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物性セミナー/2016-6-9

2016年 夏学期 第3回 物性セミナー

 講師 北野晴久氏(青山学院大学理工学部)

 題目 固有ジョセフソン接合系の電圧状態からの位相スイッチと巨視的量子トンネル効果

 日時 2016年 6月 9日(木) 午後4時50分 今シリーズは木曜日が定例日となります

 場所 16号館 827

アブストラクト

Bi系銅酸化物超伝導体のようなへき開性の強い層状超伝導体では、超伝導層と非超伝導層が交互に積層する結晶構造に由来し、超伝導層間がジョセフソン結合した固有ジョセフソン接合(IJJ)系が形成される。2005年に微小な固有ジョセフソン接合素子において発見された巨視的量子トンネル(MQT)現象は、d波超伝導ギャップに起因するノード準粒子の影響をほとんど受けることなく、従来のジョセフソン接合素子に比べて約1桁高いMQT交差温度を示すことから、将来の量子情報処理を担う新しい量子ビット候補として注目されてきた。約10年が経過した現在、従来のジョセフソン接合素子と同様なゼロ電圧状態からの位相スイッチに対するMQTについては、一部の例外を除き、従来理論でほぼ説明できることが実験・理論の両面で確立している。一方、IJJ素子内に複数含まれるジョセフソン接合のうち一部だけ電圧状態になった状態からの位相スイッチに対しては、ゼロ電圧からの位相スイッチと類似のMQT的挙動が観測されたにもかかわらず、従来理論の予測よりもはるかに交差温度を示すことなどからジュール熱の影響などが疑われ、その起源が解明できない状況が続いてきた。

我々は、この問題の解明に向け、集束イオンビーム加工による微小IJJ素子の作製と電圧状態からの位相スイッチ特性の詳細な解析、及び離散化量子準位形成を観測するためのマイクロ波照射実験などに取り組んできた。その結果、電圧状態(すなわち、IJJ素子内のある接合で生じる位相走行状態)で発生する散逸は、ジュール熱よりもむしろ、別の接合で発生する位相スイッチ過程における位相再補足効果の増大に寄与すること[1,2]、および電圧状態からの位相スイッチでも離散化量子準位の形成が示唆されることを見出した[3]。講演では、これらの研究成果を紹介すると共にIJJ系の電圧状態からの位相スイッチにおけるMQTの可能性について議論する。

[1] D. Kakehi et al., IEEE Trans. Applied. Supercond. 26, 1800204 (2016).

[2] H. Kitano et al. J. Phys. Soc. Jpn. 85, 054703 (2016).

[3] Y. Takahashi et al., J. Phys. Soc. Jpn. (to be published).

宣伝用ビラ

KMB20160609.pdf(349)

物性セミナーのページ

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar

駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

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最終更新時間:2016年05月31日 21時16分02秒