UBI seminar (55th) 2020年10月6日(火) 13:30-
 場所:Zoom
 演者:日浦健 (京都大学)
 タイトル:ゲーム論的熱力学

概要: 平衡統計力学が熱力学第二法則と整合的であることはよく知られている.逆に,第二法則,特に第二種永久機関が存在しないことを前提にしたとき,等重率の原理のような統計力学の確率論的な記述はどのように理解できるだろうか.この一見とらえどころのない問いをある仕方で形式化すると,Shafer と Vovk らのゲーム論的確率論と全く同一の形式で議論できることがわかる.彼らの確率論の特徴は,測度を用いることなく,何人かのプレイヤー間のギャンブルを通して大数の法則のような統計法則や確率・期待値といった概念を定式化することにある.本講演では,繰り返しサイクル操作による仕事の取り出しを,仕事を取り出そうとする「我々」と第二法則を保持しながら状態を出力する「自然」の間のギャンブルとして定式化し,「我々」がある戦略を採用することによって,ギブス分布が経験分布の意味で実現されることを示す.また,「我々」に可能な操作が少数の外場のみ制御できるような制限された場合であっても,外場に共役な変数の経験平均を平衡値に収束させるような戦略が存在することを示す.ゲーム論的確率論の入門や背景にあるマルチンゲール理論についても簡単に解説する予定である.