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物性セミナー/2021-6

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2021-6-25

2021年 夏学期 第5回 物性セミナー

講師 池田晴國氏(学習院大学理学部)

題目 非球形粒子のジャミング転移

日時 2021年 6月 25日(金) 午後4時50分

場所 Zoomによるオンライン開催

出席希望者は、予め登録をお願いします。登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。MLによるセミナー案内メールにてZoomアドレスをお知らせします。(物性セミナーMLに登録されている方は、ここでの登録は必要ありません。)

アブストラクト

粉体のように短距離相互作用するマクロな粒子からなる系を圧縮していくと、ある密度で突然、系が有限の剛性を持ち固体のように振る舞い始める。この現象はジャミング転移と呼ばれ、非平衡系における相転移の代表例として活発に研究されている。特に、摩擦が無い球形粒子からなる系については、系統的な数値シミュレーションが行われ、圧力や、エネルギー、剛性率等が転移点までの距離に対してベキ的な振る舞いを示すことが明らかになっている。また転移点では、2点相関関数にもベキ的な振る舞いが表れ、相関長も発散する。これは、ジャミング転移点が、平衡系における二次相転移点のような、臨界点になっていることを示唆している。 一方で、足元の砂粒を見れば明らかなように、実際の粉体では、構成粒子が完全な球であることはめったにない。そこで本研究では、粒子の形を球から系統的にずらしていったときに、ジャミング転移の性質がどのように変わるのかを、数値シミュレーションを用いて研究した[1]。その結果、粒子の形が球からわずかにずれただけで、球形粒子の場合に見られた、2点相関関数のベキ的な振る舞いが消えてしまうことが明らかになった。また、ジャミング転移点での接触数等は、球からのずれを表すパラメーターに対して、ベキ的な依存性を示すことが明らかになった。これらの結果は、球形粒子のジャミング転移点は高次の特異点になっていることを示唆している。言い換えると、球形粒子と非球形粒子は異なる普遍クラスになっている。これらの結果は、平均場理論による理論予想と整合している[2]。余裕があれば、この平均場理論についても解説する。

[1] arXiv:2012.07294

[2] C. Brito et al. PNAS 115, 11736 (2018)

宣伝用ビラ

KMB20210625.pdf(71)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2021-6-18

2021年 夏学期 第4回 物性セミナー

講師 野本 拓也 氏(東京大学大学院工学系研究科)

題目 第一原理計算に基づく磁気構造予測の現状と課題

日時 2021年 6月 18日(金) 午後4時50分

場所 Zoomによるオンライン開催

出席希望者は、予め登録をお願いします。登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。MLによるセミナー案内メールにてZoomアドレスをお知らせします。(物性セミナーMLに登録されている方は、ここでの登録は必要ありません。)

アブストラクト

電気モーターやハードディスクなど、磁性体は我々の生活の一部として欠かせないものになっている。近年では、従来の強磁性体だけでなく、磁気スキルミオン物質やノンコリニア反強磁性体といったエキゾチックな磁気構造物質についても工学応用が検討され始め、その理解の進展やマテリアルデザインの重要性が高まってきた。一方、与えられた結晶構造のもとでも、理論的に磁気構造を予測するというのは難しい問題であり、広域な磁性体に対する系統的な研究はほとんど行われていない。本講演では、さまざまな磁気構造を第一原理計算によって予測する研究の現状と課題について、最近の我々の研究を中心に紹介したい。最初に、第一原理計算に基づいた磁気構造や磁気転移温度の計算方法について簡単に紹介したあと、空間反転対称性の破れた系における磁気スキルミオン系の研究[1,2]や近年注目されている短周期磁気スキルミオン系の研究[3]、また最近我々が開発しているクラスター多極子を用いた磁気構造計算手法[4]と磁性体データベースを用いたそのベンチマーク計算結果[5]について紹介し、その現状と課題について議論したい。

[1] M. I. Katsnelson et. al, Phys. Rev. 82, 100403(R) (2010).

