だ。12は24万語を収録し、上級者向け。13は断トツで最大の英語辞典。基本的に古い語義から載っているので、単語の歴史が概観できる。たとえば“nice”を引いてみると、もともとの意味はちっともナイスじゃないことが判ったりする。答えを知りたければ覗いてみよう。なお、書誌情報にある “OUP”は“Oxford University Press”の略である。
和英辞典 和英辞典を引くにはコツがいる。書きたい内容とピッタリ合う英語表現を見つけるには、例文に注意し、なるべく英和・英英辞典も参照しよう。圧巻の48万項目を掲載する14は、現在もっとも頼りになる和英辞典だが、電子辞書に入っていないと持ち運びは難しい。中辞典クラスでは15が項目数(9万3千)・引きやすさともに優れている。
類語・連語辞典など 英文を書いていて、「この名詞と前置詞の組み合わせ、意味は通じそうだけど本当にあるのかな?」と思うことはないだろうか。そんなとき、ネットで「Google先生」にお訊ねするのもいいけれど、16〜18の辞書で確認できればさらに安心だ。どれも英単語の組み合わせの具体例を示してくれる。堂々38万用例掲載の16には例文の和訳もつく。17は英語のみだがよりコンパクト。18はThe BBI Dictionary of English Word Combinations (John Benjamins)の日本語版。やや古いが(英語では新版が出ている)、独自に例文を追加しているし、巻末の日本語索引も便利だ。英作文初心者にありがちな、同じ表現の繰り返しを避け、大人の英文を書くために必要なのが類語辞典(thesaurus)。標準的なのは30万語収録の19。20はこの類似品だが現役作家のエッセイや類似語のニュアンスの差を示す表がつく。また、たとえば“sexy”を引くと19では“She’s so sexy”という例文が載っているのに、20では“He’s so sexy”とアメリカ仕様(?)になっている。これらはいずれもアルファベット順に単語が並んでいるのに対し、21の特徴は“birth”, “the body”など概念別に単語が区分されていること。22は Oxford Learner’s Thesaurus の日本語版。類語数1万は決して多くないが、実用的な工夫があり、類語辞典の入門に適している。23も同じく実用性を重視しつつ、頻出する単語・フレーズの用法を詳述する。固有名詞などの発音を調べたいときには24(CD-ROMで音も確認できる)、文法・語法で悩んだときには25(辞書ではないが、文法項目をアルファベット順に解説)を見てみよう。
電子辞書について 電子辞書の機能・容量の進歩たるや怖ろしいもので、たとえば2012年の生協モデルは、上記の1、4、5、9、10、14、15、16、17、23に加え、12と19それぞれの拡張版である Oxford Dictionary of English (名前は似ているが13とは全く別物)と Oxford Thesaurus of English、さらに23の類似辞書 Oxford Learner's Wordfinder Dictionary (オックスフォード英英活用辞典)も収めている。また、スマホでダウンロードできる辞書もどんどん増えている。簡便になった分、辞書を引く人間が怠惰になっては無意味なので、せっかくだから同じ単語・フレーズを様々な辞書で調べ、英語という言葉について深く考えてみよう。さらに、いろいろ引いて気に入った辞書があれば、紙の版も買ってみてはどうだろう。本当に好きな曲はあえてレコードで聴くように、愛用の辞書をじっくり読みふけるには、やっぱり紙が一番だ。 ※この記事は教養学部報第546号に掲載されたものを加筆修正の上、教養学部報編集室の許可を得て転載したものです |
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