ファイトケラチンによる重金属耐性の解析
・ファイトケラチンによる重金属耐性の解析
ファイトケラチン(PC)
PCはカドミウムや水銀などの重金属に対する防御のために植物や一部の微生物が合成するペプチドです。重金属とキレート化合物を形成することにより無毒化することができます。このペプチドはグルタミン酸のγ位でのペプチド結合を有するため、DNAから転写・翻訳で直接合成されるのではなく、ファイトケラチン合成酵素によって合成されます。一般にカドミウムなどの有害金属によって誘導合成され、細胞内濃度が上昇することが知られています。
ファイトケラチン PCn の構造
ファイトケラチン合成酵素(PCS)
PCSはグルタチオンからPCを合成する酵素です。植物や一部の真核微生物などに存在することが知られています。多くの場合、種間で配列の保存性が高く活性中心と考えられているNドメインと相同性の低いCドメインから構成されています。この酵素は有害金属存在下で活性が上昇することが知られています。
本研究室では、遺伝子工学や各種分光学の技術などを用い、PCSが有害金属とどのように相互作用をして活性化するのかを解析するなどして、より性質の優れたPCSを作りだし、有害金属に強い植物の育種などに結びつけたいと考えています。
PCSのアミノ酸配列模式図
・タチスベリヒユ中のカドミウムの分布およびその化学形態
高等植物におけるカドミウム(Cd)の吸収、輸送、蓄積機構を明らかにするため、タチスベリヒユ(Portulaca oleracea L.)を用いてCdの分布およびその化学形態を分析しています。ICP発光分析による部位別のCd分析では、Cdは根に高濃度で存在していることが明らかになり、根におけるCd分布をμ-XRF(蛍光X線分析)を用いて、組織・細胞レベルで調べました。図には凍結状態を維持した状態で測定した植物の根の切片(40 mm厚)のXRFイメージを示しています。Feが表皮に蓄積しているのに対し、Cdは皮層および中心柱での蓄積が観察されます。
さらに、化学形態分析では凍結乾燥サンプルのXANES測定を行った結果、いずれの部位においてもCdは主に酸素原子に配位していると考えられます。(左が標準試料、右が植物試料)
現在、Cdを配位している化合物をHPLC-ポストカラム蛍光分析法を用いて分離分析中です。