Welcome
大学院の志望を考えてくださっている方々へ. 興味を持っていただいてどうもありがとうございます. わたしたちは小さいけれど, activeに丁寧に, いろいろなことに興味を持って, 日々物理にいそしむグループです. わき見も降らず物理生活を送るそんな大学院生たちと, 楽天的でぬけ気味でワーカホーリックな堀田と 一緒にがんばっていこうという元気な若者を歓迎します.

About us
運営方針などを知りたいという方々も多いようなので下記に細かいことをかいていますが, 堀田の性格を反映して 基本的にはざっくばらんな研究室です. わたしがいうのもなんですが ... 大変だけど楽しい研究室だと思います.
勉強が好きで最初からある程度先(うまくいくこと)が見えていることをやりたい人ではなく, より冒険と実践, try and errorが好きな人に向いています.
基本ポリシーとしては  "good idea" x "hard work" = "new findings" と考えていますので 楽をしていい成果を出したいと思っている人には向かないと思います.
「磁性」や「スピン」や「フラストレーション」をやっているところだと思っている人が多いようですが 5年くらいでテーマや分野をころころ変える堀田が主導する研究室です. このページを3年ぶりに改定するにあたり, すでに研究テーマがかなり変遷していることに改めて気づきます. つまり面白くてガッツとアイディアと根拠のない勝算があればなんでもやっていいです. ただし「超」が頭につくものは敬遠しています. テーマが変わっていく理由は... 世の中には手を動かしてみて初めてわかること, 何年もやっている専門家が気づかないけれどもひょいと始めた人が気づくことが たくさんあるからです. 本グループでは メンバーがそれぞれの個性と興味の向く方向でピンで立って研究をしています. そのためメンバーのテーマや専門分野が異なっているのですが 不思議なことにそれでも興味という一点で言うと互いに重なり合う部分がたくさんあって そこからまた新しいテーマが生まれます. お互いによい相互作用をしながら そのときどきにそって紆余曲折をしながら研究していくことで, はじめて私たちは新しいことを学んで前に進んでゆけるのです.

Our interests
物性理論とは一言でくくることができないくらい広い分野をカバーする理論体系です. 大まかに分けると 固体物性, 統計力学, 物性基礎論, 生物物理, 量子情報など, 知りたい対象や得意とする手法など によって様々です. その中で我々は最も典型的な物性理論、つまり固体物性・凝縮系の物性の理論研究をしています. 「固体結晶の持つ性質・機能」には磁性・伝導性・光物性・誘電性・弾性などがあげられます。 例えば、電子は、電子の一部がが固体中を自由に動きまわれば物質は金属になりますが、 電子が何らかの理由で動くことができなければ、絶縁体になります. また、電気的(電荷e)性質のほかにスピンという量子力学的な属性を持っています. そのスピンが同じ方向にそろえば、強磁性(磁石)や反強磁性といった磁気的な相が実現します. 様々な物質がマクロな(目に見える)レベルで発現する現象を、ミクロなレベルから、主に量子力学と統計力学を用いて 理解する理論体系が物性理論です. 電子、原子、分子といったミクロな要素が〜1022個のオーダーのマクロな数 だけ集まってできた凝縮系(固体結晶など)は、 凝縮によって(集団として)しか示しえない、全く新しい物理現象を数多く示します.

こうした問題は一見各論的に見えますが、それぞれの固有の現象を個別に理解すると同時に、 統計力学や繰り込み群など物理学の基本的な考え方などを駆使して、 物質の持つ普遍的な性質を抽出することが理論の大きな役割の一つです.
我々は主に、ミクロな有効モデルを構築し、それを解析的、あるいは数値的に解いてマクロな物理量を 求め、物質内で展開される「ストーリー」を紡ぎだすというスタイルで研究を行っています。 こうした理論は有効理論と呼ばれ、問題が難解で厳密に解けない場合にも、 重要な部分だけうまく取り出して物事の本質をとらえる方法です。

How to join us
当研究室は, 東京大学大学院総合文化研究科 相関基礎科学系 の大学院生を受け入れます. 2007年から7年間 京都産業大学の時代を経て, 本学では2014年4月に発足しました. 早いもので OBと現役を含め20名程度の学生さんたちと多岐にわたって一緒に仕事をすることがかないました.
物性理論の研究室は駒場にたくさんありますがそれぞれ特徴があり, 扱っている研究テーマ, 方向性, 分野が異なります. 全般的には統計力学的趣向が強いのが駒場の特質です. そのような中で当研究室の特色は, 次の2点だと思います.
   研究分野やテーマがあまり限定されない.
例えば, 「超伝導」や「量子スピン」といった特定の問題をメインテーマにした研究室は多いですが, ここでは 強相関電子系, 磁性(量子スピン系や統計力学的な古典スピン系の問題), 電子誘電体(最近提案されている新しいタイプの誘電体), Dirac電子系のような半導体分野の問題, 数値計算法の開発, などこれまで比較的多岐にわたるテーマを研究してきています. 最近では 磁性やトポロジー(スピン軌道)などの物性のテーマに加え, 機械学習, グラスなど統計論の知識を固体物理と併せたテーマ, 更に従来の固体物性という枠にとらわれず統計基礎論に関わるメンバーもいます.
   実験物理とのコミュニケーションを大事にする
物性物理とは基本的に自然界で実際に起こっていることを理解しようとする学問です. 実際の理論研究ではtoy modelを扱うことも多いですが, 実験で面白いことが見つかるとそれに刺激を受けたり, こちらから実験側に 新しいアイディアを提供したりすることも 研究の楽しい部分です. 具体的な物性の実験結果と直接関連した問題を扱うこともあります. 実験理論を問わず, 他の大学の研究者と国内外にわたって広く共同研究をしています.

