東京大学大学院総合文化研究科 若杉研究室

(兼担) 総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系
(兼担) 理学系研究科 生物科学専攻

全員集合写真 桜写真3 HNgbの立体構造(X線立体構造解析) HeLa細胞 蛍光顕微鏡像 ゼブラフィッシュ 神経様分化したSH-SY5Y細胞

当研究室について

若杉研究室では、新奇な機能性蛋白質の探索と創製を行っています

ポストゲノム時代の今日、蛋白質の研究が大変注目されています。本研究室では、「生命の不思議さ」を分子レベルで理解し、病気の治療薬開発など「医療に貢献できる新たな機能性蛋白質の開拓」を目指しています。特に、「がん」「脳卒中」「神経変性疾患」「感染症」等の病気や「老化」「寿命」「アンチエイジング」などに関わる天然蛋白質が持つ新たな機能を探索し、その機能制御メカニズムを解明するとともに、より優れた機能を持つ新規機能性蛋白質を創製することを軸に研究を行っています。また、生物の進化に伴う天然蛋白質の機能獲得・進化プロセスに着目した理学的な基礎研究も行っています。

詳しい研究内容については “研究内容” のページを御覧下さい。

トピックス

1. 大学院生募集(修士課程 及び 博士後期課程)

若杉研究室では、研究意欲のある大学院生(修士課程 及び 博士後期課程)を募集しています。

「意外な発見は隠れているものであり、注意深く物事を見て見逃さないことが重要です。セレンディピティー的発見ができるかどうかは、待ち受けるものの心構え次第です。思考力、洞察力を鍛え、直感とロマンを感じながら一緒にサイエンスを楽しみましょう。」

入試についての詳細は “募集” のページを御覧下さい。


大学院総合文化研究科広域科学専攻修士課程学生募集(生命環境科学系)
大学院入試説明会(オンライン):令和6(2024)年 4月20日(土)13:00~, 5月25日(土)13:00~
5/25(土)は14時20分からの基礎生命科学グループの入試説明会の後に、17時まで若杉がZoomにて研究室紹介と質問対応を行います。
出願受付期間:令和6(2024)年 6月
筆記試験:令和6(2024)年7月20日(土)(駒場キャンパス)、口述試験:令和6(2024)年7月30日(火)~8月6日(火)(オンライン)

大学院理学系研究科生物科学専攻修士課程学生募集
大学院入試説明会(オンライン):令和6(2024)年 4月20日(土)10:00~, 6月8日(土)10:00~
 6/8(土)は13時から15時まで若杉がZoomにて研究室紹介と質問対応を行います。
出願受付期間:令和6(2024)年6月19日(水)10時 ~ 2024年6月25日(火)15時
筆記試験:令和6(2024)年8月20日(火)、口述試験:8月下旬頃~9月上旬頃

興味を持たれた方は、お気軽にメールにてご連絡下さい。入試説明会以外でも個別面談、研究室見学などの日程を調整します。
なお、受験前には必ず連絡を取るようにして下さい。

募集

[連絡先] 若杉桂輔 e-mail: wakasugi/-/bio.c.u-tokyo.ac.jp (※スパム対策の為、'@'を'/-/'と表記しています。)

2. ニュース

・当研究室の横沢特任助教が令和6年度の日本生化学大会において「若手優秀発表賞」を受賞しました。

令和6年11月に開催された第97回日本生化学大会において、当研究室に所属する教養教育高度化機構特任助教の横沢匠先生が若手優秀発表賞を受賞しました。若手優秀発表賞は、在学中または学位(学士、修士、博士のいずれか)取得後3年以内の若手発表者による口頭発表の中から、特に優れた発表に授与されます。発表題目は「免疫寛容を誘導する高親和性トリプトファン取り込みにはTrpRSによるトリプトファニルAMP合成が重要である」です。

(第97回生化学大会HP:https://aeplan.jp/jbs2024/、受賞者一覧:https://aeplan.jp/jbs2024/pdf/top_list2024.pdf)

