2011年 夏学期 第5回 物性セミナー
講師 村川智氏(慶應義塾大学理工学部物理学科)
題目 超流動3HeB相表面に現れるアンドレーエフ束縛状態とマヨラナ状態
日時 2011年7月1日(金) 午後4時30分
場所 16号館 827
アブストラクト
超流動3Heはp波スピン3重項超流動体であり、バルクの性質は詳細に研究されてきた。また不純物の影響も受けず、異方的超流体の表面状態の研究を行う試料として理想的である。バルクでは等方的なギャップ2Δを持つB相の界面近傍に現れる表面アンドレーエフ束縛状態(Surface Andreev bound states、SABS )が、マヨラナフェルミ粒子であるとの指摘がされた。SABSは壁での準粒子散乱の境界条件である鏡面度Sに大きく依存し、特に鏡面散乱極限S=1では、SABSバンドの幅Δ*が広がり、エネルギーに比例する表面状態密度が現れ、表面にマヨラナコーンが存在することが示されている[1]。我々はその超流動3HeB相のSABSを、液体3Heに浸したずれ振動するAC-cut水晶振動子の複素音響インピーダンス(Z)測定により調べてきた。Sは壁を4He薄膜でコートすることで制御することができる。この測定から、ギャップ内に構造を持つ低エネルギー励起状態のSABSがあることおよび[2]、SABSのバンド幅Δ*がSの増大ともに大きくなることが示され、理論計算と定性的に一致した[3]。また、S>0のとき、新たなピークがZの温度依存性に現れ、Sの増加にともない成長した。この低温ピークはSABSのゼロエネルギー状態が減少したことから生じると理論計算から示され、その成長はマヨラナコーンへと漸近する振る舞いと見なせる。これはS=1の極限で現れると予測されているマヨラナコーンの存在を強く支持する実験結果である[4]。
[1] Y. Nagato et al., J. Low Temp. Phys, 149, 294 (2007).
[2] Y. Aoki et al., Phys. Rev. Lett. 95, 075301 (2005); M. Saitoh et al., Phys. Rev. B 74, 220505(R) (2006).
[3] Y. Wada et al., Phys. Rev. B 78, 214516 (2008).
[4] S. Murakawa et al., Phys. Rev. Lett. 103, 155301 (2009); S. Murakawa et al., J. Phys. Soc. Jpn. 80, 013602 (2011).
宣伝用ビラ
KMB2011-0701.pdf(497)
物性セミナーのページ
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最終更新時間:2011年06月27日 17時53分16秒