ラマン分光(Raman Spectroscopy)とは?
ラマン分光法で得られるラマンスペクトルは、「分子の指紋(Molecular Fingreprint)」と呼ばれるように、分子構造を鋭敏に反映します。1928年にChandrasekhara Venkata Ramanにより発見された非弾性散乱です(Ramanはその2年後直ちにノーベル賞を受賞)。
入射光に由来する一光子が消失し、そのエネルギーから分子振動のエネルギー分だけずれた一光子がラマン散乱光として散乱されます。入射光との散乱光のエネルギーの”ずれ”を計測することで、分子構造を鋭敏に反映する分子振動に関する情報を得ることができます。
入射光と出射光のエネルギーが不変なレイリー散乱と比べ、ラマン散乱光は1/10,000倍程度弱く、その測定にはさまざまな「コツ」が必要でした。しかし近年、レーザー技術や検出器の開発により、高効率なラマン散乱光の検出が可能になったことから、研究の場で広く用いられるようになっています。
532 nm励起ラマン分光装置 試料部/分光器/CCD検出器。試料部は精密な温度調整可能なキュベットホルダーを使用しています。測定するときには右のように、完全にアクリルで覆って暗室として測定を行っています。
本研究室では…
このように汎用になってきたラマン分光法ですが、そのスペクトルを「正しく」解析し「正しく」解釈して分子構造を演繹することは、実は非常に難しいことです。本研究室では、質の高いラマンスペクトルを計測し、これまで埋もれていた分子構造情報を抽出することを目指しています。
近年、スペクトルの多変量解析(例としてMCR-ALS)が幅広く行われてるようになってきました。これらのスペクトル解析の手法を用いて、「分子の手紙」とも呼ばれる振動スペクトルから、液体や溶液といった他の手法では研究が難しい系における分子構造・ダイナミクスを解明することを目指しています。
また、近年では微小試料の測定に顕微ラマン分光を用いる機会が非常に多くなっています。研究室では左のような自作の顕微ラマン分光装置を保有し、共同研究を通じてさまざまな先端的化学材料のラマン計測を行っています。
現在532 nmだけでなく、671 nm や785 nmを励起光とした顕微ラマン分光測定を行っています。