・若杉教授が令和6(2024)年度長瀬科学技術振興財団「長瀬研究振興賞」を受賞しました。

本賞は、わが国の有機化学及び生化学等の分野における研究開発に対し助成等を行うことにより、科学技術の振興を図り、もって社会経済の発展に寄与することを目的として、特に優れた研究に対して長瀬技術振興財団から贈られるものです。

(https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/awardsandbook/20240507130000.html)

・令和6年3月、東京大学の必修科目「初年次ゼミナール理科」の教科書『科学の技法 第2版』を教養教育高度化機構 Educational Transformation(EX)部門で編集し出版しました。是非ご覧ください。

大学における主体的な学びや協同学習の重要性、研究の意義などについて書いています。また、セレンディピティ的発見の紹介もしています。

 (https://www.utp.or.jp/book/b10045059.html)

・令和3年9月、noteにて、私の海外体験談が公開されました。下記からご覧ください。

 (https://note.com/utokyo_komaba_go/n/nfcf3911685c0)

・令和2年6月、米国の科学雑誌「The Scientist」で、アミノアシルtRNA合成酵素の新奇な機能について紹介されました。

 (https://www.the-scientist.com/features/protein-synthesis-enzymes-have-evolved-additional-jobs-67549)

・修士課程2年の横沢匠君が平成30年 6月 9日に開かれた第18回東京大学生命科学シンポジウムでポスター賞を受賞しました。

受賞演題は「Tryptophanyl-tRNA synthetase regulates tryptophan uptake into human cells(トリプトファニルtRNA合成酵素はヒトの細胞内へのトリプトファン取り込みを制御する)(横沢匠, 宮ノ腰美希, 若杉桂輔)」でした。

・2012年に取得した特許が、2017年のNature Biotechnology誌にて、2012~2016年のバイオテクノロジーの分野で被引用回数の多い特許の世界第3位になったことが取り上げられました(Nature Biotechnology 35, 1126 (2017))。

対象となった特許はUnited States Patent Number 8,101,566 (Human aminoacyl-tRNA synthetase polypeptides useful for the regulation of angiogenesis. Inventers: Paul Schimmel and Keisuke Wakasugi)です。

3. 研究成果を論文発表

ヒト細胞での高親和性トリプトファン輸送機構に関する総説
(The high-affinity tryptophan uptake transport system in human cells)

ヒトの細胞外のトリプトファン(Trp)は、ヒト細胞がTrpに対する高い親和性と高い選択性を有する細胞外から細胞内へ高感度なTrp輸送を行うことで枯渇します。細胞外におけるTrpの局所的な枯渇は、T細胞の活性化を抑制して免疫寛容を引き起こします。例えば、妊娠母体の胎盤におけるTrpの枯渇は母体の免疫拒絶から胎児を保護します。また、マクロファージ細胞はTrpの枯渇を介してT細胞を抑制します。さらに、一部のがん細胞がTrpの枯渇を引き起こすことで免疫機構を回避することも報告されています。この総説では、この免疫寛容を誘導する高親和性Trp輸送に焦点をあて、インターフェロン-γ (IFN-γ) により高発現するインドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ 1 (IDO1) とトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)が高親和性Trp輸送機構にどのように関与しているのか最新の研究報告をまとめました。この総説は、令和6年5月に英国生化学会のレビュー誌であるBiochemical Society Transactions誌上で発表しました。

トリプトファニルtRNA合成酵素を過剰発現しているトリプトファン飢餓状態のヒト細胞は、酵素によるトリプトファニルAMPの産生を介して高親和性トリプトファン輸送を増加させる
(Tryptophan-starved human cells overexpressing tryptophanyl-tRNA synthetase enhance high-affinity tryptophan uptake via enzymatic production of tryptophanyl-AMP)

