2015年 夏学期 第4回 物性セミナー
講師 三澤 貴宏氏(東京大学大学院工学系研究科)
題目 強相関第一原理電子状態計算手法を用いた高温超伝導機構の解析
日時 2015年 5月 29日(金) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
強相関電子系に対して非経験的計算を行い、その物性を解明・予測する、強相関第一原理電子状態計算手法は近年急速に発展している。そのなかでも、有望な手法として注目を集めているのが、第一原理バンド計算をもとにした低エネルギー有効模型導出とその有効模型の高精度解析を組み合わせたハイブリッド手法(第一原理ダウンフォールディング法)[1]である。今までの我々の研究で、この手法を鉄系超伝導体に対して適用することで磁性の多様性を含む正常状態の性質を解明することに成功してきた[2,3]. 本講演ではこの手法の原理について簡単な解説をするとともに、その最近の適用例として、鉄系超伝導体の一つであるLaFeAsOの第一原理有効模型[4]における高温超伝導発現を解析した結果[5]について発表する。解析の結果、反強磁性の1次相転移近傍で増大する一様な電荷密度揺らぎの増大が超伝導の発現と1対1に対応していることを見出した。これは、一様な電荷揺らぎの増大が超伝導の発現をもたらしていることを示している。また、同様の1対1対応が、銅酸化物高温超伝導体を記述する最も基本的な模型であるハバード模型でも成立することを見出した[5]。二つの全く異なる模型に対して、超伝導機構として共通のものが得られたことは、この超伝導発現機構が電子相関由来の超伝導として普遍的であることを強く示唆している。
参考文献
[1] M. Imada and T. Miyake, J. Phys. Soc. Jpn. 79, 112001 (2010).
[2] T. Misawa, K. Nakamura, and M. Imada, J. Phys. Soc. Jpn. 80, 023704 (2011).
[3] T. Misawa, K. Nakamura, and M. Imada, Phys. Rev. Lett. 108, 177007 (2012).
[4] T. Misawa and M. Imada, Nature Commun. 5, 5738 (2014).
[5] T. Misawa and M. Imada, Phys. Rev. B 90, 115137 (2014).
宣伝用ビラ
KMB20150529.pdf(298)
物性セミナーのページ
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最終更新時間:2015年05月15日 22時14分22秒