Research @ UTokyo

このHPでは研究室で行われている研究のいくつかをご紹介します。

1. 気相クラスターの手法を用いて白金やロジウムを代替する多元素触媒を開発する

白金やロジウムは、その触媒活性の高さから、自動車の排気ガス浄化触媒などに必要不可欠な物質である。しかし希少金属であり、高いコスト・有限な埋蔵量が課題である。そのため白金やロジウムを使わずに、安価で入手しやすい元素からなる触媒の研究が盛んに行われている。我々は、そのアプローチ法の一つとして、多元素物質を用いて触媒を設計しようとしている。それでは、「どの元素を」「どの割合で」加えればよいかという複雑な問題にはまり込まないように、気相クラスターの手法を用いて、超高速で反応性を解析する独自の方法で進めている。

特に、最近は株式会社トヨタ自動車との共同研究で、白金やロジウムなどの稀少元素を用いないでNOやCOを無毒化する、新しい触媒の開発を進めている。


ロジウム・タンタルクラスターとNOの反応性

Rh8(NO)3+クラスターのN-N結合形成

2. レーザーを使って新しいナノ物質を合成する

ナノ物質は、液体中のコロイド状物質として化学合成によって作成されることが多い。一方、我々は、パルスレーザーを用いて水溶液中に安定な貴金属ナノ粒子を生成する新たな方法の開発に成功した。気相中に原子やクラスターを生成するレーザー蒸発法を液相に応用し、水中で金属板をレーザー蒸発すると、金および白金については、界面活性剤で安定化されていないにも関わらず、安定なナノ粒子が生成することを見出した。これらの手法は世界的にも注目を浴びており、2000年に出版された我々の論文の国際的ジャーナルによる引用回数は300に達し、2010年にはスイスで国際学会が開催され、100件を超える論文が投稿されたほどである。

3. 自由電子レーザー光を用いて、クラスターの構造解析を行う

オランダ・ネイメーヘンのラドバウド大学に、FELIXという赤外自由電子レーザーがある。このFELIXは、100 cm−1以上の赤外領域の高強度の光を連続して出力できる施設であり、世界からこの光を求めて研究者が集まってくる。

あらかじめアルゴン原子をマーカーとして付けたクラスターに光を照射する。クラスターの振動と光の周波数が一致すると、クラスターは光を吸収する。光を吸収すると、そのエネルギーは熱に変換されるので、マーカーのアルゴン原子がクラスターから脱離する。したがって、この脱離の有無をモニターすれば、そもそもクラスターが光を吸収したかがわかり、クラスターの振動スペクトルを観測することができる。振動スペクトルは、いわゆる指紋と同じで、クラスターがどのような構造をしているのかを決めることができる。

    

FELIXの全景(HPより)

内部の様子

実験室

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