これまでに、我々は、トリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)が高親和性トリプトファン(Trp)輸送機構に関与していること、また、細胞のTrp飢餓状態がこの輸送に重要であることを明らかにしました。本研究では、まず、Trp飢餓細胞を用いた場合に、TrpRS蛋白質の細胞外への添加により高親和性Trp取り込みが誘導されることを確かめました。また、TrpRS過剰発現細胞への高親和性Trp取り込みも、Trp飢餓時に著しく増加することを明らかにしました。さらに、トリプトファニルAMP を合成できないTrpRS 変異体を過剰発現させてもTrp飢餓下での高親和性 Trp 輸送が誘導されないこと、また、トリプトファニルAMP 合成を阻害するとTrp飢餓細胞へのTrp 輸送が抑制されることも明らかにしました。以上、本研究より、TrpRS による トリプトファニルAMP 合成と細胞のTrp飢餓状態が高親和性 Trp 輸送に極めて重要であることが明らかになりました。この研究成果は、令和5年10月のInt. J. Mol. Sci.誌上で発表しました。

トリプトファンの欠乏状態がトリプトファニルtRNA合成酵素を介したヒト細胞内への高親和性トリプトファン輸送に関与する
(Tryptophan depletion modulates tryptophanyl-tRNA synthetase-mediated high-affinity tryptophan uptake into human cells)

細胞外から細胞内への高親和性トリプトファン(Trp)輸送が活発な細胞は、細胞周辺のTrpを枯渇させ、T細胞の活性を抑えることにより、免疫寛容を引き起こします。我々の以前の研究では、この高親和性Trp取り込みに、細胞外に分泌されたトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)が直接関わっていることを明らかにしました。本研究では、Trp代謝酵素であるIDO1やTDO2を細胞に過剰発現させると、TrpRSを介する細胞内への高親和性Trp輸送が著しく増加することを発見しました。さらに、人工的にTrpを枯渇させた環境で細胞を培養した場合にも、TrpRSによる高親和性Trp取り込み量が大きく上昇しました。これらの結果より、Trp代謝酵素により引き起こされるTrp欠乏状態が、TrpRSを介した高親和性Trp輸送に関与していると考えられます。この研究成果は、令和2年11月のGenes(Basel)誌上で発表しました。

トリプトファニルtRNA合成酵素はヒトの細胞内への高親和性のトリプトファン取り込みに関わる
(Tryptophanyl-tRNA synthetase mediates high-affinity tryptophan uptake into human cells)

近年、インターフェロン-γ(IFN-γ)処理やインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)の発現増加によって、細胞内への高親和性のトリプトファン(Trp)の取り込みが著しく増加することが報告されています。高親和性のTrpの取り込みが活発な細胞は、周囲環境のTrpを欠乏させT細胞の生存を困難にすることで、免疫抑制を引き起こすと考えられています。本研究では、IFN-γ添加により発現量が増加しTrpに対し高い親和性・選択性を有するトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)に着目し、TrpRSが新規なTrp輸送機構に関与しているのか検証を行いました。培養細胞へのIFN-γ処理により、細胞内へのTrpの取り込み量が著しく増加し、Trpの取り込み量はTrpRSの発現量に依存することが判明しました。また、Trpの取り込みにはTrpRSのtRNA結合部位は重要ではなくTrpとATPの結合部位のみが重要であること、さらに、TrpRS蛋白質をTrpと同時に細胞外に添加するとTrpの取り込み量が増加することも明らかになりました。TrpRSが細胞外へと分泌され、TrpRSが新たなTrp取り込み機構に直接関わり制御していると考えられます。この研究成果は、平成30年6月のJ. Biol. Chem.誌上で発表しました。

キメラZHHHニューログロビンは細胞膜を透過する神経突起伸長誘導因子として働く
(Chimeric ZHHH neuroglobin acts as a cell membrane-penetrating inducer of neurite outgrowth)

ヒトのニューログロビン(Ngb)には酸化ストレスから神経細胞を保護する働きがあります。また、魚類Ngbには細胞保護能がありませんが、細胞外から細胞質内に移行する細胞膜透過能があること、他方、ヒトNgbには細胞膜透過能がないことを以前明らかにしました。さらに、魚類Ngbの細胞膜透過能に重要なモジュールM1とヒトNgbの細胞保護能に重要なモジュールM2〜M4を融合し、培地に加えるだけで細胞膜を透過し酸化ストレスから細胞を保護するキメラZHHH Ngbの作製に成功しました。本研究では、ヒトNgbを過剰発現させると神経突起伸長が促進されるという最近の報告に着目し解析をした結果、キメラZHHH Ngbに、培地に添加しただけで神経細胞に神経突起の伸長を誘導させる働きがあることを発見しました。また、ヒトNgbや魚類Ngbでは神経突起伸長の誘導は観察されず、さらに、細胞膜透過に重要なLysを変異させたK7A/K9Q キメラNgb変異体においても神経突起伸長誘導が観察されないことから、キメラNgbは細胞膜を透過し細胞質内に移行後に神経突起を伸長させることが明らかになりました。この研究成果は、平成29年9月のFEBS Open Bio誌上で発表しました。

