学部紹介

 経済学部   

                        経済学研究科 教授 馬場 哲

 経済学部の歴史や教育目的・内容については、CD-ROMやホームページによる「進学のためのガイダンス」に詳しく書かれており、「教養学部報」にも毎年教員が個人の立場で経済学部の案内を執筆しているので、そちらを参照していただくことにし、この紹介文では、平成18年度および19年度入学者にとってとくに重要と思われることを説明することにしよう。

 1.経済学部と新しい進学振り分け制度

 平成18年度入学者から新しい進学振り分け制度が全学で実施されるが、経済学部はそれに伴い大きな変化が生じる学部のひとつである。経済学部と教養学部文科2類の学生とはこれまで長らく特別な関係にあり、文科2類の学生で経済学部への進学を希望する者は、所定の単位を取得していれば全員進学することができた。しかし、今回の制度変更により経済学部は全科類枠を積極的に採用し、340人の定員のうち60名(約18%)を全科類枠から進学させることにした。この結果、他科類の学生のなかに全科類枠で経済学部への進学を希望する者が多数出た場合、文科二類の学生のなかで成績によっては希望に反して経済学部への進学が認められない者が出てくる可能性が生じることになった。もちろん、経済学部の指定科類は制度変更後も文科二類で定員の約82%が確保されており、文科二類の学生は指定科類だけでなく全科類枠も利用できるので、他科類から毎年60名進学するということではないが、経済学部への進学を希望する文科二類の学生は、これまで以上に進学振り分け制度の仕組みを正しく理解し、成績の点数にも留意して、不本意な結果に終わらないように心がける必要がある。

 全科類枠の積極的採用の背景としては、経済学が文科系学問のなかでもとくに数学的能力を必要とする分野を多く含むため、理科各類から学生を進学させる可能性を広げたいという要望が強いことがまず挙げられる。しかし、経済学は歴史科学であり政策科学でもあるから、「効率性」を追究するとともに「歴史性」、「公正さ」、「公共性」についてのセンスや知識も求められる。したがって、全科類枠の採用は、決して理科各類からの進学だけを念頭に置いているものではなく、文科一類と文科三類からの進学も従来以上に期待されていることをあわせて強調しておきたい。

 2.金融学科の設置

  金融システムの革新とグローバル化が進み、金融が社会・経済に占める重要性が高まっているが、それに応える人材を供給することがますます求められている。こうした認識のもとに経済学部は平成19年4月より金融学科を設置する。金融の教育内容は、資産運用、金融商品開発、企業金融、リスク管理など民間の経済主体が行う「金融戦略」に関するテーマと、金融規制、金融システムのデザイン、マクロ金融政策、通貨政策など政府や中央銀行が行う「金融政策」に関するテーマからなるが、どちらかに偏ることなくこの両者を統一的に教育することが金融学科の大きな特徴となっている。

  これまで経済学部は経済学科と経営学科の2学科からなっていたが、金融学科の設置に伴い3学科体制となる。以下で述べるように、3つの学科には卒業のための要履修科目に若干の差異があるが、各学科における履修科目の要求はきわめてゆるやかであり、学科の枠にこだわることなく、学部の開講科目のなかから自由な選択ができるように配慮されている。

 3.カリキュラム改革

 以上に述べた制度変更に伴い、経済学部のカリキュラムも大きく変わることになる。

 まず進学振り分け制度における全科類枠の採用に伴い、従来3学期と4学期に分けて開講されていた専門科目1(本郷での学習の前提として必要とされる基礎的な知識・基本的な考え方を学ぶ科目)がすべて4学期に開講されることになる。この措置は、全科類枠の採用によって文科二類以外の科類の学生が不利にならないように、進学内定後にすべての科目を開講するという配慮に基づくものである。具体的には従来開講されていた9科目(経済原論、ミクロ経済学、マクロ経済学、統計、現代経済、経営、経済史、会計、企業経済)のうち「現代経済」が廃止され8科目となり(「企業経済」は「マーケットとファイナンス」に科目名変更)、卒業のために履修が必要な科目数も7科目以上から6科目以上に削減されることになる。しかし、4学期の学習負担が従来よりも重くなることは避けられない。必要単位を取得せずに進学すると本郷で開講される科目の理解や卒業のための履修計画に支障を来すことになるので、経済学部進学予定者には計画的な履修と従来以上の努力が求められる。

 次に本郷で開講される科目の編成も、金融学科の開設に伴って再編される。具体的には、経済学に関連する専門科目2(経済学史、計量経済学、現代資本主義論、数理統計、日本経済、財政、金融、産業組織、農業経済、労働経済、都市経済、国際経済、開発経済、国際貿易、国際金融、近代日本経済史、現代日本経済史、現代西洋経済史、ゲーム理論、企業経済、経済学のための数学)、経営学に関連する専門科目3(経営管理、経営戦略、労使関係、経営史、日本経営史、マーケティング、経営科学、国際経営、経営組織、計量経済学、産業組織、企業財務、財務会計、管理会計、国際貿易、国際金融、ゲーム理論、企業経済、経済学のための数学)、金融戦略・金融政策に関連する専門科目4(金融経済学、金融システム論、金融モデルとプログラミング、金融政策、為替政策、企業財務、財務会計、管理会計、計量経済学、数理統計、金融、財政、産業組織、国際貿易、国際金融、ゲーム理論、企業経済、経済学のための数学、経営戦略、国際経営、マーケティング)、選択科目(合併科目、演習・少人数講義を含む)、卒業論文、他学部科目から開講科目が構成されることになる。ただし、専門科目4が完成した形で提供されるのは平成21年度からであり、関連科目は平成20年度までは専門科目2、専門科目3、選択科目として開講されることを付言しておきたい。

 卒業の要件は、専門科目1から24単位以上(3学科共通)に加えて、経済学科は専門科目2から20単位以上、経営学科は専門科目3から20単位以上、金融学科は専門科目4から20単位以上、これに選択科目、卒業論文(4単位)、他学部科目(16単位まで)を併せて合計88単位以上取得することである。履修科目選択の自由度の高さという点では従来と変わりないが、単位取得の容易さに流されることなく、主体的・体系的な履修を望みたい。

 4.平成18年度入学者と平成19年度入学者の違い

 この文章が念頭に置いている読者は、平成18年度入学者と平成19年度入学者であるが、両学年の間には大きな違いがあるので、ありうる誤解を避けるためにこの点について説明しておこう。それは、平成18年度入学者には新しい進学振り分け制度は適用されるが、経済学部進学後金融学科に所属する選択肢はまだ用意されていないということである。金融学科は平成19年度に開設されるが、専門科目4が完成された形で開講されるのは平成19年度入学者が経済学部に進学する平成21年度からであり、金融学科に学生が実際に所属するのもこのとき以降になるからである。

 また、平成18年度入学者が平成21年4月の時点で経済学科ないし経営学科から金融学科に転科することも、経済学部進学の時点で金融学科という選択肢はなかったという理由で認められない予定である。ただし、金融学科関連の科目の多くは専門科目3としてすでに開講されているので、実質的な違いはあまりないことも指摘しておきたい。新しい進学振り分け制度は全学的な制度変更によるものであるのに対して、金融学科の設置は経済学部独自の制度変更によるものであり、1年の違いではあるが、両者の運用は別個のものと見なされる。この点には十分注意してもらいたい。