[2] T. Kikuchi et al., Phys. Rev. Lett. 116, 247201 (2016).

[3] T. Nomoto et al., Phys. Rev. Lett. 125, 117204 (2020).

[4] M.-T. Suzuki et al., Phys. Rev. B 99, 174407 (2019).

[5] M.-T. Huebsch et al., Phys. Rev. X 11, 011031 (2021).

宣伝用ビラ

KMB20210618.pdf(85)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2021-6-4

2021年 夏学期 第3回 物性セミナー

講師 岡本 博 氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

題目 テラヘルツ・中赤外パルスで誘起される強相関系の非線形光学応答,非平衡励起状態と相転移

日時 2021年 6月 4日(金) 午後4時50分

場所 Zoomによるオンライン開催

出席希望者は、予め登録をお願いします。登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。MLによるセミナー案内メールにてZoomアドレスをお知らせします。(物性セミナーMLに登録されている方は、ここでの登録は必要ありません。)

アブストラクト

可視光を照射したとき固体の電子相が一変する現象“光誘起相転移”は,フェムト秒レーザーを使ったポンプ−プローブ分光により盛んに研究されてきた.その対象として注目されてきた物質群に強相関系がある.強相関系では,光照射によって生じた電子励起や光キャリアが強い電子間相互作用を通して周囲の電子系を変化させることにより,高速かつ高効率の光誘起相転移が起こる.光誘起相転移に関連する近年のトピックの一つは,中心周波数約1 THz(光子エネルギー約4 meV),時間幅約1 psのほぼ単一サイクルの電磁場=“テラヘルツパルス”を使う研究である.電場振幅が100 kV/cmを遥かに超える高強度のテラヘルツパルスの発生が可能となり,それを使って固体の電子状態を制御しようという試みが盛んに行われている[1,2].ごく最近には,ポンプ光に光子エネルギーが100 meV程度の中赤外パルスを使った電子状態制御の研究も行われるようになってきた.中赤外パルスは,通常、数サイクルの電磁場パルスとして得られる.この中赤外パルスでは,10 MV/cm以上の高い電場を物質に与えることができる他,中赤外域の格子振動を共鳴励起できることや,マルチサイクルパルスによって生じるフロッケ状態等の新しい励起状態の観測も期待できる.本セミナーでは、強相関系(3d遷移金属化合物や有機分子性物質)において我々がこれまでに行ってきたテラヘルツパルスあるいは中赤外パルスによる非線形光学応答や非平衡励起状態の研究、また、それらのパルスによる相転移を目指した研究について、以下の話題を中心に紹介する。

〇 テラヘルツパルスによるモット絶縁体の超高速非線形光学応答と金属化 [3-5]

〇 テラヘルツパルスによる電子型誘電体の超高速分極制御と相転移 [6-9]

〇 中赤外パルスを用いた分子内振動励起によるイオン性−中性転移 [10]

〇 中赤外パルスで生成するフォノンドレスト状態の観測 [11]

[1] 例えば、固体物理特集号“高強度テラヘルツ・赤外パルスが拓く非平衡物性”,固体物理 Vol. 54 (2019).

[2] T. Miyamoto, H. Yamakawa, T. Morimoto, and H. Okamoto, J. Phys. B: At. Mol. Opt. Phys. 51, 162001 (2018).

[3] H. Yamakawa et al., Nature Materials 16, 1100 (2017).

[4] T. Terashige et al., Science Advances 5, 2187 (2019).

[5] T. Miyamoto et al., Communications Physics 2, 131 (2019).

[6] T. Miyamoto et al., Nature Communications 4, 2586 (2013).

[7] H. Yamakawa et al., Scientific Report 6, 20571 (2016).

[8] T. Morimoto et al., Physical Review Letters 118, 107602 (2017).

[9] H. Yamakawa et al., Nature Communications 12, 953 (2021).

[10] T. Morimoto et al., submitted.

[11] N. Sono et al., submitted.

宣伝用ビラ

KMB20210604.pdf(86)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar