猫の糖尿病の診断・治療法の研究
2010.5.1 松木直章
糖尿病治療中の猫
なぜ猫の糖尿病を研究するのか
人間がそうであるように、ペットの猫の糖尿病も増え続けています(糖尿病の犬はむしろ減っています)。肥満や運動不足が糖尿病のリスクになることも含め、人間と猫の糖尿病は一見するとよく似ています。しかし、人間と猫の糖尿病がまったく同じ病気かどうかは分かっていません。猫の糖尿病にはまだまだ解明されていない点があり、ときとして治療に苦慮することもあります。
糖尿病を研究するには血液中のインスリンを測定することが不可欠ですが、これまで猫のインスリンを精度良く測定できる方法がありませんでした。2008年に世界で(ほぼ)初めて当研究室で開発した「ネコインスリン測定キット」が市販され(株式会社 森永生科学研究所のページ)、臨床や研究への応用が始まっています。
ところで、人間とは違い、糖尿病の猫は白内障、腎症、つま先の壊死などの糖尿病性合併症になりません(犬では白内障と腎症がほぼ必発します)。なぜ糖尿病性合併症にならないかが分かれば、合併症に苦しむ人間の光になるかもしれません。
糖尿病性合併症の発生にはフリーラジカル(活性酸素など)が強く影響すると考えられています。私たちは猫が備えている抗酸化能力(フリーラジカルを消去する能力)を研究しています。また、血糖コントロールを改善し、健康や生活の質を保つための食事性因子(サプリメント)の研究も行っています。
関連する我々の論文
英文
- Nakaya, M., Kito, Y., Matsuki, N., Shibata, H., Touhata, Y.,
Tamahara, S., and Ono, k. A novel sandwich enzyme-linked immunosorbent
assay for feline insulin. J. Vet. Med. Sci. 71: 1005-1007, 2009.