ヒトのニューログロビンとヘテロ三量体G蛋白質αサブユニットとの相互作用に重要なアミノ酸残基の特定
(Identification of residues crucial for the interaction between human neuroglobin and the α-subunit of heterotrimeric Gi protein)

ニューログロビン(Ngb)は神経細胞に特異的に発現しているグロビン蛋白質であり、酸化ストレスから神経細胞を保護する働きを持っています。以前、我々は、ヒトNgbが酸化ストレス下にヘテロ三量体G蛋白質αサブユニット(Gαi/o )と特異的に結合し、GDP解離阻害因子(GDI)として働くことによりGαi/oの活性を抑え、cAMP量の減少を抑制することにより細胞死を防いでいることを明らかにしました。本研究では、このNgbとGαi1 との相互作用部位の特定を試みました。NgbとGαi1 それぞれ単独でのX線結晶構造解析の結果をもとにNgbとGαi1 の複合体構造を予測し、相互作用に重要と考えられるアミノ酸残基を部位特異的に置換した変異体を作製し、相互作用の解析を行いました。その結果、ヒトNgbではGlu53, Glu60, Glu118の酸性アミノ酸が、ヒトGαi1 ではLys46, Lys70, Arg208, Lys209, Lys210の塩基性アミノ酸が相互作用に重要であることを明らかにしました。この研究成果は、平成28年4月のScientific Reports(Nature Publishing Group) 誌上で発表しました。

分子進化に着目したヒトのミニ・トリプトファニルtRNA合成酵素の血管新生抑制活性に重要なアミノ酸残基の特定
(Identification of a residue crucial for the angiostatic activity of human mini tryptophanyl-tRNA synthetase by focusing on its molecular evolution)

様々な生物種由来のミニ・トリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)の血管新生抑制活性を解析することにより、魚類TrpRS等には、ヒトTrpRSが持つ血管新生抑制能がないことを発見しました。次に、ヒトTrpRS、魚類TrpRS等のアミノ酸配列比較、及び、X線結晶構造解析結果をもとに、血管新生抑制活性に重要なアミノ酸残基の候補を絞り、それらの部位特異的アミノ酸置換体を作製することにより、ヒトTrpRSのLys153が血管新生抑制能に極めて重要であることを明らかにしました。この研究成果は、平成28年4月のScientific Reports(Nature Publishing Group) 誌上で発表しました。

ヒトのニューログロビンが持つGDP解離阻害因子としての活性と細胞保護効果に、60番目のグルタミン酸残基が重要である
(Crucial roles of Glu60 in human neuroglobin as a guanine nucleotide dissociation inhibitor and neuroprotective agent)

本研究では、酸化ストレスによる神経細胞死を抑制する働きがあるニューログロビン(Ngb)の作用機序の解明を目指しました。その結果、酸化ストレスに伴いヒトNgbの立体構造が大きく変化する領域に位置する60番目のグルタミン酸残基が、ヒトNgbが持つGDP解離阻害因子としての活性と細胞死抑制効果に重要であることが明らかになりました。この研究成果は、平成25年12月のPLoS ONE誌上で発表しました。

トリプトファニルtRNA合成酵素のげっ歯類特異的なスプライス変異体の発現解析
(Expression of the rodent-specific alternative splice variant of tryptophanyl-tRNA synthetase in murine tissues and cells)

げっ歯類特異的なトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)のスプライス変異体の発現解析を行った結果、マウス胚性幹(ES)細胞、胚、脾臓、肺、肝臓、子宮においてその発現量が高いこと、その一方で脳組織では発現量が著しく低いことが明らかになりました。また、今回初めて、マウス細胞においてもインターフェロンγ(IFN-γ)によるTrpRSの発現誘導がおこることを発見しました。本研究は、東京工業大学大学院生命理工学研究科の田川陽一先生との共同研究です。この研究成果は、平成25年12月のScientific Reports誌上で発表しました。