What is special about KOMABA?
駒場で物性理論を学ぶことにどのような利点があるのか, 独断と偏見で考えてみました: 学生の言動によりますと, 「とにかくものすごい数とvariationのセミナーと集中講義がある」.  たとえば 過去のリストの一部 . ファカルティスタッフメンバーの多様性を反映しています. 彼らは東大の他のセクションや別の大学の集中講義にも参加していますので, 駒場というくくりに限らないと思いますが 地の利的にも出かけやすく itenerantな雰囲気があるのは確かです.
本研究室は関係する他の研究室のPDや学生さんも何人か出入りしていて, (私も昔やっていましたので推奨しています) マイペースにマイワールドにとにかく自分の好きな研究をしたい人が集まっている印象です. 物理を乗り越えるべき課題や競争のツールとしてだけではなく, 文化として楽しむ雰囲気がここにはあります.
自分が何を研究したいか 何に興味を持つようになるかはかなりの割合で環境因子によって決まります. 駒場の間口と懐の広さは, 特に物性理論というものをどうとらえ, どう位置づけるかを考えたとき, 長期的な視点から研究の幅を広げる意味でとても役に立つと思います.

Management policy
修士課程では, 堀田の専門分野, あるいはそれに近い分野のテーマを一緒に研究していきたいと考えています. 最初は 学生さんから こんな分野に興味がある, こんなイメージの研究がしたい, という希望を汲み出して, 堀田が提案したテーマの中から選んでもらう, という方針で始めたいと思います. 自力でテーマを見つけられる, あるいは最初からこのテーマがしたいと決めている学生さんはとりあえず相談してください.
修士過程では,
 a テーマを見つける,
 b どうやってその問題にアプローチし 解決するか,
 c どんな手法を使うか,
 d 出てきた結果をどう解釈するか,
 e 物理的に間違っていないか
 f 論文の書き方やプレゼンテーション
という複数の方法論を並行して身につけていく必要があります. これらを全部人の助けを借りずに2年間で自力でやりとげるのは 大変です (不可能ではありません). それを一緒に学ぶために研究室があるのだと思ってください.
研究室に所属するということは これらを習得する際に 研究室独特の気風やその学問分野にアプローチする姿勢 といった, 目に見えない自分の核となる部分の基礎を吸収していく過程です. b,c,fは独り立ちしてからでも自力で広げていける部分ですが, a,d,eは最初に所属した研究室から 与えられる影響もかなり大きい部分です.
修士課程では 学会で発表をし, 必ず1本は査読付きの論文誌に投稿していただきたい(あるいはそれに相当する成果を出す)と思います, これまでの当研究室の修士課程の学生さんは皆この基準をクリアしています.

研究者を志す場合は 自分の研究室の仲間や指導教官と似たような研究者(copy)になっても仕方がないので, その後もいろいろな人との交流の中で吸収し, 自分の特性を見極めて独自の路線を切り開いていって欲しいと思います.

博士課程への進学はよく考えたうえで決断してください(稀に堀田が勧める場合もありますが). 博士課程に入ると一人前の研究者だとみなされますので, テーマ選びから始まり 研究の主導権を自分が掌握していただく必要があります. 指導教官に教えるくらいの勢いが大事です.

Admission policy
物理という学問は歴史が古いこともあり, 研究の最先端にたどり着くまでに地道な努力が求められます. 大学1年から一つ一つ煉瓦を積み上げていくように数学, 物理の基礎的な素養(研究するための「言語」のようなもの) を習得する 必要があります. そのため学内外の物理学科, 物理工学科, あるいはそれに類する学科で力学, 電磁気学, 熱力学, 微積分学, 線形代数などの 理系の基礎は言うに及ばず 統計力学, 量子力学, 解析力学, 物理数学 など物理の基幹科目を学んできた 学生さんに来ていただきたいと考えています. 実際, 当研究科の大学院入試に出題される範囲を参考にしてください.
固体物理の基礎知識, 量子力学における第二量子化なども大学院に入学するまでで結構ですので勉強しておいてください. 9月に進学が決まった時点でどういう本を読んだらよいかなどについて一度相談に来てほしいと思います.

研究者を志すかもしれない学生さんたちに思うことはこんなかんじ
わりとざっくりした独断と偏見ですが, 以前 神戸の西野さんと雑談中 東大の状況ってどういうもの?という質問に対して このようなことを話したら どっかにかいたら的なことを言われたのでここに書いてみました. 毎年同じようなことをきかれて同じように説明するのが やや自分でも滑稽に思えてきた, ということもあり 何か聞きたい学生さんはまずはこれを読んで代わりにしてくださいm( )m.