卵と精子という特殊化(分化)した2種類の細胞が融合することで、短時間のうちに全能性をもつ受精卵ができます。受精卵は卵割と呼ばれる、細胞成長を伴わない特殊な分裂をくり返して個体発生を開始します。細胞分裂期(M期)は、S期に複製された遺伝情報を娘細胞に均等に分配する過程です。細胞は染色体を一本も損なわず正確に分配するための巧妙なしくみと制御を備えており、その破綻は細胞死や染色体の異数化につながります。特に卵は体内で最も大きな分裂細胞であり、その中で染色体が正確に分配されるためには、体細胞とは異なるしくみが必要であることがわかってきました。
受精〜初期発生は、異型配偶子をつくって増える多細胞生物のすべてにとって重要な共通のイベントである一方で、驚く程の多様性があります。そのため、受精や卵割分裂過程についての分子生物学的な知見は、カエルなどの脊椎動物モデル生物を用いた研究から明らかにされたものでさえ、私たちヒトを含む哺乳動物に当てはまるとは限りません。たとえば、母体内で進む哺乳動物の受精・発生は時間制御が独特であり(ゆっくりと進む)、卵と精子の融合から受精卵ができるまでの時間は多くの動物では30分ほどであるのに対して、哺乳類は2〜3時間かかります。こうした違いはどのような分子機構によるのか、どのような生理的意義があるのか、まだほとんどわかっていません。
私たちは主に、
に興味をもち、哺乳類のモデル動物であるマウスを対象にした研究を進めています。
特に、精子と卵との融合後、全能性を獲得し、発揮する場としての前核はどのような性質を保持する必要があるのか、卵割期の分裂装置にはどのような特性があるのか、発生異常となる胚では何が原因で、どのような染色体動態異常が生じ得るのか、についてライブイメージング観察などの細胞生物学的な手法を中心とした解析を行っています。
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