魚類ニューログロビン(Ngb)は視神経損傷の際にアマクリン細胞で発現量が増加すること、また、魚類Ngbには培地中から魚類細胞の細胞質に細胞膜透過する活性があることを発見
(Functional characterization of fish neuroglobin: zebrafish neuroglobin is highly expressed in amacrine cells after optic nerve injury and can translocate into ZF4 cells.)

この研究は、金沢大学大学院医学系研究科脳情報分子学の加藤聖教授との共同研究です。研究成果は、平成25年9月のBiochim. Biophys. Acta誌上で発表しました。

ヒトのNgbが酸化ストレスに応答する神経細胞保護センサー蛋白質として機能することを発見
(Human neuroglobin functions as an oxidative stress-responsive sensor for neuroprotection)

ヒトNgbが酸化ストレス応答性のセンサー蛋白質として働き、酸化ストレスを受けると脂質ラフト構成蛋白質Flotillin-1と結合し脂質ラフトに運ばれ、脂質ラフトに存在するヘテロ三量体G蛋白質のαサブユニット(Gαi/o)のGDP解離阻害因子として働くことにより、神経細胞死を抑制していることを初めて実証しました。この研究成果は、平成24年8月の J. Biol. Chem. 誌上で発表しました。

ゼブラフィッシュのNgbのモジュールM1は、他のタンパク質に細胞膜貫通特性を付加できる“取り付け可能な”構造単位である
(Module M1 of zebrafish neuroglobin acts as a structural and functional protein building block for a cell-membrane-penetrating activity)

ゼブラフィッシュのNgbのモジュールM1を、蛋白質工学の手法によってヒトのミオグロビンに“取り付け”、細胞膜貫通特性をもつ新規のミオグロビンを創製しました。 これより、ゼブラフィッシュのNgbのモジュールM1を、他のタンパク質に細胞膜貫通特性を付加できる“取り付け可能な”構造単位として利用できることが実証されました。 この成果は平成23年2月の PLoS One 誌上で発表しました。

ゼブラフィッシュのNgbの細胞膜貫通特性に重要な残基の特定
(Identification of residues critical for the cell-membrane-penetrating activity of zebrafish neuroglobin)

部位特異的アミノ酸置換法を用いて、ゼブラフィッシュのNgbの細胞膜貫通特性に重要なアミノ酸残基を探索した結果、 アミノ末端付近に存在する4個のリジン残基が、この活性に必須であることを明らかにしました。 この研究成果は、平成22年6月の FEBS Letters 誌上で発表しました。

ゼブラフィッシュのNgbは細胞膜貫通特性をもつグロビンである
(Zebrafish neuroglobin is a cell-membrane-penetrating globin)

ゼブラフィッシュのNgbは、ヒトのNgbとは異なり、単独で細胞膜を通過して細胞質中へと移行することを発見しました。 更に、ゼブラフィッシュのNgbとヒトのNgbとの「キメラ(融合)蛋白質」を作製することにより、 培地に添加するだけで、細胞膜を通過して細胞質中に導入され、しかも細胞保護作用を示す新たな機能性蛋白質を創製することにも成功しました。 これらの成果は平成20年5月の Biochemistry 誌上で発表しました。

ヒトのNgbがもつGDP解離阻害因子としての活性と細胞死抑制能とは関連がある
(Neuroprotective function of human neuroglobin is correlated with its guanine nucleotide dissociation inhibitor activity)

ヒトのNgbが神経細胞死を抑制するためには、シグナル伝達に関わる蛋白質Gαi/oとの相互作用が極めて重要であることを発見しました。 これにより、Ngbが酸化ストレス依存的に細胞内シグナル伝達を制御する、いわゆる細胞の「酸化ストレスセンサー」として機能している可能性が示唆されました。 この成果は平成20年5月の Biochem. Biophys. Res. Commun. 誌上で発表しました。